【経営コンサルタント012】 

2018年5月20日(日)

「経営コンサルタントの集客方法1」のコラムでは、「他人の企画」に便乗することが前提の集客方法について述べました。続いて、「経営コンサルタントの集客方法2」では「この指とまれ!」式の集客について説明しました。この2つのコラムの続きとして「経営コンサルタントの集客方法3 ~経営コンサルタントの集客方法は5ステップで見直す~」と題してお伝えします。

集客方法を決めるに際し、何を、どのように検討すべきかをお伝えします。同時に、今回のコラムは「経営コンサルタントの集客方法2」の最後に投げかけた「どうリスクヘッジしながらチャレンジすべきか?」の回答にもなります。

早速スタートしますが、まずは次の通り5つのことを検討すべきなのです。

「捨て金」については、「経営コンサルタントの集客方法2」の中で詳しく説明しました。「この指とまれ!」式は「投資してから後に回収する」というモデルになります。だから投資したお金が回収できないまま「捨て金」と化してしまうリスクがあるのです。

例えば、「新聞広告を出したが反応がなかった」「出版して本は少し売れたが、コンサルティングの顧客獲得には至らなかった」などのケースが該当します。

「他人の企画」に便乗する場合でも、「この指とまれ!」式ほどのリスクではありませんが、イベントに参加したり、FAXDMを送ったりすれば、当然ながら費用が掛かります。

こういったことをあらかじめ踏まえた上で「捨て金」の額を決めることが重要です。

 

例えば、手持ちの資金が500万円ある(独立した)経営コンサルタントがいると仮定します。この人が独立したばかりで、「今後1年間にまったく収入がない事態を想定した上で、300万円は生活費として残しておきたい!」とします。

その場合の「捨て金」は200万円(500万円-300万円)となり、「期限」は1年です。もし200万円を失っても、残りの300万円を使って今後1年間は生活することができます。しかし1年間収入がないまま生活費(300万円)と「捨て金」(200万円)を使い切ったらゲームオーバーです。

これは1つの例にすぎません。借り入れにより手持ちの資金を増やし「捨て金」を増やすことができるし、所有している不動産を売れば現金(資金)を増やすことができます。

逆に、200万円どころか100万円を失ったら、もうコンサルティング事業からは撤退だと決めることも可能です。

 

このように事業のために失っても良い「捨て金」の上限額を決めることが「検討1」でやるべきことです。事業が脆弱で軌道に乗るまでの間は、いくらまで「捨て金」が使え、その期限はいつまでかということを頭に入れた上で、「検討2」以降のことをチェックしながら「やるべきこと」を選んでいくのです。

次にやるべきことはご自身の事業のSTPを決める(再確認する)ことです。STPについては「経営コンサルタントの見分け方3」のコラムを読んでおいて下さい。STPは、セグメンテーション、ターゲッティング、ポジショニングとなります。

また「ウリ」については「何を提供するのか?」という内容だけではなく、その主張を補強しなければなりません。「なぜ、それができるのか?」を伝える(証明する)必要があるのです。そこで重要なことはご自身の経験やスキルとなります。

これがスタートです。「自分には何が強みであるか?」「何ができるのか?」をよく見極めることです。

さらに「ウリ」を決める際には、当たり前ですが「競合」という概念が重要です。単なる「営業力アップ」「ブランド力3倍」のような売り出し方をしたら、多数の競合の中に埋もれてしまうだけでしょう。何かのキッカケで知り合いになった人にアプローチする場合を除けば、集客には苦労するはずです。

中小企業向けのコンサルティングには、○井総研、○田コンサル、○Iコンサルなど多数の会社があります。個人・個人事業主が相手の場合は、インターネット上に万単位の顧客リストを抱えた「ツワモノ」が何人もいます。公的機関の支援メニューも豊富です。

そういう彼らと競争していることを認識した上で、潜在顧客の目には「ご自身の事業がどう映るのか?」ということを意識しなければなりません。STPPであるPositioningの話になりますね。

これが「検討2」であり、『ご自身の事業のSTPや「ウリ」をある程度決める』ということです。

「検討2」を踏まえた上で、次にターゲットの特性や対象をよりハッキリさせて、集客方法の大枠を決めることが「検討3」で行うことです。集客するための手段(候補)を導き出すことです。以下の通り、いくつかの観点から検討することをオススメします。

ターゲットとなる顧客の事業規模です。個人・個人事業主はもちろんですが、売上が1億円にも満たない零細事業者がターゲットであれば、明らかに「この指とまれ!」式を選ぶことになるでしょう。逆に、規模が大きいと何かしらの形で「他人の企画」に便乗しない限り、彼らとの接点が限られるため、集客活動には苦戦を強いられるはずです。

あくまで経営者がターゲットということであれば、売上が50億円以上の規模にもなると「この指とまれ!」式ではかなり集客が難しくなるはずです。「では、売上規模の境界線はどこか?」と問われてもよくわかりません。ハッキリしているのは売上1億円未満であれば明らかに「この指とまれ!」ということです。

だから、売上30億円規模の経営者が経営コンサルティングの対象の場合、個人や個人事業主を相手に上手くやっている人のやり方(集客方法)とは明らかに異なることを認識すべきなのです。

これはターゲットとなる業界・業種にバラツキがあるかということです。飲食業、物流業、医療機器開発などと業界・業種がフォーカスされていれば、関連する業界団体と関わるなど「他人の企画」に便乗することで、潜在顧客との接点が容易に得られます。しかも、業界・業種がフォーカスされていれば、FAXDMなどの手段も使いやすくなります。

逆に、ターゲットの業界・業種のバラツキが大きい場合は、一見するとどの業界・業種にもチャンスがあることになりますが、どこに自社(自分)を評価してくれる人(会社)が存在しているのか全くわかりません。このような場合は、FAXDMを送るにも、的が絞れません。当然ながら集客コストが高くなりがちです。

だから何かしらの手段を使って広く露出する機会を設け、その広い対象範囲の中から興味を示してくれる人(企業)を探し出すことになります。例えば出版のような方法を使って浅く・広くアプローチしなければならないでしょう。どの業界・業種にもチャンスがあるというメリットの裏返しに、集客活動に投入するコストは高くなるのです

これはターゲットとなる業界・業種の特性を見極めることです。例えば、私にはロボット関連で深く関わっている介護業界があります。この業界は行政の影響を大きく受けます。この業界におけるロボット市場の形成さえも行政主導というわけです。

このような業界・業種については行政の取り組みに関わることでアプローチの機会を得やすくなります。なぜなら行政の取り組みに企業が集まってくるからです。そこで接点が生まれるのです。このように「業界・業種の特性や行政との絡み」をよく検討すべきということです。

さて、「検討3」では「誰がターゲットか?」という観点から検討しましたが、次は自社事業のサービス面から集客手段の候補を整理することになります。次のようなことを検討することです。

「検討2」ではご自身の事業のSTPや「ウリ」をある程度決めたわけですが、ご自身が提供するサービスの抽象度が高いと、業界・業種のバラツキが大きいことと同じ問題に直面します。先にも書いた「営業力アップ」「ブランド力3倍」のような売り出し方では抽象度が高く、専門や対象がフォーカスされていないことになるのです。

一見すると業界・業種に限らず広くチャンスがあると思うかもしれませんが、どこに自社(自分)を評価してくれる人(会社)が存在するのかわかりません。本を出版し、それを全5段や半5段の広告として日経新聞に掲載するなど、マス媒体を駆使して売り出すつもりであれば抽象度が高くても良いのです。しかし、そうでなければフォーカスした方が集客は容易になるはずです。

これは「どこまで幅広くサービスを提供するか?」という観点です。規模の大きなコンサル会社であれば、特定の業界に特化したさまざまな専門家を抱えており、ある業界に対して「○○業界の方へ、どんな支援でも当社にお任せ下さい」という訴求が可能です。

例えば、「ウチは介護サービス事業所の課題をワンストップで解決します!」と訴求する会社があるとします。物件探し、人材の採用、ホームページの活用、介護報酬改定に関する最新情報の提供などあらゆる課題への対応がワンステップで可能ということは、介護サービス事業所から見れば非常に魅力的です。

ところが、個人コンサルタントが同じようなことをできるでしょうか? 仮にできたとしても、先に述べたSTPPの話ですが、潜在顧客の目にはご自身の事業がどう映るでしょうか?

次に述べる「地域」の話になりますが、都市から離れた地方の小さな街で事業を展開しているのであればそれでも良いのです。ところが、都心部では競合に埋もれ非常に苦労するはずです。

そのような観点からも検討が必要なのです。

これは地域に特化・密着にするか? あるいは広域(全国)を対象にするのか? という違いになります。先にも述べた通り、都市から離れた地方の隔離された小さな街で事業を展開するのであれば、単価は低くなるものの、浅く広く行なう経営コンサルティングにもニーズがあり、やっていかれるはずです。小さな島に住んでおり、医師が1人や2人しかいなければ、専門や診察科に関係なく、患者さんがやってくるのと同じです。

ところが、都会になればなるほど、都会に近ければ近いほど、多数の競合がいるので、地方の小さな街と同じ感覚では通用しないのです。

これについは大口・小口という課金の違いです。例えば、300万円の売上を作るとします。月1回の訪問で30万円/月の契約の場合は、10カ月後にわずか10回の訪問で目標達成となります。しかもわずか1社との契約で済みます。

ところが、「たった1社で済む」とは言え、わずか1社が1年経過しても獲得できなければ、売上はゼロのまま。その間に生活費など必要経費が発生するので、現金が燃焼していきます。大口を狙うことは結構なことですが、そのような高額(コンサルフィー)を出せる企業は限定されます。

個人や個人事業主に対して、彼らの月収を上回るような高額なコンサルフィーを月々払ってもらうことは非常に難しいはずです。だから大口については一定以上の規模の会社に限られます。

なお、経営コンサルタントが大口ばかりを狙うと、1年どころか2年、3年と経過しても1件も獲得できないというリクスが高くなります。運良く取れたとしても、果たしていつまでも続くでしょうか? ある経営コンサルタントの方は10年前には月30万円の契約を取っていましたが、今では1回訪問の謝金が1日最大3万円のミラサポという国の支援制度を通じて仕事を取ることに必死です。

一方、1回の訪問で2万円の契約で月1回の訪問の場合は、計15社との契約が必要です。しかも10カ月に計150回も訪問することになります。しかし、月1回の訪問で30万円/月のコンサルフィーに比べれば遥かに安価なため、個人でも払える料金です。当然ながら大口よりも顧客の獲得は遥かに容易になります。地元に特化すれば1日に3~4社をまわることも可能です。電話だけで済ませることも可能でしょう。

経営コンサルティングでは単価の高い大口を多数から集められることが理想です。でもいきなりそのステージに到達することは現実的にはとても難しくリスクを伴います。だから、1人の顧客から大金を集めるのか、少額を広く集めるか?  あるいはそれをどう使い分けるべきか? そういう検討が必要なのです。

以上の通り「検討1」から「検討4」までのことを検討すれば、おのずと集客の手段がある程度固まってくるはずです。次に進む前に、1つ前の段階に戻って改めて検討し直して良いのです。そうやって候補を整理した上で、その中から絞り込んでいくことが「検討5」となります。

では、どうやって絞り込むべきでしょうか? 

それはご自身の経験やスキルから絞り込むべきです。使える「捨て金」が限られているのであれば、長く試行錯誤している余裕はありません。だから経験のないことにはなるべく手を出さないことです。知らない手段に手を出して一から学ぼうとしたら、10万円、20万円の売上をつくるために苦労を強いられます。金と時間が掛かります。

「経営コンサルタントの集客方法2」のコラムで書いた通りですが、新聞広告の未経験者がいきなり新聞広告を出したらあっという間に100万円以上を失うはずです。同様に、出版に精通していなければ、独立後に出版した場合、当たる可能性こそありますが、新聞広告以上に大きな痛手を負うリスクが高まります。

だからと言って、その道の専門家を頼るとさらに痛手を負うことでしょう。なぜなら、当たり前のことですがビジネス本の出版を支援する人のところへ助けを求めに行けば、結局は出版という道を選ばされます。同様に、WEBマーケティングを売りにしている人のところへ行けば、FacebookTwitterLINEなどを「こう使えば成功する!」などという話に大金を払わせられることになるからです。

知らない手段に手を出して一から学ぼうとしたら、10万円、20万円の売上をつくるために苦労を強いられるということをよく肝に銘じておくべきでしょう。

さらに、新規の獲得を検討する場合、「他人の企画に便乗する」という方法に有効な手段がある一方、「この指とまれ!」式に有効な手段があることを認識しておきましょう。

最後になりますが、次のようなポイントをおさえておくべきなのです。

  • 中途半端に広げないで絞る
  • 「ツール(手段)ありき」ではなく「戦略ありき」
  • リスクを分散させること

また長くなってきたので、詳細については次回のコラムで紹介します。タイトルは「なぜ経営コンサルタントとして起業しても失敗するのか?」を予定しています。

ネット(含:メルマガ、ブログ、SNSなど)を駆使して集客する経営コンサルタントばかりを見ていると、若手の個人・個人事業主に○○塾を開催するような人ばかりが目に付くはずです。

同様に、情報入手を書籍に頼ると、出版して名前を売ろうとする経営コンサルタントの存在ばかりが気になりはずです。それでは他の選択肢を見失いがちになります。次のコラムは、こちらから。

私が10年以上も経営コンサルタントを調べてきた限り、わかったことがあります。

それは、単価が低くても中小企業診断士協会、公益財団法人○○経営支援協会などの団体から確実に仕事を得ている経営コンサルタントはしぶとく生き残る一方、独立してから「この指とまれ!」式だけで集客しようとする起業家の多くは脱落してしまうということです。

試行錯誤している間に「捨て金」がなくなってしまうからです。それに、純粋な経営コンサルティング業だけですぐに生計が立てられる人はかなり少ないようです。

このような現実を踏まえると、まずは既に仕事があるところに入り込む「他人の企画に便乗する」方法で確実にキャッシュを得ながら、その一部を「捨て金」に流用することです。

つまり「この指とまれ!」式で稼げるように投資するのです。

「捨て金」の範囲内で「この指とまれ!」式にチャレンジし、早期に試行錯誤から抜け出すこと。その後は「この指とまれ!」式で躍進できるようになることが理想です。

これが経営コンサルタントにとって堅実で安全な集客方法ではないでしょうか?

次のコラムもぜひご期待下さい。

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