【関口のつぶやき、感じたこと 086】 

2023年 11月 3日(金

  • 新規事業
  • 戦略
  • 市場の選択
  • 調査

こんにちは、関口です。

前回のコラムでは、「中小企業の新規事業が苦戦する本当の理由 1/2」というタイトルで、中小企業の新規事業が上手くいかない大きな理由の一つとして、戦略が欠如しており、特定のツールや手法を前提として採用していることについて触れました。これは、特定のツールや手法を使用することが問題の解決策だと思い込んでしまい、他の選択肢が目に入らなくなってしまうことから発生します。

今回のコラムでは、中小企業の新規事業がなぜ上手くいかないのか、もうひとつの大きな理由を探ります。それは、新規事業で販売しようとする商品やビジネスモデルが適切でないこと、つまり市場選定が誤っていることです。商品やサービスの選択、販売市場の選定、競争状況の評価が不十分で、参入に際して経営者が誤った判断を下すことがあるのです。

業界のイベントや会合で、代理店の探索を目的として登壇した講演者の話に引き寄せられ、他社が採用しているからといって、自社でも同様のアプローチを取ろうとすることがあります。肝心な要素を見落とし、衝動的に新規事業へ飛び込む経営者も存在します。

正しい市場の選択

新規事業を開始する前に、魅力的だと判断した機会に飛びつく前に、最低限の市場調査と競合分析を行うことが重要だと私は考えます。高額な調査レポートを外部の専門家に依頼する必要はありませんが、最低限の調査は不可欠です。需要が本当にあるのか、市場の規模はどの程度か、そして将来的にその市場がどのように変化するかを検討する必要があります。

また、競合他社はどのような存在なのか、これらの要素を考慮した上で、自社の事業拡大の機会を評価し、市場とビジネスモデルを調整して適合させるべきです。市場選定が事業の成功の鍵となります。

ある中小企業の事例

ここでは、ある中小企業の事例を紹介しましょう。この中小企業は、新規事業に参入し、最初の5〜6か月は順調に売上を伸ばしました。これは社員の友人や知人に頼んで商品を購入してもらったためでした。しかし、その後、事業は低迷し、長期間にわたり困難な状況が続きました。

この企業は小さな地方都市で事業を展開しており、1万件弱の顧客リストを持っており、それを活かそうとし、特定の商品の代理店販売事業に参入しました。

最初は社員の紹介を通じて新しい顧客を獲得し、半年以内に100件を超える新規契約が獲得できました。しかし、その後は頭打ちになり、あれこれ手を出しても、月にわずか2〜3件しか新規契約を獲得できない状況となりました。顧客単価は5,000円にも満たないのに2~3件ということです。

さらに、この会社は自社の配送エリアが限られており、エリア外での注文に対してはわずか数百円の紹介手数料しかもらえない不利な契約を結んでいました。これでは、1万円以上の費用が掛かって獲得した新規顧客のリストを、わずか数百円で手放すことになります。

小さな街で事業を展開しており、隣の人口数万人の市(街)は40キロも離れています。高速道路はありません。だから自社配送エリア外へお届けすることは人件費や物流費が掛かりすぎるだけ。あまりにも非効率だったのです。

結局のところ、この事業においては、自社配送エリア内でどれだけのシェアを獲得できるかが全てでした。しかし、100%のシェアを獲得しても売上は1億円にさえ達しないのです。地元企業の存在だけでなく、全国展開している競合も多いため、地元の自社配送エリアで50%のシェアを獲得することすら困難であることがわかりました。仮に、後発組として運よく50%のシェアを獲得しても、年間売上は数千万円にすぎないのです。

この会社が新規事業で販売した商品の市場は、国内市場において数千億円もの規模があります。これまで順調に成長してきた市場です。しかし、自社配送エリア内の市場規模は1億円にも満たないのです。地域は人口減少が続き、過疎化しており、全国的な市場の成長があっても、そこにはほとんど影響を及ぼしません。

簡潔に言えば、この事業は、多くの競合相手が存在する中、特定の地域で販売代理店として活動し、仮に50%のシェアを獲得しても売上は数千万円に達するにすぎないという現実です。

この教訓から、新規事業で販売しようとした商品の選択とビジネスモデルが誤っていたと言えるでしょう。業界のイベントや会合で聞く、「こんなに市場が成長しています。同業のA社もB社も手掛けています」といった誘惑に騙されてはいけません。代理店探しのための都合の良い話には注意が必要です。商品やサービス、市場、競争状況の調査などを行わないで経営判断してしまうと、「YouTubeでなんとかならないか」などと専門家を探しても意味がないのです。

このように前工程の判断を誤ると、後の工程で行うことはすべて無駄になってしまうかもしれないのです。

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