戦略とプロセスを明確化した事業デザイン:
自らに選択肢があることを知りながら「できない」を「できる」に!
【経営・戦略004】
2018年3 月 6日(火)
今回のテーマは、「どうやって事業の方向性を決めるのか?」です。
当たり前のことですが、事業戦略を策定する際に最初に考えるべきことは、事業の方向性です。事業がどこへ向かうのか全くわからなければ次なるアクションを起こすことができませんから。
例えば、私たちが旅をする場合、目的地がハッキリしなくてもとりあえず出発することはできますが、北へ行くのか南へ向かうのか方向をある程度決めなければ動くことができません。事業でも同様に、まずはある程度の方向を定めなければなりません。
もし新事業の策定ということであれば、どのような領域で事業を始めるかということを決めなければなりません。また既存事業の見直しなら、どの方向に舵を切るかを決めることです。方向性を絞り、決めなければ、後の工程で行なう分析の対象が定まりませんから。
では「どうやって事業の方向性を決めるか?」
これについては大きく2つのアプローチがあります。1つは「自社の強みを活かす」ことです。もう1つは「機会(チャンス)に乗じる」ことです。
「自社の強みを活かす」とは、企業内部の強みを活かすことであり、自社ならではの能力を活かした事業の展開を検討することです。そこで「自社の強みは何か?」を認識しなければなりませんが、これが意外と難しいはずです。
企業の強みについて書かれた書籍などをチェックすると「シャープの液晶技術」や「総合商社の販売網」などと大企業の事例紹介が目立ちます。
中小企業では、自社を客観的に捉える必要がありますが「井の中の蛙」になりがちです。それに思い込みもあるでしょう。
少し話は逸れますが、私は10代の頃から海外で生活しました。そこでは、日本でずっと生活していていたら全く気付かなかったであろうことを意識するようになりました。つまり、異国でしばらく生活することで視野が広がるわけです。それと同じように同じ業界しか経験していなければ、気付かないことが多いはずです。
また、大企業に20年、30年と長く勤めた人が、いきなり中小企業へ転職すると「この会社は、こんなこともやっていないのか?」「けしからん」などと文句を言う年配者がいる話をよく耳にしたことがあります。これは大企業という世界の常識で中小企業を見ているから起こることです。
同様に、ある業界ではあまり意識することなく当たり前にように行われていたことが、別の業界へ持っていくと「何、それ?」となることが多々あります。
そこで「自社の強みは何か?」を知るためには、普段とは異なる眼鏡をかけてチェックしてみることが必要です。そうやって少し広い視野を持つことで「自社の強み」を認識しやすくなるはずです。
また「自社の強みを活かす」に加え、「機会(チャンス)に乗じる」というアプローチがあることを述べました。ブームに便乗することやあやかり商法(便乗商法)のようなこともこれに似ています。仮に自社に能力がなかったとしても、外的環境を活かすことで商売を上手く進めることです。
例えば、今でも毎日のように健康番組が放送されていますが、2007年まで「あるある大辞典」という健康番組がありました。その番組で「納豆菌は○○に効く!」などと放送された翌日にスーパーへ行くと、棚から納豆が消えていたということが起こっていました。
そのようなこともあり、テレビ番組の企画段階の情報を巧みにキャッチして、放送日に合わせて取り上げられる商材を仕入れておき、放送後に一気に売り切るという便乗商売を行っていた会社がありました。ビジネスモデルとして良い・悪いは別に、これはまさに「機会(チャンス)に乗じる」というアプローチです。
同様に、ブームが大きくなることを見越してオープンしたパンケーキ屋さんや食パン屋さんなどは、まさに「機会(チャンス)に乗じた」アプローチとなるわけです。
以上の通り、「どうやって事業の方向性を決めるのか?」については大きく2つのアプローチがありますが、これらを統合し、事業の方向を検討する際に使うツールがあります。それが有名なSWOT分析です。このツールについては、書籍を何冊もパラパラと読みましたが、どれもあまり実用的な感じがしませんでした。
中小企業が使う場合は、事業の方向性についてブレインストーミングを行なう際に使う1つのツールという感じではないでしょうか? しかも、書籍に説明があるような細かな手順通りに作業を行なうことは、あまり意味がないかと思われます。
SWOT分析については、「強みを軸にする」か「機会を軸にする」という使い方の違いこそありますが、いずれの軸を優先させるにせよ単に切り口を提示しているにすぎないわけです。方向性を決める際に使う1つのツールにすぎません。
とにかく、事業の方向性が決まらなければ、市場や競合といった分析の対象が絞り込めないままとなります。だからこそ、まずは大きく2つのアプローチから絞り込むと良いでしょう。
なお、事業を立ちあげたものの、試行錯誤したまま「このまま生き残れるか?」という状態からなかなか抜け出せない企業が少なくありません。そこで、おすすめするのがヨソ様の知恵を拝借することです。
最初からしっかり読んでいただくことで、「大企業やベンチャーとは異なる中小企業が、事業を成長させるために、あるいは、新規事業を立ち上げた際に、何を、どこから、どのように検討すべきか」ということが理解できるようになるはずです。
年間売上10億円規模の中小企業の新規事業向け
勝てる(新規)事業の戦略とマーケティング
「損益構造の見える化」で収益最大化を目指すポイント!