戦略とプロセスを明確化した事業デザイン:
自らに選択肢があることを知りながら「できない」を「できる」に!
戦略プロセス経営実践会の関口です。
こちらのページは、ロボットの導入・活用を社(あるいは事業)として最大限に活かすための考え方(アプローチ)を紹介しています。
組織の中でロボットの活用を検討されている経営者/事業責任者、あるいは、サービスロボットを法人向けに販売している事業向けの内容となります。
なお「ロボット」と記してありますが開発や工学系の話は一切ありません。また、工場などで使われる産業用ロボットの話ではなく、サービス系のロボットを対象としています。しかも、個人向けではなく、法人活用の話となります。下図に示した通りです。
今後、ロボットの導入・活用を検討されている事業者(例:介護、運送、飲食など)を対象に、ロボットの導入を最大限に活かすために取り組むべき事業の構築に関するご提案です。
今、ロボットには人工知能などと並び新産業として大きな期待が寄せられています。
「産業用」と非産業用の「サービス用」の大きく2つに分類されるロボットはさまざまな分野での活躍が期待されています。今後、ロボット産業全体が大きく成長していく中で、特にサービスロボット市場の成長が著しいのです。
産業用ロボットの市場はまだ伸びていきますが、サービスロボットの市場は産業用ロボットを凌ぐ規模にまで成長すると国が試算しています。
ある調査会社の資料によると、法人向けサービスロボット市場全体は、2019年度実績59億円から2020度実績95億円で対前年比159%と大きく伸びました。
そして2021年度見込みは146億円、同154%。2026年度には1,615億円の市場に成長すると試算されています。2019年度の59億円から7年後には27倍もも規模へと大きく伸びるのです。
私、関口は、2010年から自治体のロボット普及推進事業に関わり、特に介護現場におけるロボット導入を支援してきました。メーカー・施設・行政の間に入って橋渡し役の立場で数多くのロボット導入に関わりました。
そこでは「ロボット」という言葉が使われているにも関わらず、以前に関わった製造業や物流現場のロボットとは役割が大きく異なりました。現場への導入が一筋縄ではいかないのです。
国や自治体では新しいロボット産業の育成に向けて躍起です。特に、超高齢社会の課題に直面していることもあり、介護分野への普及・推進にとても積極的です。
中でも神奈川県は2010年に全国に先駆けて介護分野へのロボット普及事業をスタートさせ、また2013年には国から「さがみロボット産業特区」が地域活性化総合特区として認定され、先駆的にロボット産業の育成に取り組み始めました。
そんな神奈川県事業とのご縁により数多くのロボット導入先やメーカーなどと関わりました。また、試験導入、実証事業、ロボット関連イベントの企画などロボットの普及に向けたさまざまな業務を経験しました。ロボット分野の講演依頼も数多く、それは年々増え続けています。
でも、残念だったことがあります。それはせっかくロボットが(介護施設に)導入されても、少し時間が経過すると上手く活用されないケースを多く目にしたことです。実証事業と称される事業の実施期間中は良くても、その後が問題でした。
しかも「ロボット普及の阻害要因」として指摘されがちな「金銭面」「機能面」「操作性」などの課題についてはクリア(買い手が納得)した上で導入したはずなのに、少し時間が経つと活用されなくなるケースを多く目にしたのです。
このように私、関口は自問自答を続けました。何度も試行錯誤し、悩みました。毎日のようにあちこちの介護施設に足を運んでいたので、一部の方からは「あの男がまた来たのか?」と呆れられていたはずです。
そして、2年以上も悩み続け、試行錯誤の末にようやく「これだ!」とたどり着いたことがあったのです。
ロボットを一つのツールとして活用してもらうために、ユーザー側に操作方法を習得してもらうことは当たり前のこと。そんなことよりも、もっと重要なことがあると気付き始めたのです。
単に「ロボット(モノ)の普及」という狭い視点で検討すると、価格、機能面、操作性などの課題が常に指摘されがちです。これらは全てメーカー起因の課題であり、メーカー視点の要因とも言えます。
また、ロボットの活用による生産性の向上や成果の見える化などは好ましいことです。つまり、ロボットを活用することによる成果の定量化・見える化という話です。
事実、国ではロボット産業育成の一環として「(ロボット活用により)本当に成果があるのか?」を検証するための事業が行われています。国の資料を見ると「アウトカムの実証・評価」という表現が使われていますが、こういう事業を通じてエビデンスを得て、普及を後押ししたいという思惑があるのでしょう。
しかし、ロボットを導入・活用するユーザーにとって、活用に際し最大限の効果を期待するためにはもっと重要なことがあるはずです。
ここで一旦、再び介護分野のロボットの話に戻りますが、実は介護施設でロボットが上手く活用されていないケースをよく観察してみると、ある共通点が見られたのです。
共通点とはズバリ「買い手(=使い手)」のロボット受入れに向けた「準備不足」です。それに「活用ノウハウの不足」です。
要するに、次のような状態になっていたのです。
よくありがちな「ロボットの担当者を決めて、その人にロボットの操作方法を覚えてもらい、使ってもらう!」という導入方法では不十分だったということ。「決めるのは上層部、使用については現場任せ!」では、(使い続ける特別な理由でもない限り)興味本位で飛びついても後に活用されなくなりがちです。
「なぜロボットを導入するのか?」「活用することにより、本当は何を目指しているのか?」「そのために何を、どう実行していくのか?」
こういった基本的な決めごとを含め、組織内の体制づくりができていないまま導入・活用を進めてしまうと、後に上手くいかなくなるのです。興味本位で飛びついたことが裏目に出てしまうのです。
別な言い方をすると、ノウハウがなく、準備が不十分なまま、なんとなくおぼろげな目的のままロボットを導入してしまう(無理にでも購入してもらう)…。こういうことが問題なのです。
実は、先に書いた「もっと重要なこと」は「マネジメント」にあると私は判断しています。これが問題の根源ではないでしょうか? つまり、”組織の中で”ロボットを活用する”ということを前提にしたマネジメントが課題になっていたのです。
これは機能面や操作性といったメーカー起因の課題ではなく、”使い手”側に起因します。
ロボットの普及に際しては、産業育成という目的から「モノづくり」が優先され、価格、機能面、操作性、それにエビデンスなどばかりに注意が払われがちです。でも実は、ロボットを使う側の課題の解決も必要なのです。
先に書いた事例と同じ轍を踏まないためには、施設として「なぜ、ロボットを導入するのか?」という原点に帰り「ロボット導入ありき」で考えるのではなく、自社の現状を把握して、直面している課題を整理する。これを最初にやるべきではないでしょうか?
また、それよりも先に「あるべき姿」を描くことが重要です。「現状」と「あるべき姿」の間にはギャップが生じているので、そのギャップを埋めための解決策として「ロボットの導入」が相応しい選択肢であるかどうかを検討すべきなのです。
その後、「導入する!」と意志決定したら、導入することで達成すべき目標を明確にします。また、ロボットの導入後、時間の経過と共に当初掲げた目標が達成できたかどうかについて測定・評価することが重要です。
測定・評価した結果をチェックしながらカイゼンしていく仕組みをつくるのです。このような仕組みをつくり、ロボット活用の成果を「見える化」させるのです。
さて、上に書いた課題は介護現場でよく見られたことですが、程度の差こそあれ運送業や飲食業などの一般企業でも同様の問題に直面しているようです。
しかも、介護分野に限らずどの業界にも共通して言えることは「ロボットの導入・活用は単なるツールとしてではなく、経営視点から検討した方が良い」ということです。
「単なるツール」として扱うだけでは勿体ないのです。これがロボット導入・活用で最大限の効果を発揮させる(レバレッジを効かせる)ためのポイントです。
つまり、介護に限らず、運送業やサービス業でも同じですが、「サービスロボットの導入・活用」を単独の狭義なテーマとして捉えるだけでは不十分なのです。部分最適ではなく全体最適を狙うためにトータルな視点が必要ではないでしょうか?
ロボットの導入・活用を、「操作方法を学んで(例えば、接客などの)業務に役立てたい!」と単なる「業務のお助けツール」や「話題づくり」的な狭い考えから検討する限り部分最適にしかならないのです。
そうではなく、ロボット導入・活用を戦略的に経営の視点から行うべきではないでしょうか? 「部分最適」ではなく「全体最適」を目指すのです。
経営の視点とは、1つ1つのアクションが単独で独立したバラバラな状態で実施されるのではなく、企業(あるいは事業)全体へのインパクトを捉え、それぞれがビジョンや戦略とリンクされていることです。
マーケティング的な視点で検討する場合、「皆がやっているからウチもFacebookやろう!」「ヨソがYouTubeを始めたからウチもやろう!」ではないはずです。まずは自社のビジョンや戦略が先にあるべきであり、明確化されるべきです。
そして、それを実行していく上で、どのように見込み客を獲得し、彼らを購入客、そしてリピート客へと導いていくかの検討が必要です。その過程において、目的達成の手段の一つとしてFacebookやYouTubeの活用が検討されるべきなのです。
「FacebookやYouTubeありき」ではなく、「戦術(ツール)ありき」でもないはずです。このことは、ロボット導入・活用でも全く同じです。ロボット(ツール)ありきではないはずです。
もう少し追加して説明すると、「自分(自社)が戦っている市場(ゲーム)では今、何が起きているのか?」「その市場(ゲーム)は今後、どう変わっていくのか?」「その市場(ゲーム(における自社の役割は?」などということを理解し、明確にした上でロボットの活用を検討すべきなのです。
重要なのは、ロボット(ツール)の導入・活用に際し、その上位概念となる「戦略」をまずは明確化することです。すべては戦略ありきです。事業を展開する以上、個人であれ大企業であれ「戦略ありき」のはずです。
例えば、個人事業主の中には「人脈づくりが大切だから!」とむやみに交流会への参加を好む人がいます。同様に、企業の中には客先回りばかりをする営業マンがいます。しかし、明確な戦略や方針がないまま動きまわることは無駄(単なる時間稼ぎ?)になりかねません。
自社の限られた資源(リソース)を有効に使うためには、戦略の明確化がなによりも不可欠であり、これはロボットの導入・活用についても同じと言えます。
要は、社あるいは事業の戦略を明確にして、きちんと事業の構築を行った上でロボット導入・活用の検討をする。これが理想ではないでしょうか?
まさに戦略あってのロボット活用であり、ロボットの導入・活用が社(事業)のビジョンや戦略にリンクしなければならないのです。
逆に「ロボットありき」ではありません。ロボットの導入・活用がビジョンや戦略とのリンクがないという状態では良策とは言えません。
戦略やプロセスが明確化され、きちんと事業を構築した上で、ロボット導入・活用を検討すべきなのです。
「部分最適」ではなく「全体最適」を狙うためにも、体系的な事業の構築を行った上でロボットという新たなツール(戦術)を上手く活用していく!
これこそが経営戦略としてのロボット導入・活用であり、最大限の効果の発揮(レバレッジ)が期待できるはずです。
そこで、焦ってロボット導入を急ぐのではなく、ロボット導入・活用の検討を機に、事業全体の棚卸しをする機会を設けるべきではないでしょうか?
戦略を明確にし、体系的なプロセス管理による戦略経営の仕組みを構築しませんか?この取り組みこそが、(ロボット導入の有無に関係なく)ビジョンの実現および事業の最適化につながるはずです。
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