【経営コンサルタント021】 

2018年12月 8日(土)

前回の「経営コンサルタントが生き残るために(1)」では、経営コンサルタントにとって最も苦労することは集客とお伝えしました。

経営コンサルティングに限りませんが、事業が上手くいかない主な理由は、新たな見込み客を獲得する流れがないからです。また、それがあったとしてもそれを維持するための十分な戦略や仕組みが欠けているからです。

そこで今回は、独立系の個人経営コンサルタントが新たな見込み客を獲得する流れをどうつくり、いかに生き残るべきかについてお伝えします。

経営コンサルタント起業を希望する人などを対象に商売している人の謳い文句には、年収3,000万円、5,000万円、1億円などと魅力的な数字が並んでいることがよくあります。

確かに、それは可能な数字です。

例えば、月に1回2~3時間の訪問で25万円のコンサルティングを行うと仮定すると、月に20社を訪問すると500万円の売上となります。年間で6,000万円となります。

1カ月に20社は無理だとしても10社を訪問するだけでも月に250万円、年3,000万円の売上となります。素晴らしいですね?

ただし、それらはあくまで可能であるというだけ。経営コンサルタントとして起業する者をターゲットに商売している人たちが売り込み用に利用している宣伝メッセージにすぎないのです。

実態は、そうは問屋がおろさないのです。

なぜなら「経営コンサルタントが生き残るために(1)」で書いたように、よろず支援拠点のようなタダで事業の相談にのってくれるサービスが全国各地にあるからです。そこには中小企業診断士の資格を取得した経験豊富な年配の相談員(コーディネーター)が何人もいます。よろず支援拠点以外にも、探せば無料や格安のサービスが豊富にあります。

また、今は定年退職後に安い給与でも良いから働き続けたいという人が大勢います。そういう人たちと中小企業をマッチングさせるサービスが増えています。業界に精通しているだけではなく、行政とも太いバイプを持っている定年退職者に週に1~2回だけ顧問として勤務してもらうという企業も増えています。

近い将来に目を向けると、今後、1980年代後半に採用されたバブル世代の退職者が大量に出てきます。時代の流れに伴い、60代、70代、あるいは80代の人を経営コンサルタントのようにスポット的に、且つ手頃な料金で上手に活用しようとするサービスが増え、そういう制度を活用しようとする中小企業がさらに増えるはずです。

さらに追加すると、働き方改革や副業解禁の動きにより、スキルの高いサラリーマンによる副業の経営コンサルタントが増えてくるでしょう。

このような動きを踏まえると、今でさえ月1回2~3時間程度の訪問で25万円も払ってくれる企業を探し出すことは大変ですが、今後は先に述べた市場環境の変化により、ますますクライアントを探し出すことが厳しくなるはずです。

運良く月1回2~3時間の訪問で25万円を払ってくれる企業を探し出すことができたとしても、先に述べた「新たな見込み客を獲得する流れ」ではないので、結局のところ、「ラッキーだった!」で終わってしまいがちです。

というか現実に目を向けると、月1回2~3時間の訪問で25万円も払ってくれる企業を探し出すどころか、講演やセミナーにお呼ばれされたことがなく、自らセミナーを企画しても殆ど集客ができない経営コンサルタントが大勢います。

そんな彼らのホームページには1回の訪問で20万、30万円ものコンサルフィーが記載されていますが、実際にはクライアント獲得のために開催するセミナーを繰り返し企画しても人を集めることができないのです。

そのような現実を踏まえ、独立系の個人経営コンサルタントはどうすれば良いのでしょうか?

最初に注目すべきは手持ちの資金です。手持ちの資金が2,000万円以上あり、500~600万円を損してでも大きな賭けに出たいのであれば、本を出版し、その本を日経新聞の全5段あるいは半5段の広告枠で宣伝することも可能です。

当たれば高速エレベーターに乗る如く、大きく躍進するかもしれません。「かも」と書いたのは、私が調査した限り、明らかに失敗組の方が多いからです。

改めて説明しますが、「広告」については圧倒的に損するケースが多いのです。もっと正確に説明すると、後に広告投資を回収する仕組みが構築されていない限り、殆どのケースが失敗に終わります。だから、本を出版し、その本を日経新聞に広告を出して…という方法は大きなリスクを伴います。あっという間に大金を失う可能性があります。

とにかく、経営コンサルタントに限らず「手持ちの資金」については、事業で最初に注目すべきことです。しかし、世の中の個人事業主や零細事業経営者向けのサービスの多くは「○○で儲かる!」式で都合の良いことを主張するだけ。各々の手持ちの資金など考慮していないのです。

では、資金がない場合はどうすれば良いのしょうか?

それは、前回の「経営コンサルタントが生き残るために(1)」で述べた通り、経営コンサルタントの定義に拘ないことです。

月1回2~3時間の訪問で20万円以上も払い続けてくれる企業を探し出そうともがき続けていたら、1件もクライアントの獲得ができないまま2年、3年と時間が経過する可能性があります。「はず」と書いたのは、多数の人が上手くいかない中、上手く成功している人が確かに存在するからです。

重要なことは、経営コンサルタントの定義に拘ることよりも、顧客視点で「彼らのために何ができるか?」「彼らに何をオファーすべきか?」と考えてみることです。それに自身の企画に「Yes」と名乗り出てくれる人を自分の力で探し求めるだけではなく、他人の企画に便乗する方法も検討するべきです。

「経営コンサルタントの仕事はこれだ!」と理想の経営コンサルタント像だけを追い求めるあまり、視野を狭めてはならないのです。

企業を2~3時間だけ訪問し、20万、30万円も取れるなら、それは確かに素晴らしいことです。しかしその方法だけでは売上がないまま時間ばかりが過ぎていくリスクも高いのです。

次に考えるべきことは、活躍できる「場」を決めることです。活躍できる場を絞ることです。「経営コンサルタントが生き残るために(1)」に書いた通り、自分の力で経営コンサルティングの仕事を取る場合は、財務会計、営業、マーケティング、人事、労務管理などという抽象的な専門分野を名乗るだけでは、先に人間関係を構築しておかない限り、多数の中に埋もれてしまいがちです。

公的機関のコーディネーターとして仕事をする場合とは明らかに異なるので、自身が特定の領域で際立つ存在にならなければならないのです。

例えば、独立系の個人経営コンサルタントが「新規事業を支援します!」と売り出しても、何かのキッカケで人間関係が構築されていない限り、いきなり依頼が来ることはまずないでしょう。なぜなら、それでは潜在顧客が頭の中で描く課題やテーマとの関連性がイメージできないからです。

だから「新規事業を支援します!」よりも「ラーメン店の開業を支援します!」「カフェ開業を支援します!」などと専門分野を絞った方が上手くいくのです。

そうやってこれまでの経験や実績などを踏まえた上で、どの領域・専門分野であれば自身が活躍できるのかを明確にすることがポイントです。

ただし、注意点があります。それは「カネが動いているか?」や「今後成長する見込みはあるのか?」ということです。せっかくNo.1になれる「場」があったとしても、「そこでカネが動くのか?」ということをよく調べなければなりません。

それについては、例えば「金魚すくい」が抜群に上手く、他人への指導ができたとしても、「果たしてそれがカネになるか?」「一体、誰がカネを出してくれるのか?」などを検討することと同じです。

次は「小さな実績を大きくさせながら露出し、地位を確立する」「WEBマーケティングは使えるのか?」「広告は個人の経営コンサルには向かない?」などをお伝えする予定です。次回はこちらから。

とにかく活躍できる「場」を決め、そこで小さくても実績を積んでいくことです。そして目標達成に向けて、小さな実績を大きくさせながら、ご自身の地位を確立していくことです。

小さな実績とは、例えばちょっとした勉強会の講師を務めることでもOKです。また実績については、大小の違いとは別に2つのタイプがあります。

1つは自身企画の実績です。自身が企画するセミナーがこれに該当します。もう1つは他人企画の実績です。例えば、業界内では名の知れた○○展示会のセミナーで講師を務めることがこれに該当します。

評価されるのは、他人企画の実績です。しかも大きく知名度のあるものです。というか、ターゲットをどう定めるかによって、どこにどう力を入れるべきかが変わってきます。

つまり「手持ちの資金」や「どこで活躍するか?」を含め、ご自身の事業をどうつくり上げるか次第なのです。

先日、「予算0」「見込み客0」からWEBを活用し、高単価で継続的に顧客を獲得するためのノウハウをお伝えします…、という宣伝を目にしましたがWEBありきではないのです。それは手段の1つにすぎないですから。

なお、文章が長くなってきたので、今回の続きについては次回のコラムでお伝えします。

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