【経営コンサルタント045】 

2021年 4月 9日(金)

こんにちは、関口です。

先月(3月)25日付の日本経済(日経)新聞に「変わる日本の採用」と題した記事が大きく掲載されていました。記事の中では、メルカリの執行役員、日立製作所の執行役員専務、パーソナルキャリアの執行役員の3人が今後の日本の採用について語っていました。この3人の話を受け、担当の記者は「3人の話から浮かび上がるのは新卒と中途採用の垣根が崩れてきたということ。企業は組織の一員になってもらう人材に、利益の創出に貢献できるだけの能力を要求し始めた。そこに新卒と中途の区別は基本的にない。」と述べていました。

また、25日のちょっと前の3月22日付の同じく日経新聞には『地方に大企業「副業人材」 自治体の橋渡し活発化』という記事を見付けました。この記事の主旨は、大都市で働くビジネスパーソンを「副業人材」として地方企業に橋渡しする自治体の取り組みが活発化しているとのこと。少し詳しく見ていきましょう。

日経の記事には、大都市圏で働く副業希望者と地方の中小企業をつなぐ役割を期待されている「プロフェッショナル人材戦略拠点(プロ人材拠点)」の紹介がありました。

この拠点は東京と沖縄を除く45道府県の外郭団体内などに設置されています。私がさっと調べた限り、よろず支援拠点が設置されている団体にプロ人材拠点があるケースが多いようです。

また、内閣府は2020年度から、首都圏の人材が地方企業で副業をする際の交通費や宿泊費として地方創生推進交付金を活用しているとのこと。「副業人材を活用する地方企業に対し、3年間で最大150万円を支給する」とありました。つまり、年間50万円の支給になります。副業人材の交通費や宿泊費のためだけに50万円も補助してくれるわけです。

さらに、国の取り組みとは別に、いくつかの自治体においても大都市で働くビジネスパーソンを「副業人材」として地元の企業に橋渡しするという動きが活発になっています。

記事には鳥取県の「とっとり副業兼業プロジェクト」の取り組みについて書かれていました。このプロジェクトを通じて2020年度に集めた人材は60社92人。21年度には100社100人を目指すとのこと。

早速、「とっとり副業兼業プロジェクト」のホームページを調べてみたところ、「週1で地方企業の副社長になる」というキャッチが目に入りました。求人情報をさっとチェックしたところ、経営企画、マーケティング、営業企画、商品企画の案件が多く目に付きました。株式会社みらいワークスが鳥取県から受託・運営しているようです。

実は、私が最も気になったのは謝礼(月額)です。殆どの案件は3万~4万円。このような料金で、企業側は大企業の優秀な人材を活用することができるのです。

なお、日経の記事には、他にも愛媛県松山市の人材マッチング事業「だんだん複業団」や、福岡県直方市が民間のマッチングサービス会社と組んで手掛ける取り組みの紹介もありました。

さて、2つの記事を紹介しましたが、経営コンサルンタントの仕事、中でも個人でやっている独立したコンサルタントにとって、外部環境に大きな変化が訪れている現実をよく認識するべきであると考えています。コンサルタントの中でも、少し大きな仕事を手掛けるコンサル会社というよりも、むしろ個人でやっている人にかなり大きな影響を与えることになるのです。

大きな影響の要因は、新卒と中途採用の垣根が崩れていくことと同じように、コンサルタント、顧問、副業人材などの役割の垣根が崩れてきたことです。

もっと正確に表現すると、中小企業の経営者にとって助っ人選びの選択肢が格段に増えた一方で、個人のコンサルタントにとって競合するサービスが激増し、市場環境の変化を受け入れざるを得なくなったということです。

はっきり申し上げると、従来のようなスタイルや料金によるコンサルティングに固執する個人コンサルは、今後、ますます案件が獲得しづらくなっていくはずです。

なぜなら、中小企業は謝礼(月額)3~4万円程度で大企業の優秀な社員を副業人材として活用することができるようになるからです。

「副業する」なんて、ちょっと前まであり得なかった話です。また、つい10数年前、私は「週1で仕事をさせてもらえないか?」と、ある企業に打診したことがありましたが、当時、「ウチにそんな制度はない。頭がオカシイのか?」という感じの対応をされたことがありました。ところが、今は時代が変わりました。

今では、国や自治体が、地方創生の一環として公費を投入して地方の中小企業に人材を送り込んでいるのです。コロナの影響であっという間にリモートワークが普及したこともあり、東京にいながら北海道や熊本の企業の支援が容易になったのです。

このようなリモート化は、地方都市で地元に特化して活動している経営コンサルタントにとって脅威になります。なぜなら、良くも悪くも地理的な制約がなくなっていくから。以前なら遠方の都市部からコンサルタントが来ることはなかったのです。でもリモート化により、これからは遠方からでも支援ができるようになります。

欧米や中国などと比べると日本では雇用の流動性が低いため、これまで人材面において大きな垣根がありました。大企業と中小企業、日本企業と外資系企業、社員と非正規雇用・・・どこも垣根ばかりでした。

だから、中小企業の経営者が「困ったな~」と問題に直面し、社内の人材では対応できないと判断した際の選択肢は限られていました。「取引先の金融機関などに誰かを紹介してもらう」「近くの公的機関に相談してみる」という取り組み以外に、あまり選択の余地がなかったのです。

1990年代の後半から普及したネットによりインターネット上で情報の検索ができるようになったとはいえ、さまざまな情報が溢れているため自社の課題解決にピッタリな人を探し出すことは容易ではありません。運良くネットで見つけたとしても、慣れている人は別ですが、どこの馬の骨だかわからないコンサルタントを名乗る人物にいきなり連絡を入れることはちょっと気が引けます。

以前であれば、たまたま購入した本の著者が主催するセミナーに参加したかもしれません。あるいは、「困ったな~」と思ったタイミングに、なんとなく良さそうなセミナーの案内(DM)が手元に届き、参加したかもしれません。

いずれにせよ、書籍やDMなどがキッカケとなり、とあるコンサルタントと接点を持ったことでしょう。そして、「コンサルの人に頼むと、こんなに(料金が)高いのかよ?」などと思い、ためらいそうになっても、以前は他に選択肢がなかったのです。数少ない選択肢しかなかったからです。

それが今、選択肢が増えたのです。副業人材のマッチングサイトに求人を出せば、わずか2~3週もの間に20人、30人が応募してきます。しかも、かなり優秀な人材も応募してくるそうです。おまけに、料金は高い場合でも、マッチング会社の規定により1時間あたり5,000円ほどしか請求されません。

料金は安いうえ、複数の優秀な候補者の中から厳選することができるのです。「どこの馬の骨だかわからないコンサルタントを名乗る(料金の高い)人」と「キャリアが立派で経験も魅力的な(時間単価の安い)人」の間で、どちらが選ばれることになるでしょうか? これは明白です。

もっとも、今でも「よろず支援拠点に行けば、タダで指導してくること」を知らない中小企業経営者が多くいます。あと2年、3年もの時間が経過しても、副業人材の紹介サービスの存在を知らないままという経営者もいるはず。だから旧態依然の対応を続ける経営者も残ることは確かです。

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市場環境が大きく変わっていくのですが、実は個人のコンサルタントにも選択肢が増えていくことになります。見方を変えれば、個人のコンサルタントにも働き方の選択肢が増えたことは嬉しいことではないでしょうか?

以前なら、独立して生計が立てられなければ、フルタイムのサラリーマンに戻るか、どこかでアルバイトをするより他ありませんでした。しかし、今ではクラウドソーシングの案件を取りに行くなど実にさまざま稼ぎ方が可能です。

「コンサルタント」と呼ばれる肩書にこだわらなければ、あるいは、「コンサルタントはこうあるべきだ」などという固定観念にとらわれなければ、さまざまな選択肢があるのです。

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