【ビジネス書006】 

2017年 7月18日(火)

これはコトラー氏が日本の読者のために制作した書籍です。本書からはマーケティングについて学べることが多く、2回に分けてコラムをお伝えします。

今日では、世界中で何千人もの専門家が、社会問題を解決したり、改善したりするためにソーシャル・マーケティングの手法を活用しています。

これはマーケティングの考え方を応用することで、貧困や環境破壊など、さまざまな社会問題を解決することができないだろうか?という取り組みです。このように様々な分野でマーケティングが活用されているのです。

本書には「そもそもマーケティングという言葉を聞いたとき、いまだに一般の人は狭義の「宣伝」と同じ意味で、それをとらえるのではないか」「テレビの15秒コマーシャル、雑誌や新聞の広告などのイメージ?」との記載があります。確かにマーケティングの解釈は人によってマチマチだと思われます。

ちなみに、コトラー氏はマーケティング概念の変化を4つの段階に分けて解説しています。「マーケティング1.0」「マーケティング2.0」「マーケティング3.0」「マーケティング4.0」の4段階です。

「マーケティング1.0」の概念は製品中心のマーケティングです。「広告に対してお金をスプレーして祈る」ということから、spray and prayと表現されています。

コトラー氏は1986年、『ハーバード・ビジネス・レビュー』に寄稿した論文の中で、従来の4PProduct, Price, Place, Promotion)に加えてpolitical power(政治力)、public relations(広報活動)という二つのPを追加しました。また、サービス業には4Pに三つのPを付け加えることもあるとのこと。それらは、People、 Process、 Physical evidenceです。

「マーケティング1.0」は「製品中心」の考え方でしたが、「マーケティング2.0」では顧客(消費者)志向のマーケティングへ移行しました。製品中心から消費者中心へ切り替えを行なうべきであるとマーケターは理解したのです。

 

その注目点は、マーケティングが「戦術的」な次元から「戦略的」な次元へと進化したことです。戦術的なマーケティングとは「Product」「Price」「Place」「Promotion」の4Pに代表される多くの人の目に見えるものである一方、戦略的なマーケティングは外からは見えにくいのです。4Pに代わって重視されるようになったのが「STP」です。

これはSegmentation、Targeting、 Positioningの頭文字です。市場を細分化し、そこでフォーカスすべきターゲットセグメントを決定する。そのターゲットセグメントにどう認識されるか(ポジショニング)という、いわゆるSTP戦略のことです。

また「マーケティング2.0」は「顧客参加型マーケティング」と表現しています。「顧客参加型マーケティング」に類するもので「体験型マーケティング」という考え方もあります。それは「体験を売る」ということです。

顧客に究極の体験を提供するため、娯楽性(entertainment)、美的要素(esthetic)、非日常性(escape)、教育的要素(education)の四つのEが必要であるとのことです。

 

さらに体験と同じように重要な戦略として、ストーリーテリングがあります。ストーリーという言葉は、優れたブランドをつくるということ。ブランド構築とは、そこで流された汗や、その商品にまつわる情熱についてストーリーを組み立てることです。

体験マーケティングよりもさらに踏み込んで、感情を揺さぶるマーケティングも存在します。そこでは「需要」ではなく「感情」に働きかけます。

「マーケティング2.0」の次の概念である「マーケティング3.0」は「価値主導のマーケティング」です。これをもたらしたのがインターネットです。「マーケティング3.0」では、感情に働きかけるだけではなく、「精神」に訴えるようなマーケティングによって補完します。

「マーケティング1.0」の目的は「製品を販売することでした。それが「マーケティング2.0」では「消費者を満足させ、つなぎとめること」が目的となりました。そして「マーケティング3.0」では目的が「世界をよりよい場所にすること」に変わりました。

「マーケティング3.0」に関連し、コトラー氏はホリスティック(holistic)・マーケティングという概念を提唱しました。その中における大きな柱がCSR(corporate social responsibility)です。ちなみに、ホリスティック(holistic)とは、全体的や包括的という意味です。

 

価値主導のマーケティングである「マーケティング3.0」ではCSRにスポットを当てました。そこでは3つのPに働きかけなければなりません。3つのPとは、Profit(利益)、People(人々)、Planet(地球)です。

ちなみに、CSRに似たものとして、マイケル・ポーター氏が提唱したCSV(Creating Shared Value)という概念があります。この考え方は、社会的な価値と経済的な価値を同時に追求し、両立させることを目指す、というものです。

顧客は、お金儲けにしか関心がない会社よりも、思いやりのある会社のほうを選択するだろうということです。

「マーケティング3.0」の次の最新理論が「マーケティング4.0」です。これはデジタル革命時代のマーケティングアプローチです。デジタル革命に焦点を当てています。

コトラー氏は、デジタル時代のなかで、顧客がある製品を購入するに至るための道筋のモデルを開発しました。それは見込み客が最終的に製品を購入するには「5A」の段階を経るとのこと。Awareness(気づき)」「Appeal(魅了)」「Ask(尋ね・求め)」「Act(行動=購入)」「 Advocacy(推奨表明)」となります。

これは、顧客の購買決定プロセスに関する理論であるAIDAAttention, Interest, Desire, Action)にとって代わるものです。

ちなみに伝統的なマーケティングで重視されていたのは、5Aの初めの二つのA、すなわち「気づき(Awareness)」と「魅了」(Appeal)。あとの三つのAになればなるほどデジタル革命による変化がその重要性に拍車をかけているとのことです。

 

さらに追加すると、企業が最初に行わなければならないのは、プロモーションを創造的に使い、ターゲットとなる顧客に自社の製品やブランドを知ってもらうこと。それが「気づき」を与える、ということ。

次に、企業は「アピール」すなわち、他の競合ブランドを超えるように、ターゲットになる顧客に対して魅力的なオファーをしなければならないとのこと。これはProduct、 Price、 Place、 Promotionの4Pを企業がうまく設定することによって達成することができるとのこと。

今「顧客エンゲージメント」が強調されています。これは「愛着」「結びつき」「絆」を意味します。「満足」や「誠実」からさらに踏み込んだ感情であり、消費者の積極的な関与や行動を伴います。

より深い「顧客エンゲージメント」を生じさせるためには、ブランド構築を強化するストーリーテリングの役割を重視しなければならないということです。

 

また変化と破壊が激しい現在の世界において、企業が生き残っていくために求められる特質には2つあるとコトラー氏が提唱しています。

1つが「レジリエンス」。これは特定の問題や損失に見舞われたとき、そこから復元するための能力のことです。もう1つは「アジリティ」。これは迅速に学び、変化する状況にスピード感をもって対応する能力のことです。

「マインドフルネス」の関連本は2017年に入ってから日本の書店でもよく目にするようになりました。私は英語版を購入しました。次のコラムはこちらからどうぞ!

では、個人にはどのような対応が求められるのでしょうか? 個人に求められるものは、心の安定を生み出す「マインドフルネス」ということです。

これは今自分に起こっていることをそのまま認識し、心を自然に保つための訓練法です。仏教の考え方に強い影響を受けています。

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