戦略とプロセスを明確化した事業デザイン:
自らに選択肢があることを知りながら「できない」を「できる」に!
【ビジネス書003】
2016年10月2日(日)
大前研一氏の「0から1」の発想術では、役に立つ思考法がいくつか紹介されています。言われてみると、特に目新しい思考法という感じではないのですが、それを自身のビジネスに活かしている人は少ないかもしれません。
なぜなら、多くの人は「固定観念」や「常識」にとらわれてしまい、それをベースに物事を考えてしまいがちだからです。
本書で紹介されている複数の思考法の中から3つを選び下記の通り紹介します。
1つ目は「戦略的自由度」。これを説明するに際し、典型的な技術者を例に挙げています。大前研一氏曰く「自分たちの技術をユーザーに届けることがすべてだと勘違いしている」と。つまり「自分たちがユーザーに何を提供したいか」というところから発想してしまっているとのことです。
そうではなく、戦略的自由度を確保するための方法として、「ユーザーが求めているものは、何か?」「私たちは、それを十分提供していけるか?」「ユーザーが満足していない部分の原因は何か?」「それを解決するためにはどういう方法があるか?」などの問いを順番にぶつけていくことをすすめています。
「会社として何を提供したいのか?」という発想ではなく、「ユーザーはいったい何を求めているのか」と、ユーザー側から発想することが重要であると主張しています。
一見、当たり前のような感じがするのですが、企業に技術先行型が多いことは「戦略プロセス経営実践会」とは別にロボットビジネスにも関わっている私も日頃から痛感しています。
2つ目に紹介したいのが「ニュー・コンビネーション」。これも難しい話ではなく、単に異なるモノを組み合わせることで新たなモノを生み出すということです。
例えば、セブンプレミアムがあります。これは、低価格が相場であったPB を高価格に変えたのです。「PB」 に「高級感」を持ち込んだわけです。
ポイントは、1)既存の2つのものを足してみる。2)足したことで、価格と価値がいかに変化するか、ということです。私たちがアイデアに行き詰っている時は、往々にしてそれまでの延長線上で物事を考えているとのこと。延長線上で突き詰めていくだけではビジネスは広がらないので、目の前にあるものに、別の異物をプラスして考えようということです。
3つ目に紹介するのが「固定費に対する貢献」ですが、「固定費は遊ばせておいたら金を生まない。遊ばせておくぐらいなら、少しでもいいから費用を回収しよう」というのがポイントです。
これも言われてみれば「当たり前」ですが、本書で紹介されている例については「なるほど!」と納得しました。
例えば、「平日の観覧車にどう人を集めるか?」という課題への解決策です。答えは、「顧客をシールド化する」とのこと。シールド(shield)化とは、「隠す」「隠ぺいする」「見えなくする」などの意味があります。
しかも、ナローキャスティングするとあります。ナローキャスティングについて少し調べてみると、「マス・メディアを使うブロードキャスティング型の広告に対し、特定のターゲットを狙って効率的に狭い範囲で行う広告や販売促進活動のこと」とあります。
つまり、人が来ない曜日や時間帯などに、通常料金より安く利用させてあげること。ポイントは、シールド化とナローキャスティングを使って、ある特定の人に利益を与え、しかも、そのことが他の人にはわからないようにすることです。
もう1つの面白い例として熊本県の黒川温泉が紹介されています。これまでの温泉街では、各旅館が自らカラオケやレストランなど様々なサービスを旅館内に設け、顧客を囲い込もうとしたのです。しかし、それが原因で宿泊客が外出しなくなり、結果として温泉街が廃れてしまったです。個々の温泉旅館が個人プレーをした結果、街そのものに魅力が無くなってしまったのです。
「固定観念」や「常識」にとらわれず、様々な視点から検討してみることが重要ですね。次のコラムは、こちらから!
そこで、黒川温泉では、「街全体が 1つの宿、通りは廊下、旅館は客室」というコンセプト」を打ち出し、ゴーストタウン同然だった当温泉街を人気温泉へと変貌させたのです。温泉街全体で取り組んだ素晴らしい事例です。
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