【経営コンサルタント066】 

2023年 12月 12日(火)

こんにちは、関口です。

本日のテーマは、「独立した中小企業診断士の年収」についてです。

果たして、独立した中小企業診断士の年収はどのくらいなのでしょうか?気になりませんか?

私もいろいろと調査してみたことがあります。「中小企業診断士 独立 年収」「独立中小企業診断士 年収」などのキーワードでインターネット検索を行うと、「年収1,000万円以上が25%以上」「中小企業診断士の年収は約1,000万円」「中小企業診断士は日本版MBAともいわれ、年収が高い」といった書き込みが見られます。

意外と高収入が得られるような記述が見受けられますが、これは本当の姿でしょうか?調査を進める中でさまざまな発見がありました。

最初に私がお伝えしたいことは、「ネット上で提供されている中小企業診断士の年収情報を鵜呑みにすべきではない」ということです。その理由は、中小企業診断士を志す人などを、特定の学習プログラムや起業塾に誘導する目的で期待感を煽る情報が多く提供されているからです。

ある人のウェブサイトでは、自身が運営するWebマーケティングの塾への参加を促すためか、「中小企業診断士の営業手法は、Webマーケティングだ」と結論付けています。

では、実際の情報を見極めるためにはどうすればよいのでしょうか?その点については後半で説明します。最後に、ある中小企業診断士のリアルの稼ぎを具体的に明示します。

ネット上に溢れる中小企業診断士の年収データを見る際には、注意が必要です。私が今回、テーマとして掲げたのは「独立した中小企業診断士の年収」です。

第一に留意すべき点は、「サラリーマン診断士」の年収と混同されていることです。例えば、総合商社に勤務する50代や60代のサラリーマンの非常に高い年収データが含まれると、平均年収は著しく高くなります。

三井物産や伊藤忠といった総合商社に勤務し、50代にもなると一部の例外を除いて、正社員として勤務する人のほぼ全員が年収1,000万円を超えることが一般的です。年収が2,000万円を超える人もいます。

第二に留意すべきことは、「年収」と「売上」が同じように扱われていることです。異なるこれらのデータが一緒くたになると、実際の年収を正確に理解することが難しくなります。個人事業主の場合、税金対策などさまざまな方法で年収を抑えることが可能です。

一方、自身をより大きな存在として見せたいからか、売上の数字を実際の2倍、3倍、4倍以上に膨らませる手法も存在します。このような手法は、特にネット上で誇大広告を行う者たちによって用いられています。この方法では手元に残る実質的なキャッシュは増えないものの、帳簿上の売上の数字を大きくすることができます。

第三に留意すべきことは、10人や20人もの従業員を抱え、企業経営者としてコンサルティング会社や税理士事務所などを経営している中小企業診断士のデータが含まれていることです。このような企業経営者の場合、「ひとりでやっている中小企業診断士」とは明らかに稼ぎ方が異なります。というのは、クライアントから100万円で獲得した仕事を、従業員には20万円や30万円で担当してもらうような方法で稼いでいるからです。

さらに慎重になるべき点は売上の出所です。中小企業診断士としての仕事から得たのか、という点です。中には夜や週末に別の仕事をしている人や不動産の賃貸収入がある人などもいます。中小企業診断士とは限りませんが、本業よりもこっそりやっている副業の方が4倍から5倍もの収入がある女性もいます。

では、どうしたら独立した中小企業診断士の年収について、本当の実態がわかるのでしょうか?

私は、以下の要素を一つ一つよく確認すべきだと思います。

公的機関が公表したアンケート調査の結果

公的機関が実施したアンケート調査の結果については、一般社団法人中小企業診断協会さんが直近に実施した調査の結果(https://www.j-smeca.jp/attach/enquete/kekka_r3.pdf)を参考にすると良いでしょう。一般社団で公的機関ではありませんが、民間会社の調査よりも遥かに信頼できます。ただし、この調査結果で気になる点がいくつかあります。

一つは回答者の属性です。なんと約70%が50代以上となっています。また、売上に関する設問に回答したのは、アンケートに答えた回答者の30%にすぎない点も気になりました。その理由は「コンサルティングの業務日数の合計が100日以上の人」の売上だけが公表されていたからです。つまり、コンサルティングの仕事が少ない人は、売上に関するデータ集計の対象外となっていたのです。仕事が少ない人はデータに含まれていないということ。

独立した中小企業診断士が従事する主な仕事とその単価

次に、中小企業診断士が従事する主な仕事について考えてみましょう。これについては、前述のアンケート調査の結果から、中小企業の支援機関・商工団体などに関わる公金絡みの案件が非常に高い割合を占めていることが明らかです。公金絡みの案件について、例えばよろず支援拠点のコーディネーターに就くという方法があります。また、公的機関に専門家として登録して地元の企業へ派遣してもらう仕事(専門家派遣事業)もあります。公的機関が主催する研修やセミナー講師の仕事を貰うこともあります。

では「仕事の単価」を見てみましょう。よろず支援拠点のコーディネーターの謝金は1日8時間以上の労働で2.5万円(+税)です。私がよろず支援拠点について意識し始めたのが2016年。あれからそろそろ8年が経過しますが、謝金は1日2.5万円のままです。1日2.5万円ということは、運よく毎日仕事が入ったとしても月に稼げるのは50万円ほど。しかし、勤務日数に制限があることがあり、多くのコーディネーターは週3日程度の勤務となっています。

また、専門家派遣事業の場合は、派遣する公的機関によって多少謝金が異なりますが、2時間の指導で2万円程度を手にすることができます(この場合、企業側の負担はわずか1万円)。ところが、この2万円には、訪問前の準備(調査、資料づくりなど)や訪問後の事務処理の業務も含まれています。さすがに、何も準備せず、手ぶら(資料なし)で訪問するわけにはいかないでしょうから、少なくても数時間を費やした上で訪問することになります。しかし、そういった業務に費やした労働時間を含めて謝金は2万円となります。

さらに、公的機関の研修やセミナーの仕事では、2時間程度の場合、1回(日)で3万円程の謝金となります。これについても、準備に何時間費やそうと謝金は変わりません。私は講演の依頼が多いのでよくわかりますが、過去に使った資料をそのまま転用すればさほど手間にはなりませんが、1から資料を作るとなるとかなり時間が掛かります。謝金が3万円の場合、その金額を貰うために、移動時間を含め、まる3~4日分の労働時間を投入することになるかもしれません。

独立した中小企業診断士が仕事をする企業規模と、その規模におけるコンサルティング料の相場

次に、「独立した中小企業診断士が仕事をする企業の規模」と、その規模におけるコンサルティング料の相場について確認してみましょう。先述のアンケート調査の結果によれば、中堅企業や大企業を主たるクライアントとする人は数パーセントにすぎません。9割以上は中小以下の規模の企業や個人事業主向けの仕事を行っていることがわかります。

その中でも、個人事業主や小規模事業者が半数を占めています。つまり、独立した中小企業診断士の主な仕事相手の半数以上は個人事業主や小規模事業者といえます。

では、そのような企業規模のコンサルティング料の相場は、どのくらいでしょうか?通常、中小企業の支援機関・商工団体などで企業と縁を持った場合は、月に3万円や5万円といったケースが多いようです。税理士の月額顧問料程度ということ。しかも、近年はリモート支援が一般化しており、訪問時の支援だけでなくWEB会議やチャットメッセージでのコミュニケーションが求められます。便利な世の中になった反面、週末を含めて毎日のようにメッセージの対応に追われるかもしれません。なのに料金は前述の通りだったりするのです。

大手・中堅企業の案件と異なり、個人事業主や小規模事業者向けのコンサルティング料金の水準は低いです。また、どのような「看板」を背負って仕事をするかによっても金額は異なります。例えば、船井総研など大手企業の看板を背負って仕事をした場合は、月に25~30万円の案件になることもありますが、公的機関のサービスを頻繁に利用する小さな企業に対しては同じ質のサービスを提供しても5万円程度しか課金できないことが多いです。

余談ですが、「1対1」ではなく「1対多」で行う高額塾のように、カリスマを演じながら個人や個人事業主から高額な料金を請求する人もいます。しかし、繰り返しますが、公的機関が提供する無料や格安料金のサービスを利用するような小規模事業者に対しては、(企業側が安価な料金に慣れてしまっていることもあり)月に3~5万円程度の料金しか請求できないケースが多いのです。

つまり、中小企業診断士やコンサルタントの仕事単価については、仮に同じ仕事をしても、どの立場で、どこで、そして誰に対して行うかの違いによって、10倍以上の差が生じることがあるのです。

このように1つ1つの要素を確認してみても、独立した中小企業診断士の年収に関しては具体的な数字が得られるわけではありません。ただし、夜や週末に別の仕事をする、あるいは、戦う場所を上手く選ばないと、(収入どころか)売上1,000万円を超えることすら意外と難しいと思われます。

しかし、大きな収入を得る方法もあるのです。

12月10日の朝、驚くべきニュースが飛び込んできました。米国大リーグ(MLB)で活躍する大谷翔平選手のドジャース移籍が決定しました。驚いたのは、なんと10年総額7億ドル(約1,015億円)という超大型契約の内容です。この巨額契約を取り仕切ったのは、大谷の代理人を務めているネズ・バレロ氏であり、その報酬が50億円だと報じられています。

このような大規模な案件に関わることで、成功報酬も大きくなるのは、中小企業診断士の仕事にも当てはまります。例えば、ものづくり補助金などの申請業務を代行し、4,000万円や5,000万円の補助金を獲得した場合、手数料が10%であれば400万円や500万円が手に入ることになります。こうした補助金の申請業務を通じて、大きな収入を見込むことは可能です。

大型案件を狙って大きな報酬を得る可能性はあるものの、その他の業務では単価が低い傾向があります。実際の売上について、以下にデータを示します。例として、自分の会社を持ち、地元の支援拠点でコーディネーターとして週3日程度勤務し、また地元の小規模事業者(3社)を顧問先として抱えている「ある人(Aさん)」の売上データを提示します。月間の売上は約45万円で、内訳は以下の通りです。

① よろず支援拠点から得る謝金

  • 週3日勤務、1日8時間以上
  • 報酬:30万円(1日2.5万円 × 12日)
  • 交通費は支給されますが、残業代やボーナスはなく、社会保険の会社負担もありません。

 

② 顧問先A社およびB社からの売上

  • 月1回訪問、オンラインミーティング1~3回/月、随時メール対応
  • 売上:6万円(月額3万円 × 2社)

 

③ 顧問先C社からの売上

  • 月2回訪問、オンラインミーティング1~2回/月、随時メール対応
  • 売上:5万円(月額5万円 × 1社)

 

以上の合計は41万円です。税込みで約45万円の売上となります。月に45万円なので、地元の顧問先との契約が続く限り年間売上540万円となります。

この人(Aさん)の場合、週3日のよろず支援拠点の仕事で売上が安定しています。支援拠点の業務は年間契約となるので、その間は確実に収入を得ることができます。しかも多くの場合、本人が希望すれば契約は更新されます。仕事を獲得するために、広告費をかける必要もなく、安定して売上を作ることができます。だから、2年、3年、4年、5年と更新するコーディネーターは多いのです。

また、上に書いたAさんのデータについて、独立した中小企業診断士の中では、比較的良好な収入状況と言えるでしょう。

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