戦略とプロセスを明確化した事業デザイン:
自らに選択肢があることを知りながら「できない」を「できる」に!
【マーケティング029】
2023年4月28日(金)
こんには、関口です。
今月に入ってから、私は「中小企業が新規事業を開始した際に避けるべきポイント」と題して3つのコラムを執筆しました。それらのサブタイトルは、それぞれ以下の通りでした。
今回は、これまでの内容と重複する箇所もありますが、中小企業が新規事業を開始する際に陥りがちな失敗例をいくつか紹介します。
一つ目に挙げられるのは、DX(デジタルトランスフォーメーション)ブームに乗って、流行りのツールに手を出し、業者から媒体を次から次へと提案され、買わされてしまうことです。また、顧客獲得に必要な販促ツールについて、売り手視点で作成されているため、顧客の心を掴めていないことも課題となります。
そこで、このコラムでは、中小企業が新規事業を開始する際に注意すべきポイントとして、「DXブームに翻弄されてしまうこと」と「顧客理解が欠けた事業展開」について解説します。前述したような失敗を避け、事業の成功につなげるために、ぜひ参考にしていただければ幸いです。
中小企業にとって、DXは、ビジネスを効率化し、新たなビジネスチャンスを生み出すための重要な取り組みです。しかし、DXに乗り遅れることを恐れてか、あるいは、周囲の企業が取り組んでいるからといって、あわててDXに手を出してしまうと、思わぬ失敗に陥ることもあります。DXというよりもDXもどき、あるいは、新しいツールの導入と表現した方が良いかもしれません。
例えば、ある中小企業は、SNSに力を入れてECの運用面を強化しようとしました。広告にも投資し、多くのユーザーにアプローチしようと試みたのですが、反響があまり良くなく、投資した費用以上の売上を作ることができませんでした。投入した広告費が、それによって作り出された売上を遥かに上回ってしまったのです。
これは、自社のビジネスモデル、それに後で述べる顧客理解について不十分なまま、SNSを使うという流行に流されてしまった結果ではないかと考えています。
また、別の中小企業は、MA(マーケティングオートメーション)など、最新のビジネスアプリケーションを導入したところ、社員のスキル不足や業務プロセスの変更などの対応ができないまま予期せぬトラブルに見舞われました。また、社員の意識についても、どうしたら顧客の満足度を高められるかという顧客視点よりも、むしろMAの操作方法を習得することに躍起になっていたのです。
これはよくあることですが、ツールを活用することが目的になってしまったのです。以前のコラムで述べた「WEB展開に固執すること」と同様に、ツール(この場合はMA)を活用することに固執していたのです。
このような失敗を避けるためには、DXに乗り出す前に、ビジョンや戦略をきちんと明確にすることです。それに、「どこから、どうやって利益を出すのか」という自社のビジネスモデルを構築し、顧客理解を深めることが重要です。目的や目標を明確に設定し、実行計画を立てることになりますが、それを確実に実行するためには、必要な人材や販促ツールなどの準備も求められます。
さらに、DXは単なる技術革新に留まらず、組織文化の変革を求めるものでもあります。DXは新たな価値観や考え方を導入し、既存の組織文化と矛盾することもあるため、組織全体の意識改革が必要になることもあります。
中小企業がDXに取り組む際には、これらの点を念頭に置いて、自社に合った取り組み方を模索することが重要ではないでしょうか。
「必要な人材や販促ツールなどの準備」と述べましたが、中小企業が新規事業を展開するに際し、販促ツールを作成することは非常に重要です。しかし、その販促ツールが売り手視点で作成されてしまうと、顧客の心を掴むことができないでしょう。
例えば、チラシを作成する場合、見た目の体裁面はもちろん重要ですが、顧客のニーズや問題解決のための提案が盛り込まれていなければ、売り手都合の綺麗ごとを並べた宣伝文にすぎず、成果が上がりません。ありきたりの内容を記載し、ばら撒けば良いというわけではないのです。これでは作成のために投入した時間や費用が無駄になってしまうだけです。
売り手として自社の製品やサービスについて熟知していることは重要ですが、顧客の立場に立って考えることが必要です。顧客は、自分たちが抱える問題を解決してくれる製品やサービスを求めています。そのため、販促ツールには、顧客理解を深めた上で、顧客の問題を解決するための提案やメリットを明確に示さなければなりません。
理想は、相手の立場を理解した上で個別に提案することができれば良いのですが、BtoCの場合においてはそれが難しいかもしれません。そのような場合は、「誰が顧客なのか?」ということを明確にした上で、複数のターゲットを用意し、それぞれターゲットの要望に応じた情報の出し分けが有効です。
つまり、販促ツールは顧客の心を掴むために、顧客のニーズや問題を解決するための提案を盛り込むことが重要なのです。売り手視点でなく、顧客視点に立った販促ツールの作成が求められるのです。一見すると当たり前のことかもしれませんが、意外なことにこれができていない中小企業が非常に多いと私は感じています。大企業でも同じことが言えるのですが、担当者は顧客を見ることなく、社長や上長の顔色をうかがってしまうのです。
中小企業が新規事業を開始する際に、顧客のニーズや要望を十分に調査することなく、自分たちの期待感だけで事業を展開しようとすることがあります。しかし、顧客が求めているものと異なることを訴求・提案してしまうことになります。これが顧客離れにつながる一因です。
販促ツールの作成を含めて、顧客理解に基づいた事業を展開すべきなのですが、そのためには、顧客のニーズや要望を十分に把握することが大切です。そこで、可能な限り、顧客と直接話をする機会を設けて、顧客の声を聞き、その声を反映した事業の展開が不可欠となります。
販促ツールの作成は、その結果に基づいて行った方が良い成果が期待できるのでは? 商品やサービスの特徴、メリットを顧客のニーズに合わせて伝えることで、顧客の心を掴むことができます。さらに、顧客と直接話をする機会を設けることは、顧客との信頼関係を築き、ファンを増やすことにもつながるのです。
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