戦略とプロセスを明確化した事業デザイン:
自らに選択肢があることを知りながら「できない」を「できる」に!
【経営・戦略026】
2025年 3月6日(木)
こんにちは、関口です。
私は、「脱・税理士スガワラくん」というYouTubeチャンネルをたまに視聴するのですが、先日、気になる動画を見つけました。それは、「この4月からの雇用保険法改正で、中小企業には退職者が激増するかもしれない」という内容のものです。
今回の改正では、失業手当の給付制限期間が大幅に短縮され、受給しやすくなります。これにより、これまで転職をためらっていた人たちも、『すぐに失業手当をもらえるなら、辞めてしまおう』と考えやすくなります。特に、給与が低かったり、職場環境が悪かったりする企業では、人材流出が加速するだろう、と菅原さんが予想しています。
この変化に対応するため、中小企業は今後、どのような対策を講じるべきなのでしょうか? 菅原さんは動画の中で、「給与を上げて社員をつなぎとめること」と「業務委託を活用すること」の2つを挙げていました。今回のコラムでは、この2つの視点をもとに、中小企業が生き残るための選択肢を考えてみたいと思います。特に後者の「業務委託の活用」については深掘りしていきます。
まず、社員が簡単に転職しない会社を作るためには、給与を上げることが不可欠です。「社員が会社を辞める理由として最も多いのは、給与への不満か、人間関係の問題である」と菅原さんが指摘していました。そのため、給与を適正に引き上げることができれば、少なくとも「お金の問題」で辞める社員を減らせるのです。
もちろん、給与を上げることは簡単なことではありません。経営者としては、「利益が増えなければ、給与を上げるのは難しい」と感じるかもしれません。しかし、優秀な社員を引きとめるためには、一定の努力が必要です。例えば、業務の効率化や新たな収益源の確保など、会社全体の生産性を向上させて、給与アップの原資を作る必要があります。
給与を上げることは重要ですが、特に中小企業では、全社員の給与を大幅に引き上げるのは現実的ではないでしょう。大企業においてはつい数年前まで初任給が20万円程度だったのに、いまでは30万円以上を払う企業が何社も出てきました。初任給30万円時代に突入したのです。このように大企業は賃上げラッシュですが、中小企業の多くは同じことができないはずです。そこで注目されるのが、業務委託の活用です。
菅原さんの会社では、社員はわずか6名で、それ以外はすべて業務委託で成り立っているそうです。業務委託を活用すれば、雇用保険法の改正による影響を受けることなく、必要な業務を柔軟に回すことができます。特に、専門的なスキルが求められる業務については、業務委託の方が適しているケースが多いのではないでしょうか。
さて、ここからは、中小企業における営業活動を例に、業務委託の活用について考えてみましょう。営業を外部に委託する方法には、大きく2つの選択肢があります。1つは、営業代行サービスを提供する会社を利用すること。もう1つは、個人のフリーランスとして活動している人材と契約することです。
私は支援先の仕事の関係で、営業代行サービスと個人のフリーランスを何度か利用したことがありますが、どちらにもメリット・デメリットがあります。
営業代行サービス会社を利用すると、費用が高くなりがちで、決められた業務範囲を超えた柔軟な対応が難しいという特徴があります。
一方、フリーランスの営業パーソンを活用すれば、コストを抑えることができますが、月々の料金が安いと、上手く手を抜かれてしまうことがあります。つまり、目に見えないところで活動しているため、やったふりをしてごまかされてしまう可能性があるのです。
私の経験上いえるのは、結局のところ個人次第であるということです。「誰が担当するか」によって成果が大きく異なります。営業代行サービス会社を利用する場合は、「いい人」が自社の担当になってくれれば良いのです。同様に、フリーランスについてもその人が真面目に頑張ってくれるか次第ということになります。
では、営業代行サービスとフリーランスの営業パーソン、どちらを選ぶべきでしょうか?
個人的には、売上が10億円にも満たない企業の場合は、個人のフリーランスを選ぶべきかと考えています。いくつかの理由があります。
まず、営業代行サービスを提供する会社を選ぶと、料金が高く、その料金を払うくらいなら、フリーランス人材を複数名使い分けることが可能になるからです。おまけに、営業代行サービス会社を利用する場合、契約期間に縛りがあるため、最初の1~2カ月は様子を見るというわけにはいきません。半年以上の契約を求められるはずです。そのため、月額の基本料金が30万円(税抜き)の場合は、いきなり約200万円もの出費が伴います。おまけに先払いを求められるかもしれません。
また、営業代行サービス会社を選ぶ場合、会社自体は選べても、実際に誰が担当するかはわかりません。運よく『いい人』に当たったとしても、担当が2カ月後に交代することもあります。
一方、個人のフリーランスを選べば、自分で『この人がいい!』と決められるのがメリットです。仮に、選んだ人材が口先だけで『●●にアプローチしました』『次は●●へ営業に行ってきます』などと報告してきても、実際には別の仕事のついでに軽く話題に出した程度で、本格的な営業活動にはなっていないこともあります。とはいえ、月々の料金が安ければ、そのリスクは限定的です。
中小企業が生き残るためにこれまでの日本企業は、正社員を中心とした雇用形態が主流でした。しかし、今後は「正社員だけに依存しない経営」が求められる時代になりつつあります。
特に、雇用保険法の改正によって、人材の流動性が高まると、企業は「社員を育てても、すぐに辞めてしまう」というリスクを抱えることになります。そうした状況の中で、業務委託を活用し、柔軟な経営を行うことが、企業の競争力を高める鍵となると考えています。
営業活動だけでなく、経理・人事・マーケティング・カスタマーサポートなど、これまで正社員が担っていた業務は全て業務委託で対応できるのです。専門性の高い業務ほど、外部の専門家に委託した方が、より高いパフォーマンスが期待できるでしょう。
時代の変化とともに、企業の経営スタイルも変わらなければなりません。正社員にこだわらず、業務委託を活用し、柔軟な経営を実現できる企業が、これからの時代を生き抜くでしょう。変化を恐れず、新しい働き方を取り入れた企業こそが、次の時代の勝者となるはずです。
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