戦略とプロセスを明確化した事業デザイン:
自らに選択肢があることを知りながら「できない」を「できる」に!
【ビジネス書011】
2018年 5月 4日(金)
この本には、タイトルにある通り鬼速(?)でPDCAをまわすために必要な細かなテクニックが書かれています。
私にとっては、PDCAを指導している立場ということもあり、(細かなテクニックを別にすると)この本から新しい情報を得たというよりも、これまでに学んだ内容の復習という感じでした。
しかし、「Plan・Do・ Check・Act/Adjust」という言葉は知っているが、それ以上のことについてはあまり理解していないという人には学びが多いかと思います。
まず、この本の中から「まさに、その通り!」と共感した箇所を下記の通り、3つ紹介します。
上記3つの中でも「実用的なスキルの習得の前にPDCA力」というのは、「まさにその通り!」という感じです。
本の中で紹介されている著者流のPDCAステップについては後に説明しますが、上記の「まさに、その通り!」という内容に加えて、「PDCAをよくわかっていない人が注意すべきポイントだな!」と感じた内容を3つお伝えします。
1つは、「PDCAサイクルはあたかもプロジェクトベースでひとつだけ回っているような印象を受けるが、実際にはあらゆるPDCAには上位のPDCAとそれを細分化した下位のPDCAがある」という内容です。
「どんな会社も何かしらの目標を立てて動いている。それを実現するために各部署が中PDCAを回し、社員たちが小PDCAを回しているイメージである。」と著者は指摘しています。
私は常々、「事業は1つ1つが繋がりあって動くチェーンの如く、1つの大きなシステムである」と捉えていますが、これと同じことを主張しているかと思います。
2つ目は「分解すること」の重要性です。著書は、「因数分解」という表現を使っています。「PDCAに不慣れな組織の場合、大きな課題や目標をまず分解してみて、そのなかでも重要で効果が大きい指標に絞って、小さなPDCAをいくつか回した方が、断然扱いやすくなり、結果的に速くなる。」と指摘しています。
そのことは1つの仕事をいくつかに分解してみることと同じです。例えば、「チラシをつくる」という仕事は大変そうに見えますが、「キャッチコピーを考える」「表記すべき項目を洗い出す」などとチラシづくりの作業をいくつか分解することができます。
そして3つ目は、「OKR(Objective and Key Results)」についてです。これが最も重要だと私は考えています。OKRは「業務を進めるときはチーム内で必ず目標(objective)を明確にし、あらゆる行動はその目標に沿って行なうべき」というものです。
また、「OKRでは目標を意識するだけではなく、必ずその目標達成にリンクする最重要な数値(Key Results)を徹底して追うことを提唱している」との記述がありました。全くその通りですね。
では、さっそく著者がおすすめするPDCAを回すステップを順に説明します。
最初はPlan(計画)です。それがPDCAの5割を占めことになります。つまり、PDCAは「計画」のデキ次第で半分が決まるということです。Planのステップは次の通りです。
ステップ1:ゴールを定量化する
このステップで注意すべきポイントが3つあります。それは、1)期日を決めること、2)定量化すること、3)ゴールを適度に具体的なものにすることです。期日の理想は1~3ヶ月くらい。
ステップ2:現状とのギャップを洗い出す
ステップ3:ギャップを埋める課題を考える
ステップ4:課題を優先づけして3つに絞る
ステップ5:各課題をKPI化する
ステップ6:KPIを達成する解決策を考える
ステップ7:解決策を優先づけする
ステップ8:計画を見える化する
なお、Plan(説明)に関しては1つ気になる点がありました。それはKPIがTargetとして使われている点です。
例えば、体重80kgの人が60kgを目指す場合のKPIは「体重」という指標であり、「60kg」はTargetと表現すべきです。ところが著者はTarget(つまり60kg)をKPIと扱っている点が気になりました。
また、「Plan(計画)」に際し、いくつか重要なポイントがあります。
1つは先に紹介したOKR(Objective and Key Results)の考え方です。なぜなら業務が細分化すると、目標(上位PDCA)を見失いがちだからです。
もう1つは先に述べた因数分解力です。これは「ゴール」と「現状」を構成する因子をどんどんリストアップしていく考え方でロジックツリーと同じです。
例えば、「いい上司」については、「人間的魅力」と「ビジネス的魅力」となるかもしれません。また「人間的魅力」については、「生き様・信念」「厳しさ」「優しさ」「信頼感」「親近感」「ルックス」となります。
ちなみに、因数分解するときの7つのポイントが示されていました。やり方は色々あるかと思いますが、参考までに著者の主張を紹介します。
「行動(DO)」のポイントはアクションからタスクへの具体化を、なるべく迅速に行なうことです。著者は「解決案」を分解したものが「DO」で、「DO」を分解したものが「TO DO」と区別しています。
ステップ1:解決案を「DO」に変換する
解決案の例:
DOの例:
なお、DOには「完結型」と「継続型」があります。
完結型の例:
継続型の例:
ステップ2:DOに優先順位をつけ、やることを絞る
ステップ3:DOを定量化する
完結型の例:
継続型の例:
ちなみに、「ルーチンチェックシート」はルーチン業務のデキをチェックするために著者が使っているものです。
ステップ4:DOを「TO DO」に落とし込む
DOの例:
TO DOの例:
なお、「TO DO」に落とし込む際のポイントは6W3Hを使うことです。Who, Whom, When, Where, What, Why, How, How many, How much
ステップ5:TO DOの進捗確認をしながら実行に移す。ポイントは優先順位の高いことから着手すること
追加情報が2つあります。1つは、コンフォートゾーン、ラーニングゾーン、パニックゾーンという3つの階層がありますが、人や企業にとっての理想は常に「適度に忙しい」状態のラーニングゾーンを維持することです。
もう1つは、タイムマネジメントの3原則(捨てる、入れかえる、圧縮する)を活用することです。
ステップ1:KGIの達成率を確認する
例
ステップ2:KPIの達成率を確認する
例
ステップ3:KDIの達成率を確認する
例
ステップ4:できなかった要因を突き止める
ステップ5:できた要因を突き止める
調整フェーズは少しわかりづらいのですが、著者はその最大の理由として「検証の対象であるKGI・KPI・KDIのそれぞれが扱うスケールの大きさがバラバラであり、その検証結果次第で調整のレベルも大きく変わるから」としています。
ステップ1:Check(検証)結果を踏まえた調整案を考える
ステップ2:調整案に優先順位をつけ、やることを絞る
ステップ3:次のサイクルにつなげる
調整フェーズのポイントは、調整のレベルをよく見極めることです。著者は「調整のレベルとは以下の4つのケースに分けられる」と指摘しています。
PDCAが上手く回せるようになれば事業が上手く回りだすのです。そこで私のウェッブサイトのトップページには『「スピード感をもってPDCAをグルグルまわす中小企業経営者の「戦略ストーリー」で「ギャップ」を埋める!』と書いてあるのです。次のコララムは、こちらから!
以上、長々と説明しましたが、上記は全てを採り入れるというよりも、必要なところを上手く活用するように心がけた方が良いでしょう。
さもないと、「管理すること」や「TO DOに載っているリストを片付けること」が目的になりかねないことが懸念されます。
やはり、本当に重要なのは、常に目標を意識して、目標(objective)を明確にし、あらゆる行動はその目標に沿って行なうべきということです。OKRと同じですね。また先に書いた調整レベルの見極めです。
また本書の最後の後半に「鬼速PDCAのポイント」と題して図が掲載してありましたので、そこに記載してあるポイントを下記の通り紹介します。
P
D
C
A
年間売上10億円規模の中小企業の新規事業向け
勝てる事業の戦略とマーケティング
「損益構造の見える化」で収益最大化を目指すポイント!