【つぶやきB】 

2018年 11月 22日(木)

日本では今、人口減少社会を迎えています。同時に、働き手の確保が多くの業界で叫ばれています。労働力確保の目的で、政府では今「特定技能1号」「特定技能2号」などという仮称で新たな在留資格の導入が検討されています。

また「生産性の向上」に大きな注目が集まっています。生産性を高めようという動きは大手の製造業には以前からありましたが、今では中小や非製造業に対しても生産性向上の取り組みが国主導で行われています。

国では国土交通省が中心になって「生産性革命プロジェクト」を推進しています。「小さなインプットでもできるだけ大きなアウトプットを生み出す」という生産性革命の基礎にある考え方をあらゆる政策分野に浸透させようとしています。

そこで今回から数回に渡り「中小や非製造業にも生産性向上の取り組みが浸透する」と題して「生産性の向上」について検討してみることにしましょう。

まず生産性について少し理解しましょう。

「生産性」という用語に関し、公益財団法人 日本生産性本部のホームページには、生産性の代表的な定義として「生産諸要素の有効利用の度合いである」と記載されています。次のような定義が記載されていたので紹介します。

有形のものであっても無形のものであっても、何かを生産する場合には、機械設備や土地、建物、エネルギー、さらには原材料などが必要になります。また、実際にこれらの設備を操作する人間も欠くことができません。生産を行うために必要となるこれらのものを生産要素といいますが、生産性とはこのような生産要素を投入することによって得られる産出物(製品・サービスなどの生産物/産出)との相対的な割合のことをいいます。

式で表せば、生産性=算出(output/投入(input)となります。つまり、生産性とは、あるモノをつくるにあたり、生産諸要素がどれだけ効果的に使われたかということであって、それを割合で示したものが生産性ということになります。(後略)

ところで生産性が向上するとどのようなメリットがあるでしょうか?

生産性向上の事例については、私が実際に関わったプロジェクト例で説明します。20年くらい前に行ったプロジェクトですが、わかりやすいので説明用として紹介します。

当時の私は、大手外資系企業にて、社内コンサルタントの役割を担い、シックスシグマという手法を使って複数のプロジェクトを渡り歩くプロジェクト専任要員を務めていました。

そこで関わったプロジェクトの一つは、生産性の向上を目的に、顧客からショッピングクレジットの申請書を受付してから可決・否決の結果報告を出すまでの業務プロセスを改善することでした。業務プロセスを改善することは、仕事のやり方を見直すことです。

ちなみに、ショッピングクレジットとは、買い物する際の代金が80万円、120万円などと大きい場合に、一括ではなく24回、36回などと分割して払えるよう、信販会社が購入代金を販売店へ立て替え払いしてくれるありがたいシステムです。

ここでは顧客からショッピングクレジットの申請書を受付してから可決・否決の結果を出すまでに1件当たり平均すると30分掛かると仮定します。コンピューターが申請者の年収、勤務先、勤続年数などの情報を参考に「この人は75点で可決です」「あの人は46点で否決です」などとスコア判定をするのですが、人の目で確認する項目もあったので、1件当たりの処理時間が30分とします。そして費用が1,000円掛かるとします。

つまりショピングクレジットの申請書1件に対する可決・否決の与信審査に1,000円の費用が発生するということです。そのような与信審査に関し、月に10,000件の処理をすると、1,000✕10,000件=1,000万円もの費用となります。

数字は説明用で全てデタラメですが、もし「仕事(与信審査)のやり方」を見直し、生産性を向上させて1件当たりの処理時間を30分から6分短い24分に短縮することができたら、どのような影響があるでしょうか?

まず1件当たりの処理費用が1,000円から800円に減ります。それは処理時間が24/305/6に短縮されたので、1,000✕5/6800円という計算式から判断できます。人件費として発生していた1,000円がその5/6で済むということです。

生産性を向上させることで、1件当たりの処理費用が200円少なくて済んだのです。でも、もしかしたら「たったの200円か?」などと考える人がいるかもしれません。

ところが、月に10,000件もの処理をする場合はどうでしょうか? 1,000万円(1,000✕10,000件)もの費用が掛かっていたのが800万円(800✕10,000件=800万円)に削減されます。つまり月に10,000件の処理をする場合は200万円の削減です。年換算すると、なんと2,400万円(200万円✕12カ月)もの費用削減になるのです。わずか1件では200円とメリットが限定的ですが、ボリュームが大きくなれば大きなメリットが得られることになります。

この通り与信審査のやり方を見直し、処理時間を30分から24分とわずか6分短縮するだけでも、処理件数が多ければ、費用削減に大きな影響を与えるのです。繰り返しますが、30分掛かっていた仕事が24分で出来るようになったのは、仕事のやり方を見直して生産性が高まったからです。生産性を高めることで、先に述べた通り大きな費用が削減できるのです。

これは経営者にとって嬉しい限りです。また働く人にとっては、同じ量の仕事を以前よりも速く終わらせることができるようになり、残りの時間を別の業務に割くことができるようになります。以前よりも有効に時間を使うことができるようになるのです。

次回は生産性の向上についてもう少し踏み込んだ話をしていきましょう。

上に書いた事例が、まさに国が推進している「小さなインプットでもできるだけ大きなアウトプットを生み出す」という生産性革命の基礎にある考え方と一致しているのです。

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