戦略とプロセスを明確化した事業デザイン:
自らに選択肢があることを知りながら「できない」を「できる」に!
【関口のつぶやき、感じたこと 066】
2022年 7月 26日(火)
こんにちは、関口です。
つい数カ月以内の話ですが、マーケティングやプロモーションをいくら見直しても「これでは事業が上手くいかないだろう」と強く感じた会社の支援に関わりました。少し正確に申し上げると「マーケティングやプロモーションに手をつける前にやるべきことがあるだろ!」と強く主張しなければならないほどの状態だったのです。
なぜ、この会社では、マーケティングやプロモーションを強化してもダメなのでしょうか?
その理由は戦略がないから? いいえ、その会社ではまだそんなことに悩むレベルに達していなかったのです。一般的な会社では当たり前にできていることができていなかったのです。
マーケティングやプロモーションがいくら卓越したものだとしても、毎回の出荷の度に粗利を上回るコストがオペレーションの業務に掛かっていたら元も子もありません。
受注→帳票出力→ピッキング→梱包→荷渡し…こういう工程にコスト(オペレーションコスト)が掛かりすぎると、素晴らしいマーケティングのお陰で受注件数が2倍、5倍、10倍、30倍…と増えても、上手くいかないのです。
出荷件数の増加に比例して売上が伸びても、それ以上に大きなコストが発生するからです。結果として会社から資金が出ていく一方となります。大口の出荷と異なり小口で数を稼ぐモデルの場合は、オペレーションの非効率がコスト高を招くのです。
この会社は「自社で製造したある商品」を量販店に卸す事業を営んでいるのですが、売上規模はわずかながらも消費者に直接商品をお届けする直販(含:WEB販売)も行っていたのです。誰かに指摘され、DXブームの影響もあってか、この直販を強化しようと考えたのでした。
直販については、これまでわずかな件数を扱っていただけ。なので高くつくオペレーションコストのことなど全く気にしなくても済んだのです。会社全体の売上から見たら、それに占める割合は小さいので、会社の損益への影響はかなり限定的だったのです。
ところで、この会社の問題は何だったのでしょうか?
一つは現場が異常に散らかっていて汚いということです。私がこれまで30年くらいの間に目にした製造現場(含:倉庫)の中では最も汚い部類に入ります。
小規模な養鶏場など汚い現場を目にしたことはありますが、そこでは多数の生き物が活発に動きまわっており、常に糞をしているのです。すぐに汚くなってしまうのはやむを得ないこと。
しかし、この会社では生き物を扱っているわけではありません。それなのに「今すぐに5Sに取り掛かりましょう」と大声で叫びたくなるレベルだったのです。
しかも、私のような外部の者と出くわした現場の社員には「こんにちは!」「いらっしゃいませ!」などと声掛けしてくる雰囲気が全くありませんでした。逆に、驚いた光景を目にしました。あらゆることがお粗末な状態だったのです。
このような会社の場合、仕入販売で、保管→出荷業務を完全に外注化していたらコストの管理が楽なのです。ヨソに外注して製造してもらえば仕入のコストが明確になります。同様に、(例えば)倉庫における保管料が月20万円で1出荷につき〇〇円などという契約で業務を外注すれば、オペレーションコストがかなり見えるようになるので、損益の管理がとても楽になります。
ところが、この会社では原価管理がかなりお粗末。これが二つ目の問題です。商材の特性上、自社で受注や出荷をやるより他ないにも関わらず、コスト面の実態が把握できていないのです。このような状態ではとてもプロモーションの費用を捻出するというわけにはいきません。
このような会社においては、まず環境整備や原価管理に関して一定のレベルに達するための取り組みが求められます。さもないと直販事業において出荷数を増やせば増やすほどお金が出ていきます。コスト・原価の管理がいい加減だ(測定できない)と、このことになかなか気づかないのです。
さらに厄介なことがあります。それは、このような実態について、財務会計の数字を見ただけではわからないことです。しかも、量販店向けの販売と一緒くたに数字を管理すると、なおさら事業の実態の把握が困難になります。出荷数がそれなりに増え、その数字がPLに反映されるようになって、ようやく問題に気づき始めるのでは?
このような会社が存在するように、全ての会社において、マーケティングやプロモーションを強化すれば事業が良くなるというわけではないのです。受け皿の強化をはじめ、その前に取り組むべきことがあるのです。
先述の会社においては、まず一定のレベルに達するよう、製造現場をきれいにすることです。これは、効率的な出荷作業を行うために、レイアウトを見直し、動線をつくり直すことです。それに原価を管理する仕組みが必要となります。
こういう基本的なことから始めないとダメなのです。現場が散らかっており、オペレーションがあまりにも非効率だと、戦略やマーケティングにいくら力を入れも事業は良くなりません。同様に、何かのシステムを導入しても完全に無駄になります。
どんなに優れた機能を持ったルンバ(ロボット掃除機)を導入しても、使用する場所がゴミ屋敷では優秀なルンバ君に活躍の場を与えることができません。ルンバ君が身動きできないからです。ルンバ君に登板してもらうためには最低限の片づけを行い、身動きできる環境の提供が必要です。これと同じことが企業経営においても求められるのです。
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