【マーケティング026】 

2023年4月13日(木)

こんには、関口です。

今回のコラムから「中小企業が新規事業を開始した際に避けるべきポイント」というタイトルでこれまで中小企業の新規事業を見てきた私が気になっていることを、いくつかのサブテーマに分けてお伝えします。今回は「WEB展開に固執しすぎない」というサブタイトルでお届けします。

さて、中小企業が新規事業を始める上で、WEB展開に力を入れることは大切です。私がネット通販に関わり始めた20年以上も前からオンラインショップを展開する中小企業は多数ありました。しかし、5~6年前からDX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉がバスワードとして流行るようになったこともあり、特にコロナ禍が始まった2020年以降、本格的にWEB展開に乗り出す中小企業が増えてきました。

しかし、WEBでの販売に固執しすぎると、思わぬ失敗を招くことになりかねません。今回は、WEB展開に固執しすぎないためのポイントを紹介します。

ECサイトや楽天市場、アマゾンなどのWEBサイトを利用することは、効果的な手段です。しかしそれに固執し、リアルのプロモーションと切り離して、WEB単体だけで大きな売上を狙おうとすることは、良策ではありません。

今回は、ある企業の例を紹介します。この会社は、卸し販売ではあと少しで10億円に届く程度の売上規模があります。しかし、自社のECサイトや楽天、アマゾンへの出店などWEBによる直販の売上は月平均で10万円にも満たず、年間売上は100万円にすぎませんでした。

5年後に年間売上1億円を目指していた企業でしたが、広告に投資するという発想はありませんでした。当初は、自社のECサイトをリニューアルし、オンラインショップの出店先を見直し、SNSに力を入れれば、売上1億円が達成できると考えていたのです。

この企業は、WEB販売について、既存の卸し販売と完全に切り離して考えていましたが、後にWEBに固執しすぎることは危険だということを学びました。

自社のECサイトを立ち上げて、WEBマーケティング関連の取り組みだけで大きな売上をつくり出そうとするよりも、既存事業のリアルの取り組みと連携しながらWEB販売での売上アップも狙う戦略を検討した方が良いのです。

WEB販売については、参入することは非常に簡単ですが競争が大変です。なにせネット上で競争することは、全国どころか海外の事業者との競争を強いられることになります。価格で簡単に比較されてしまうし、ワンクリックで逃げられてしまうことにもなります。

ECビジネス戦略において、WEB販売は複数の販路のうちの1つであり、リアルのプロモーションや活動との連携が必要ではないでしょうか。同じ商品を扱っているにも関わらず、既存事業と連携しないで、「ネットはネットで」とWEBマーケティングのノウハウに頼ってサイトへのアクセスを集めようとすると、集客面において大きく悩むことになるはずです。やはり、それなりのアクセスを集めるとなると、広告への投資が必要になるのです。

この会社は過去の経験から「広告に金を出しても無駄になるはず」と考えていたので、手を出さなかったのですが、中小企業の中には「SEO対策のためにキーワード選定を行い3位内に入れば…」「コンテンツマーケティングをやるために新サイトを立ち上げれば、アクセスが集まり…」などと業者にあれこれ提案されて、余計な媒体を買わされてしまうことがよくあります。

しかも、自社で運用することができなければ、その業務をお任せすることになります。あるいは、SNS活用やYouTube編集といった研修への参加を勧められることになります。そうなると、業者の思うつぼです。多少なりとも売上が伸びたとしても、それ以上に出費が大きく膨れ上がってしまうことでしょう。

これでは、売上(あるいは利益)を上げるという目的から逸脱し、ツールを活用することが目的になってしまいがちです。これこそ非常に重要なポイントの1つです。

実は、広告投資がなくても、既存事業の強みを生かしたWEB販売の強化は可能です。例えば、実店舗で商品を展示することで顧客にアピールし、ECサイトへ誘導することができます。

また、ECビジネス戦略を立てる上で、高い視座で事業を俯瞰することが大切です。WEB販売はあくまでも販路の1つであり、リアルのプロモーションと連携することで、より効果的なビジネス展開が可能となるのです。

中小企業が新規事業を始める際には、その業界の特性や顧客層、競合状況などを踏まえて、自社に合った販売方法を選択することが大切です。ヨソがやっているからと「WEB販売ありき」の発想で、新規事業として直販への取り組みを本格化させることは決して良い方法でありません。

WEBに固執するのではなく、既存事業との連携をはじめ、さまざまな販路を検討した上で判断を下す必要があります。私が通販ビジネスで新規事業を担当した約20年前は、WEBは販路の1つにすぎず、受注全体の15~25%を占めるにすぎませんでした。他の通販事業者でも同じでした。その割合が今、大きく変わったのです。そのようなこともあり、見込み客集めの活動をはじめ、全てをWEBだけで完結させようという発想で事業に取り組む中小企業が意外と多いのです。

何よりも重要なことは、顧客の声に耳を傾け、顧客戦略を明確にし、それに合致する形で、手段・手法を検討することです。「WEBありき」で手段から入るのではなく、顧客を中心に考え、全体を考えた上で効果的なマーケティング戦略を立てることが求められるのです。

如何でしたか?次のコラムも「中小企業が新規事業を開始した際に避けるべきポイント」というタイトルでお届けしますので、ご期待ください。

 

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