戦略とプロセスを明確化した事業デザイン:
自らに選択肢があることを知りながら「できない」を「できる」に!
【経営・戦略022】
2023年 9月14日(木)
こんにちは、関口です。
今回は、「社長の変革から始まる:10億円企業の設計図とは何か」のコラムの続きとして、10億円企業を築くための方法についてお話しします。この内容は2回にわたってお届けします。前回のコラムでも述べた通り、書籍『売上2億円の会社を10億円にする方法』の著者である五十棲氏の意見を参考にし、重要なポイントをいくつかご紹介します。
なお、ここで言う「10億円企業」とは、あくまで目標の数値であり、この本では「10億円に到達するためのプロセス」が提示されているわけではありません。巷には「10億円ビジネス」「売上10億円」などと謡っているケースがありますが、その殆どは目標(期待)値としての10億円ということです。
最初に、10億円企業の設計図(ビジネスモデル)を実行するために、著者である五十棲氏が本の中で何度も強調していた重要な点を3つご紹介します。
1つ目は社長が現場から遠ざからないということです。10億円企業へと躍進するためには、社長が全てを抱え込むのではなく、業務を分割し複数の担当者が協力する体制を整えることが求められます。五十棲氏は「職人工房」という表現を用いていましたが、これを「工場」へと変える必要性を強調しています。また彼は「社長がもはや現場に出ないと決断した瞬間から、社長の役割は変化するのです」とも述べています。
2つ目は、社長の平均的な社員に対する期待です。五十棲氏は一般的な社員が、平均して社長の実力の約30%しか持っていないと主張しています。そこで、事業を展開する際には社長の実力の約30%の能力しか持たない人材を前提として組織を構築する必要があります。この30%という数字は、何を基準にしているのか不明瞭ですが、五十棲氏は「デキの悪い者しか集まらなくても仕組みで回る組織にしなければならない」ということを強調したかったのかと、私は考えています。だから30%という数字は、「10億円」と同様に読者の興味を引くために用いられているだけと思われます。
最後に、3つ目は企業の理念です。企業の理念は重要であり、多くの著名な経営者もその重要性を強調されていますが、五十棲氏の提案には独自の視点がいくつかあります。その一つは企業理念で社員を評価することをお勧めしている点です。理念と社員の行動指針との整合性を評価するのです。また、採用においても、企業理念への共感が選考基準として採用されるべきだとしています。
結局のところ、10億円企業を築くために最も重要なポイントは、「社員が自律的に動き、仕事が回っていくような仕組みを確立すること」です。この点に関して、私も完全に同意します。つまり、核心の問題は「社員が自律的に動き、仕事が回っていくようにするためにはどうすべきか?」ということです。この問題に対して、五十棲氏は仕組み、構造、設計図を解決策として提案しています。このコラムでは触れませんでしたが、他にも解決策を提示している人もいます。
ポイントは、「どうすれば社員が自発的に行動できるようになるか」ということで、簡潔に表現すると「人材育成」ということです。ただし、「人材育成」という言葉は広く使われており、文脈によって異なる意味合いを持つことがあるため、注意が必要です。例えば、動画の編集方法を教える講座は、一部では「DX人材を育成する」というテーマの一環として位置付けられます。しかし、単に動画編集ソフトの使用方法を教えただけでは、社員が自発的に行動することはありません。
書籍には「成長に悩む企業の多くが、何をすべきかを確立せずに時間を浪費している」と記されていますが、これは事実だと思います。私が運営する戦略プロセス経営実践会では、無料のオンライン相談・診断サービスを提供しており、「社員が自律的に動き、仕事が回っていくようにするためにはどうすべきか?」についても解決策をいくつかご提供していますので、ご興味のある方はぜひご相談ください。
前述の通り、最も重要な問題は「社員が自律的に動き、仕事が回っていくようにするためにはどうすべきか?」ということです。SNSや動画の活用に躍起になる企業もありますが、それらはツールの一つにすぎません。そんなことよりも重要なのは、社員が自律的に動き、仕事が回っていくようにすることです。組織が社長1人に頼る体制から脱し、社員が自発的に行動し、業務が円滑に進行するようになれば、業績も向上し、10億円という目標に向かって進むことができるということです。
では、その解決策は何でしょうか? つまり、社員が自律的に行動し、業務が円滑に進行するためにはどうすれば良いのでしょうか?
繰り返しになりますが、この解決策として、五十棲氏は「設計図を持つこと」を提唱しています。また、この設計図は、大きく2つのパート、すなわちマーケティングとマネジメントから成り立っています。前回のコラムで述べた通り、マーケティングのパートには「商品設計」「店舗設計」「集客設計」「営業設計」「実務設計」「アフターフォロー設計」「クレーム処理設計」の7つの要素があります。
一方、マネジメントのパートは、「採用設計」「教育設計」「管理設計」「評価設定」「理念設計」の5つに分けられます。計12の要素から成る設計図ですが、その中に「店舗設計」という要素が含まれていることに私は疑問を感じました。なぜなら、店舗を持たないという企業が多くあるからです。
また、私が読んだのは新装版でしたが、この書籍は2005年に出版されたものであり、当時と比べて現在の市場環境は大きく変化しています。五十棲氏が深く関わったリフォーム業界とは異なる業界の方が多く存在します。そのため、店舗設計が必要でないケースもあることが一言だけ述べられていました。
次回のコラムでは、設計図を構成するマーケティングとマネジメントの要素に関するポイントを詳しく説明します。
年間売上10億円規模の中小企業の新規事業向け
勝てる事業の戦略とマーケティング
「損益構造の見える化」で収益最大化を目指すポイント!