戦略とプロセスを明確化した事業デザイン:
自らに選択肢があることを知りながら「できない」を「できる」に!
【経営・戦略D】
2016年11月20日(日)
前回の「KPIとプロセス3」の記事の中では、バランス・スコアカードを使い、視点毎に「戦略目標→重要成功要因→業績評価指標」と設定していく流れをお伝えしました。
バランス・スコアカードでは、「ビジョン」という大きな目標を掲げ、それを達成させる戦略をベースに複数の視点別に目標を掲げ、それぞれの目標達成に不可欠な重要な要因を絞り込みます。そして、その要因については指標を駆使しながら管理していくのです。
また、バランス・スコアカードでは「〇〇の視点」という表現が使われます。「〇〇の視点」については必ずしも「これでなければならない!」ということはないのですが、バランス・スコアカードをこの世に紹介したRobert S. Kaplan氏の論文を見ても、「financial」「customer」「learning and growth」「internal business process」と4つの視点が使われています。
つまり、日本語に訳すとまさに「財務の視点」「顧客の視点」「人材と変革の視点」「業務プロセスの視点」となり、これがバランス・スコアカードで使われている一般的な「視点」となっているのです。
この4つの視点別に目標を掲げ(戦略目標=KGI)、その目標達成に向けた重要な要因(重要成功要因=CSF)を絞り込み、この要因に対する指標(重要業績評価市場=KPI)を駆使しながら管理していくのがバランス・スコアカードです。また、そのためにターゲット(数値目標)を決めて、アクションプラン(実行施策)にまで落とし込むまでが一連の流れです。
このように、前回までの記事に書いた内容の復習を兼ねながら、ざっくりとバランス・スコアカードの流れおよびKPIという指標がバランス・スコアカードの中でどのような役割を担っているかを説明しました。
バランス・スコアカードの流れそのものは決して難しくないのですが、企業の人を悩ますのはバランス・スコアカードに使われるメトリクスと呼ばれる指標の選び方です。
Kaplan氏の論文を見ると、” As Norton and I began working with the companies, after the initial HBR article appeared, we faced the question about how to choose the metrics that would go on a Balanced Scorecard.”と書いてあります。
これは、ハーバード・ビジネス・レビュー誌にバランス・スコアカードを紹介した後、バランス・スコアカードに相応しいメトリクス(指標)選びに関する課題に直面したとのことです。
Kaplan氏の説明によると、当初、顧客満足度や欠陥率などすでに企業で採択されていた指標(メトリクス)をバランス・スコアカードに採用したようですが、それには企業側が満足しなかったそうです。なぜなら、”too generic”と記載がある通り、それらの指標(メトリクス)が「一般的すぎるから」です。
そこで、Kaplan氏の論文の中では大事なポイントが指摘されています。それは“we quickly learned that creating a Balanced Scorecard should not start with selecting metrics”という記載です。「バランス・スコアカードづくりは、指標選びから始めるべきではないことを学んだ」ということです。
結局のところ、”we came to recognize that before selecting metrics, companies should describe what they were attempting to achieve with their strategies, and, further, that the four BSC perspectives provides a robust structure for companies to express their strategic objectives.”と書かれています。
つまり、企業は指標選びの前に、戦略の実行により何を成し遂げたいのかを明確にすべきであるとのことです。さらに、バランス・スコアカードの4つの視点が戦略目標を示す企業に強固な組織構造を提供するということです。
”we soon learned that we had to start not with measures but with descriptions of what the company wanted to accomplish.”とある通りですが、測定ではなく、企業が何を成し遂げたいのかを描くことからスタートするのです。
バランス・スコアカードづくりでは、メトリクス選びをしようとするのではなく、企業として何を成し遂げたいのかを明確にするのですね?次回はこちらから!
以上、英文をそのまま載せたので難しく感じられたかもしれませんが、バランス・スコアカードの活用に関しては、メトリクス選びの前にまずは企業として何を成し遂げたいのかを明確にすることが重要です。
何を成し遂げたいのかを明確にした上で、メトリクス選びをするのです。
以上となりますが、これまで続けてきた「KPIとプロセス」については次回も継続いたします。
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