【ビジネス書016】 

2019年 4月 30日(水)

今回、紹介する書籍のタイトルは『無印良品のPDCA~一冊の手帳で常勝経営を仕組み化する!』です。著者は良品計画(無印良品)の社長や会長を務めた人です。

この本には、PDCAの回し方についてよりも、むしろ著者がどのように良品計画を立て直し、強い組織へ成長させたかという仕組みについて書かれています。常にその仕組みの根底においていたのがPDCAでした。つまり良品計画はあらゆる仕組みにPDCAを取り入れていたのです。

全体を通じて、著者の主張は次の2つにまとめられると思いました。

  • 「仕組み」にしてもマニュアルにしても、一度つくれば未来永劫効果を発揮するものではなく、絶えず手をかけて、ようやく根付き、現場で機能するもの。
  • 放っておいて組織で自動的にPDCAが回ることはない。当たり前にできないなら、できるようにツールの力を借りてやりきる仕組みをつくればいい。

「一冊の手帳で常勝経営を仕組み化する!」が書籍のサブタイトルになっていますが、著者の手帳の活用方法はとてもシンプル。左ページにスケジューを書き込み、右ページにやるべきこと、必要な情報をメモする、と使い方はいたって平凡でシンプル。

「シンプルさが思考の自由度を高め、手帳を眺めるだけで、頭の中ではPDCAが回りだす。だから手帳は大事な思考の基地」と著者は述べていました。

著者にとって、頭の中でPDCAを回すためのツールが手帳だったわけですが、手帳術と呼ばれるようなテクニックを使っていたわけではありませんでした。

「無印良品のPDCA」がタイトルになっていますが、PDCAの回し方については独特なやり方をしています。PDCAだからといって、律儀に「P」から始める必要はなく、危機的な状況のときは「まずはやれることをやる」との考えを示していました。

つまり「D」から始めて、DCAPDC…と、PDCAを回せばいいというのが著者の考えです。

現に、著者が良品計画の社長に就いてから、「実行」ありきで、主にDCAPの順でPDCAを回し始めたと述べています。危機的な状態や非常時には、まず目の前のやるべきことから手をつけ、「C」「A」に進む、ということです。そして、少し落ち着いたところで、除々に計画を入れていくという流れで変革の大鉈を振るったそうです。

本の中には、「私は、計画5%、実行95%の組織が強いと思っていますので、PDCAでもDの実行を一番重視してきました」と書いてありました。

この本は良品計画の仕組みづくりについて書かれていますが、私が最も注目したのがMUJI GRAM(ムジ グラム)です。著者が社長になって最初の2年間は業績が悪く、ようやく成果が出始めたのは3年目のこと。その成果に大きく貢献したのがMUJI GRAMだったとのこと。

昔は100人店長がいれば、100通りの売り場になったそうです。そこで、誰が店長であってもベストの売場がつくれるマニュアルをつくろうと決心したことがMUJI GRAM誕生のキッカケだったそうです。

MUJI GRAMは、店舗を回すノウハウのすべてを収めた業務マニュアルです。著者は「PDCAを回す典型的な仕組み」と表現していました。PDCAサイクルに沿って「変化し続けるマニュアル」と表現することができるとも書いてありました。

MUJI GRAMは13のファイルに合計2,000ページが綴られているそうですが、改善提案によって毎月約20ページ、全体の約1%が改訂されるとのこと。まさに「変化し続けるマニュアル」です。これでどこの店もベストの売場を効率的につくれるようになったそうです。MUJI GRAMには(手順だけではなく)それぞれの仕事の目的も書くようにしたとのこと。

また、MUJI GRAM以外にも良品計画の仕組みづくりの紹介がありましたが、その一つが業務基準書です。MUJI GRAMは店の業務マニュアルとしてつくられたので、本社の人事や経理などの業務にはマニュアルがありませんでした。

これがないと複雑な本部の業務は「見える化」できません。見えないということは標準化できない。標準化できないということは組織の運営レベルを上げられない。業務が「見える化」されていないと、何を教え、学ぶかもはっきりしない。つまり、人を育てることができない。そこで本部の業務基準書をつくることにした。…と著者は本の中で述べています。

業務基準書の作成については、最初、「あなたの仕事を書き出してください」と依頼し、現在の仕事を文章と図で「見える化」した作業を本社の全業務を対象に行ったそうです。これには2年ほど掛かったとのこと。

また業務基準書は、つくって終わりではなく、むしろつくってからが本番です。だから、新しい人が入ってきたり、業務の担当が代わったりするたびに、業務基準書は充実していったそうです。MUJI GRAMと同様に、変化し続ける仕組みが社内に浸透していったのです。

このように、MUJI GRAMは店舗の運営向けに、そして業務基準書は本社の管理部門向けに作成され、活用されたのです。

良品計画では、MUJI GRAMや業務基準書を作成し、上手く活用していたのですが、それをサポートしていたのが「委員会」でした。その1つが業務標準化委員会です。業務基準書を使ってきちんとPDCAが回っているかをチェックし、できていなければ改善を指示する役割を担っており、毎週火曜日が開催日でした。

また人事育成委員会についても書かれていました。この委員会の目的は、PDCAの「C」と「A」とのこと。実行の進捗をチェックするとともに、上手くいっていなければ、改革案を考えてもらい、場合によっては目標を変更したそうです。

期初の3月初めに部長職などが人材育成の計画書を作成し、提出し、実際に実行してもらい、中間報告の場を設けました。それが人材育成委員会であり、聞き手は役員全員とのこと。

著者は、「マニュアルや仕組みは、つくって終わりではない。人間の体の中を血液が流れ続けているように、血が流れ続けるマニュアルや仕組みにして、はじめて効力を発揮するものとなる」と述べていましたが、委員会を上手に運営させることが、血が流れるマニュアルや仕組みに大きく貢献したのではないでしょうか?

良品計画では、「ボトムアップの仕組みが必要ではないか」「全社員の知恵を活かす、社員の自発的な取り組みが今後の成長と生産性の向上には欠かせないのではないか」といった問題意識を持つようになり、他社からも学んでいました。

ボトムアップの仕組みをさぐりに他社を視察したとのことですが、キャノン電子のことが紹介されていました。視察したキャノン電子では、正社員に限らずパート社員に至るまで全員が自発的に小集団活動に取り組んでいたそうです。

そういったことに刺激され、良品計画が新たに立ち上げたのが「WH運動」という取り組みでした。Wは2倍、Hは半分のことで、生産性は2倍に、無駄は半分にするといった意味合いとのこと。

著者は、これらの活動を続ける上では、何より、トップダウンで進めることと、成果が出たら、しっかりと表彰することが大切であると述べています。そして、会社にとって非常に重要な取り組みであるとトップがしっかりとコミットしている姿勢を見せる必要があると述べていました。

また、「自発的な小集団活動を行う組織にしたければ、トップや役員が自発的にそれを後押ししなければならない。逆に、役員に主体的に関わる気がなく、他人事だと思っていることが社員に伝わってしまうと上手くいかない」と書かれていました。

成果が出るWH運動は、「全体最適」の発想が根底にあります。だから、当事者だけではなく、周りを巻き込み、協力を取り付けることができます。部分最適から全体最適へ、価値観がきちんとシフトしていることが大事、と述べています。著者は、「社風づくりに大切なのは、トップのコミットメントと、とにかくやり続けるという2つ。そして、妥協せずに徹底的にやること」と書かれていました。

もう一つ面白い取り組みを紹介しましょう。それはDINAです。

報・連・相―報告、連絡、相談では部下の自主性は育ちません。大事なのは、自分でリスクをとって仕事をやり切ること、と著者は考えていました。そのためには、デッドライン(締切)だけを決めて、あとは自由にやらせるとのこと。そのための仕組みが「DINAシステム」でした。DINADeadline(締切), Instruction(指示)、Notice(連絡)、 Agenda(議事録)の頭文字です。

 「日々、やるべきことを明確にし、実行計画を立てて実行し、実行を評価し改善するというPDCAを回し続けることでしか、社風をつくることはできない。できるのは、PDCAを回し続けるための仕組みづくりに尽きる」と著者は述べていました。また、次のようにも述べていました。

  • 会議は「決めて実行するところ」。だから決めたことには必ずデッドラインを設定し、デッドラインまでに実行できたかどうかをまた会議で確認する。日々、その繰り返し。
  • できる範囲で、確実に良くなるように地道に変えていく、それを積み重ねていくことで改革を行うしかないと考えていた。
  • 部門ごとに方針が発表されたら、その方針を実行できるスケジュール計画に落とし込む作業を合宿ですぐに行い、翌日から実行に移す。あとは営業会議や経営企画会議、商品戦略会議、取引先集会など、定期的に開かれる会議でそれぞれの方針を確認し、それぞれの実行の進捗を追いかけ続ける。

今回紹介した書籍は「サービス産業のカイゼン力↑」という当会の支援テーマにピッタリの内容でした。次のコラムは、こちらから!

今回は、和歌山県に出張した際に新幹線の中で読んだ本の内容を紹介したのですが、良品計画についていろいろと知る機会になりました。また意外なことに気づかされました。

それは「モノしか見えないモノをつくる」が無印良品のキャッチコピーであり、デザイナーの名前を一切表に出さず、商品そのもので勝負するのが無印良品の創業以来の哲学についてです。

 

 

1.関口のつぶやき、感じたこと(生産性向上など)