戦略とプロセスを明確化した事業デザイン:
自らに選択肢があることを知りながら「できない」を「できる」に!
【マーケティング032】
2024年8月22日(木)
こんには、関口です。
つい先日、西口一希氏の『マーケティングを学んだけれど、どう使えばいいかわからない人へ』という本を1年ぶりに再読しました。この本には、私が前々から痛感していたことが、ずばり指摘されていました。マーケティングに携わる者として、日々の業務において感じる違和感やジレンマが、この本によって明確に言語化されたように感じました。
特に私が共感したのは、多くの企業が「HOW(手法)」にばかりに注目し、本来の目的やお客さまの理解が置き去りになっているという点です。西口氏の言葉を借りれば、マーケティングの本質は「お客さま」と「プロダクト」の関係性、つまり「WHOとWHAT」にあります。しかし、現実にはこの重要な要素が見過ごされ、単なるツールの運用や表面的な手法に終始しているケースが多いのです。
西口氏が本の中で繰り返し強調する「WHOとWHATの組み合わせ」の重要性は、マーケティングの基本原則を理解する上で欠かせません。「お客さまは誰なのか(WHO)」、そしてそのお客さまがプロダクト(WHAT)に対してどのような価値を見いだすのかを理解することが、マーケティングの出発点であるという考え方です。
ところが、企業が行うマーケティング活動は、複雑化した市場環境や急速に進化するデジタルツールによって、どこかで道を見失ってしまったかのようです。企業がマーケティング戦略を策定する際、まずは「お客さまのニーズ」をしっかりと理解し、その上で「プロダクトの価値」をどのように伝えるかを考えるべきです。しかし、しばしば見られるのは、この「WHOとWHAT」を見つめ直すことなく、手段や手法(HOW)に飛びついてしまうという姿勢です。
西口氏も指摘するように、多くの企業は「HOW」の部分ばかりに注目しがちです。例えば、「SNSを活用して売上を上げる」や「YouTubeでプロモーションを展開する」といった表現が示すように、特定の手法やツールを使うことがあたかもマーケティングの目的であるかのように語られることが少なくありません。これにより、本来の「お客さまは誰なのか」という視点が後回しにされ、HOWばかりが膨張しているのです。
同様に、私がマーケティング関連の人材募集の案件を目にする際、まさに「ツールありき」の姿勢を多く感じます。多くの企業が「SNSを使って…」「YouTubeを活用して…」といった具合に、特定のツールの運用に長けた人材を求めていますが、これは「お客さまが誰なのか」を理解する努力を省いてしまっているように見えます。ツールを活用すること自体が目的化し、本質である「顧客への価値提供」が二の次になってしまっているのです。
また、こうした手段が目的化する現象は、短期的な成功を追い求める風潮とも密接に関連しています。デジタルツールやSNSがもたらす即効性に頼ることで、一時的に成果が得られるかもしれませんが、それはあくまで表面的なものであり、長期的な顧客との信頼関係やブランドの構築にはつながりません。こうした点で、「HOW」に依存しすぎることは、持続可能なビジネスの成長を妨げる要因になりかねないのではないでしょうか?
特に中小企業においては、この「ツールありき」の姿勢が顕著に見られます。西口氏のように「本当のマーケティング」を指導しようとする専門家は、こうした企業との対話において難航することがあるかもしれません。なぜなら、多くの中小企業の経営者は、マーケティングにおける「WHAT」と「WHO」の重要性についてうすうす理解しているものの、流行のツールや方法論に頼ろうとしがちだからです。
SNSやYouTubeといった手段を活用すること自体は悪いことではありません。しかし、それが「ツールありき」の姿勢で行われると、マーケティングの本質が失われてしまいます。経営者が「お客さまは誰なのか」を深く考えず、流行に乗った方法論に飛びつくことで、結果的にその企業はマーケティングの本質を見失い、成功したとしても、表面的で一時的なものになってしまう可能性があります。
さらに、中小企業が抱える課題として、「本当のマーケティング」に対する理解不足も挙げられます。限られたリソースの中で成果を出さなければならないこともありどうしても短期的な成果を求めがちなのです。そのため、打ち出の小槌を求めるごとく「今すぐに顧客を紹介してほしい」などと結果を求めがちです。その一方で、本質的なマーケティングの取り組みを軽視しがちではないでしょうか。この問題を解決するためには、経営者自身がマーケティングの重要性を再認識し、その理解を深めることが不可欠です。例えば、経営者が市場調査や顧客インサイトの分析に直接関わり、「お客さまが何を求めているのか」を自ら体感する機会を増やすことができるはずです。
マーケティングの究極の目的は、「価値の創造」であるべきです。単なる手段や手法にとどまらず、企業が提供するプロダクトやサービスが、いかにして顧客にとっての価値を生み出すかが最も重要な課題です。西口氏の主張にあるように、マーケティングとは「価値の創造そのもの」であり、「モノが売れる仕組みづくり」では少し違和感があります。
現代のマーケティング担当者や経営者は、まず「WHOとWHAT」に立ち返り、顧客が求める価値を正確に理解することに力を入れるべきではないでしょうか。そして、その価値を持続的に提供し続けるための方法論を検討することが求められます。こうした姿勢こそが、変化の激しい現代において、マーケティングの成功を導く鍵となるでしょう。
マーケティングに携わる全ての人々が、この「価値の創造」という視点を共有することで、業界全体の質が向上し、ひいては顧客の満足度向上や企業の持続的な成長につながると信じています。
年間売上10億円規模の中小企業の新規事業向け
勝てる新規事業の戦略とマーケティング
「損益構造の見える化」で収益最大化を目指すポイント!
「成功パターン」をつくるためにと題して経営者や事業の責任者にお届けするコラム。6つのテーマに分けてお届けします。