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【顧客と市場に向き合う(マーケティング)001】 

2025年 4月18日(金)

こんにちは、関口です。

今回は、西口一希さんの著書をもとに、「ブランディング」に関するよくある誤解についてお伝えしたいと思います。

私は中小企業の支援を行うなかで、「ブランディング」や「マーケティング」といった言葉が、驚くほど人によって異なる意味合いで使われている場面に何度も遭遇してきました。例えば、営業部門のサポート業務を“マーケティング”と呼んでいたり、ロゴや動画を作ることが“ブランディング”だと誤解しているケースもあります。

たしかに、ブランドとは本来「焼き印」=他と区別する印という意味を持ち、ロゴやデザインもその一部には違いありません。しかし、「見た目さえ良くすれば売れる」と信じて、イメージ先行で走ってしまうと大きな時間とコストを投じたにもかかわらず、まったく売上につながらないという結果になってしまうことも少なくありません。

その理由は、ブランディングの“目的”を取り違えていることにあります。

西口氏の本によると、ブランディングには、本来3つの目的があるとのこと。そのなかで、多くが最初にイメージしがちなのが、「第2の目的」である情緒的・心理的価値の提供です。

例えば、「このバッグを持っていると上品な気分になれる」「この時計はステータスがある」といった、感情に訴えるタイプのブランディングです。これはラグジュアリーブランドに典型的な手法であり、強い効果を持っています。

しかし、ここだけを表面的に真似しても、うまくいきません。なぜなら、ラグジュアリーブランドが機能しているのは、すでに顧客にとって強力な便益と独自性が確立されており、その上に情緒的価値が“追加”されているからです。

ブランドの“イメージ”だけを構築しても、それが買う理由や買い続ける理由と結びついていなければ、顧客の心は動かず、行動も変わらないのです。

そもそも顧客は、何を基準に商品やサービスを選んでいるのでしょうか?

答えについて、西口氏は「便益」と「独自性」と主張しています。

  • 便益とは、「これを買うと自分にどんな良いことがあるのか」という“買う理由”です。
  • 独自性とは、「なぜ他の商品ではなく、これを選ぶのか」という“他を買わない理由”です。

強いブランドとは、この便益と独自性の両方を、明確に顧客に伝えられている存在です。

逆に、企業が「自分たちが伝えたいこと」を便益や独自性だと信じて押し出してしまい、それが顧客の感じている価値とズレていると、まったく響きません。

価値とは、企業が語るものではなく、顧客が見いだすものなのです。

企業が広告やクリエイティブに力を入れてブランドの“世界観”を演出しても、肝心の便益や独自性が薄ければ、リピートにはつながりません。

「イメージは良いんだけど、全然売れないんですよね」と相談を受けることがありますが、それはブランドアイデンティティ(企業側の願望)ばかりが前に出て、ブランドエクイティ(顧客側の認識)が形成されていないのです。うまくいっていない企業の多くは、「自分たちが伝えたいこと」や「売りたいポイント」が、そのまま顧客にとっての便益や独自性であると勘違いしているのです。

ブランディングの役割は、「売る」ための仕組みづくりであり、感情的な演出はその一部にすぎないということ。

西口氏は、ブランディングの第一の目的を「記憶と想起の確立」としています。

例えば、仕事の合間に「ちょっとコーヒーでも飲もうかな」と思ったときに、真っ先に思い出されるのがスターバックスであれば、それは「想起率」が高いブランドということです。

これは、どんなに優れた便益があっても、思い出してもらえなければ選ばれないという現実を示しています。

つまり、ブランディングとは「思い出される価値ある存在」になるための活動であり、それを支える基盤は便益と独自性に他なりません。

ブランドづくりの第一歩は「売れる理由」の明確化から

もしあなたが、これからブランディングに力を入れたいと考えているのであれば、次の点をぜひ見直してみると良いでしょう

  • 顧客が“買う理由”と“他を選ばない理由”は明確か?
  • その便益と独自性は、顧客にとって本当に価値があるか?
  • その価値を、記憶され、思い出されやすい形で伝えられているか?

ランディングは、「売るための仕組み」です。

ロゴや映像のデザインに取りかかる前に、まず「なぜ売れるのか」「なぜ選ばれるのか」を徹底的に明確にすることから始めてみてはいかがでしょうか。