戦略とプロセスを明確化した事業デザイン:
自らに選択肢があることを知りながら「できない」を「できる」に!
【ビジネス書013】
2018年 10月 10日(水)
これは目標達成術について書かれた本です。目標達成に関する本は多く出版されていますが、ソフトバンクの孫正義社長の名前を拝借して、ソフトバンクの事例を少し盛り込みながら説明している点が、他の類似本との違いであり、本書の大きな特徴です。
本書には面白い基本戦略がいくつか紹介されていました。特に目新しい内容ではないのですがネーミングが面白いのです。それらは「わらしべ戦略」「ナンバーワン戦略」「くじ箱戦略」です。まさに事業戦略の策定に通じる内容です。
「わらしべ戦略」については、一人の貧しい男が持っていたわらをみかんと交換するところから始まり、最後はお屋敷を手に入れて裕福に暮らしたというわらしべ長者のおとぎ話からきています。
これは大きな目標の達成に向けて、いきなり大きな目標を目指すのではなく、小さな目標を確実に達成していくことを指しています。
「わらしべ戦略」の例として、何も実績もない平凡な主婦が3年かけて「料理教室を開催する→テレビや雑誌に紹介されて大盛況になる」までの経緯が紹介されていました。
その主婦が最初に行ったことは、カルチャースクールのパンフレットを片っ端から集めてきて、マイナーな分野を調べたことです。調査の結果、「オリーブオイルを使った手作りせっけん」に目をつけたそうです。
そこで「自宅で手作りせっけんの教室を開いている」という実績をまず作り、それをカルチャースクールに売り込んだとのこと。そうやって講師の話が舞い込んでくるようになったとのことです。まさに「自宅で手作りせっけんの教室を開催する」という小さな実績を大きなものに変えていったわけです。
「わらしべ戦略」のポイントは、「ここを押さえたら大きく飛躍できる」という飛び石(中間ゴール)を見つけること。私が販売している「成功パターン」をつくる事業構築という教材には、著者の言う飛び石のことを「中間目標」と表現していますが、著者の指摘通り「ここを押さえたら大きく飛躍できる」というところを見極めることが重要です。
次に紹介する「ナンバーワン戦略」については、どんなニッチでも良いのでナンバーワンになるということです。セグメントを小さく切って、やっている人が非常に少ない分野を見つけ出すことです。自分で勝手に線を引いて、その領域の中で勝手に一番を名乗れば良いとのこと。
先に述べた主婦の例については、「アロマテラピー教室」のような競争相手が多すぎる分野を避けて、競争相手の少ない土俵を選んだことがまさに「ナンバーワン戦略」でした。
この基本戦略は「くじが当たるまで引き続ける」ということです。ポイントが3つあります。そららは、1)当たりが多そうなくじ箱を選ぶ、2)くじを引くコストを下げる、3)くじを引き続ける、の3つです。
ところで、孫社長は常に即断即決するというわけではなく、決めない時は全く決めないそうです。それは優柔不断で決められないのではなく、選択肢を減らさないために、あえて決断を先延ばしにしているとのこと。できるだけ多くの選択肢を最後の最後まで持ち続けて、限界まで決めないことで、ベストな決断をしているそうです。
ある時、著者のところに「なぜ多くの人が大きな成功を収められていないのか?」と孫社長から突拍子のない質問が飛んできたそうです。そして、孫社長は著者にこう言ったそうです。
「ビジョンがないと、本人がどんなに頑張っても同じ場所をぐるぐる回っているだけで、山を登っていかない」。
つまりゴールをはっきりさせなければ、どんな戦略を使ったところで意味がないとのこと。多くの人が成功できないのはビジョンがないから。
脳はある目標を設定し、その達成にむけて自ら回路を作っていくそうです。だから「こうありたい」と強く思い続けることが重要であると書かれています。また目標を明確にすれば「やるべきこと」と「やらなくていいこと」がはっきりします。さらに目標を数値化すると実現する確率が一気に上がり、人も動くようになるのです。
ただし、目標の設定に関する注意点も書かれていました。それは目標を設定すること自体に時間をかけすぎてはいけないということ。私も著者の意見に賛成です。目標設定に時間をかけるのではなく、大きな目標をブレイクダウンして、小さな目標を設定したら、まずは実際にやってみればいいとのこと。
それでうまくいけばそのまま続ければいいし、うまくいかなければやり方を修正すれば良いのです。「仮説でいいから素早く&小さく実験してみる」と書いてありましたが、まさにその通りだと思います。
目標を設定しても一人でできることには限りがあります。そこで本書には、人・モノ・お金・情報といった「世の中の資源」をいかに自分の目標達成のために動員するかがカギになると書かれています。
また孫社長の交渉力のすごさは、その場の口のうまさにあるのではないとのこと。本番のずっと前から入念に準備して、相手が自然とこちらへ寄ってくるような状況を作っておくのだそうです。
「人の力を上手に借りる」というテーマに関し、本書に書かれていた内容を一部、次の通り箇条書きで紹介します。
「プロセスごとに分ければ、問題のありかが見えてくる」など、この本には戦略プロセス経営実践会で提唱している内容と同じことが多く書かれていました。次のコラムは、こちらから!
その他、本に書かれていた役に立ちそうな内容を下記の通り紹介します。主にプロジェクトマネジメントの内容となります。
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