戦略とプロセスを明確化した事業デザイン:
自らに選択肢があることを知りながら「できない」を「できる」に!
【マーケティング028】
2023年4月22日(土)
こんには、関口です。
中小企業が新規事業を開始する際に避けるべきポイントの1つに、「資料の作成を怠ること」が挙げられます。
「マーケティング026」のコラムで指摘した「WEB展開に固執する」のケースよりは数が少なく限られますが、資料の作成を時間の無駄だと考える経営者が存在します。ごちゃごちゃしたことを整理してまとめることが苦手ということは仕方ないことかもしれませんが、資料作成に対して価値を見出さない人がいます。「自分の頭の中にあるから」という理由で作成は不要だと思っているようです。
しかし、中小企業が資料作成を怠ることは、大きな障害となる可能性があります。「マーケティング027」のコラムで述べたように、顧客管理に関する問題は記録を残さないために履歴がわからず、情報の共有ができなくなることにあります。
同様に、資料作成を怠ると、情報がきちんと伝わらなかったり、社員がそれぞれ勝手な解釈をしてしまったり、時間が経過した後に過去を振り返ることができず、適切に反省が行われないなどの問題が発生する可能性があります。
また、過去には「外に出て足で稼いでくるのが営業の仕事だ」「そんな資料作成の仕事は女の子にでもやらせておけ」といった差別的な発言をする人も少なくありませんでした。しかし、これらの発言や昭和の感覚は、令和の時代においては古くなっています。
資料作成を重視することで、組織全体で共通の理解を持ち、正確な情報を共有することが可能になります。中小企業が持つ資源や人材を最大限に生かすためにも、資料作成は欠かせないものと言えるでしょう。
新規事業を開始する際に、経営者自身が何をしたいのか、どういう目的を持っているのか、どのような方法で「あるべき姿」へ到達しようとしているのかを明確にすることはとても重要です。
しかし、資料の作成を怠ることによって、考えや伝えたいことが漠然としてしまいます。頭の中で考えるだけでは、思考があいまいになったり、適切なアイデアが出てこなかったりすることがあります。そのため、自分の考えを整理し、第三者に正しく伝えることができるようにするためにも、資料の作成を行うべきなのです。
このような資料には、事業計画に関するものや業務に必要な説明用のものが含まれます。資料を通じて、自分の考えを整理し、明確に伝えることができるようになるのです。
新規事業の立ち上げには、社員の協力が必要不可欠です。しかし、経営者自身が考えていることは、社員に十分に伝わらないことがあります。口頭で1〜2回伝えただけでは、細かい点まで伝わりにくいため、正確に伝わらないという問題が発生します。
だからこそ、資料を作成して、社員に正確な情報を提供することが必要なのです。資料には、ビジョンやミッション、目標などの情報を含めることができます。
さらに、社員からの意見や提案を募るために、資料を活用することもできます。社員のアイデアを取り入れることで、より良い新規事業の計画が立てられる可能性が高まります。情報が正確に伝わるよう、資料作成を行った上で口頭での説明に努めるべきなのです。
また、資料を作成しないことによって、時間が経過した後、過去を振り返ることができず、十分な反省を行うことができないという問題も発生します。新規事業を開始する場合、最初はうまくいかないことが多く、大なり小なり試行錯誤を繰り返すはずです。
失敗を繰り返すことで、改善点が見えてくることがあります。しかし、資料がなければ「そもそも当初は、何を狙い、何を計画したのか」「どこの何が原因で失敗したのか」「だから、どのような対策を打てばよかったのか」などということを正確に把握することができません。右へ、次に左へと試行錯誤を繰り返していても、記録(資料)がなければ、そのことにすら気づかず、後から都合よく正当化されてしまう可能性があります。
これではいつまで経っても改善点を見つけ出すことはできず、事業の伸展は期待できません。PDCAを回すどころでの話ではありません。だからこそ、適切な反省をすることができるようにするためにも資料を作成すべきなのです。
これまで資料作成の重要性について述べてきましたが、実は必要以上に立派な資料を用意することには問題もあります。例えば、シンクタンクが国や自治体から高額な委託費をいただくために作成する分厚いレポートや役所が作成するような形式ばった資料は、読む人にとって読みにくく、時間がかかってしまいがちです。もし社内の担当者が作成するとしたら、その時間もバカになりません。
また、冗長な情報が多く含まれている場合もあります。必要以上に立派な資料を作成することで、本来の目的から逸脱してしまい、読む人の負担を増やしてしまうことになりかねません。
ちなみに、役所がつくるような形式ばった資料とは、行政特有の堅苦しく、曖昧で分かりにくい表現が多いという特徴を持ちます。このような資料は、ごく普通の中小企業の社員にとっては理解しにくく、苦痛を感じることが多いはずです。
このような資料の作成は、一般の中小企業では殆ど見たことがありませんが、行政との関わりが深い介護施設では何度か目にしたことがあります。
資料を作成する場合には、読む手の立場を理解した上、理解しやすいように、分かりやすくまとめ上げて表現することがポイントです。
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