戦略とプロセスを明確化した事業デザイン:
自らに選択肢があることを知りながら「できない」を「できる」に!
【経営・戦略013】
2019年 3月 10日(日)
再び『コンサルを超える 問題解決と価値創造の全技法』という書籍から、私が「中小企業にも役立つ!」と判断した内容をお伝えします。今回は、代表的なフレームについていくつかご紹介します。しかし、用語解説のような単にフレームを紹介する方法では面白くありません。そうではなく、知っているつもりの人が見逃しがちな欠点などを中心にさっと説明していきます。
漏れなく、ダブりなくMECE(Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive)に分けるためには通常、ロジックツリーを使うのが問題解決の基本中の基本です。
MECEに分ける目的は、それを完璧に行うことではありません。むしろ、うまく切れないところから、違う答えが見えてくるところにこそ、価値がある、と著者は述べています。また、ロジックツリーの欠点が書かれていました。それは、ロジックツリーを書くと、ロジックで固めたつもりになってしまって、そこで思考が止まってしまう、ということです。だから、そこで思考を止めず、できるだけ多くのロジックパターンを書き出してみることが必要なのです。
なお、ロジックツリーが顧客や売上などの事象の塊をロジカルに細分化していくためのツールであったのに対し、イシューツリーはイシュー(課題)を具体化していく時に利用します。
フレームワークは、どれも問題をMECEに構造化するときに使うものです。
まずはPEST分析の紹介です。これは、政治(Politics)、経済(Economics)、社会・文化(Socio-Cultural)、技術(Technology)の4つの頭文字をとったものです。
私はPESTについて良いフレームワークだと思ったことがありませんでしたが、著者の考えも同じでした。多くの場合、整理学で終わってしまいがちなフレームワークであり、そこから新しい洞察が生まれることはない、と述べていました。
あくまで確認であり、自社らしい戦略を練り上げるためのスタートラインにすぎない、とのこと。その通りであり、「あくまで確認…」のために使うフレームワークなのです。
SWOTについてもPEST同様に、単なる整理学で終わることが多いとのこと。ただ4つに分けて並べるだけでは何の意味もない。だから、当たり前の「強み✕機会」や「弱み✕脅威」ではなく、「弱み✕機会」と「強み✕脅威」にこそ注目すべきである、と著者は述べていました。
次に、市場を、顧客、競合、自社の3つの軸で切る3C分析についてですが、それぞれを独立関数として分析しても意味がありません。3者の重なりと動きに注目することで、市場のダイナミズムを洞察できるのです。現状分析ではなく、将来予測こそが、戦略立案のキモとなる、と著者は述べていました。
SWOT分析同様に、コンサルがほとんど使わないものが5F(ファイブフォース)分析です。5つの要因とは、「既存競合他社」「新規参入企業」「代替品」「売り手の交渉力」「買い手の交渉力」となります。
著者がこれを使わないのは、構造は見えるが、何も新しいことは出てくることなく、現在の状況が記述されるだけだから、と述べています。
また、著者は面白いことを指摘しています。それは、このフレームでは、顧客やサプライヤーを、余剰利益を奪い合う相手であると想定していますが、今日では、顧客やサプライヤーと「共創」して、新しい市場を創るという視点が求められる、ということ。古典的な競争戦略のフレームワークはもはや時代遅れとなってしまっていると批判していました。
バリューチェーンについても著者は否定的な意見を述べており、自社内のことしか、視野に入れていないとのこと。だから、バリューチェーンを自社の活動に限定してとらえてはダメ。まず業界全体としての構造を理解する必要があります。
そのうえで、自らのバリューチェーンを構築するにあたり、何を自社で行い、何を外部に任せ、何を共創していくのかという観点がもっとも重要になる、とのこと。「足すもの」と「引くもの」、「自らやること」「他人に任せること」をクリエイティブに設計し直すのです。
フレームワークについては、教科書通りに使おうとすると、意外で使えないことが多いのです。やはり工夫が必要なのです。次のコラムは、こちらから!
フレームワークの話はお役に立ちましたか?
単独で使おうとしても使い勝手が良くないものが多いのです。だから、教科書通りに、しかも単独で使うというよりも、むしろ「どういう場面で使えるか?」「どう使うべきか?」という点をよく検討した上で使い方を工夫してみましょう。
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