2018年4月20日
事業コンセプトを評価するためには、3C分析というツールの活用がある。市場、競合、自社の3つの側面から評価する。
前回の「どうやって事業の方向性を決めるのか?」と題したコラムでは事業の方向性の検討について説明しました。
今回は仮説として出した自社の事業コンセプト案を検討する方法について説明します。
コンセプト案の検証作業でよく使われる分析フレームが有名な3C分析です。Customer(市場環境)、Competitor(競合環境)、Company(自社)の3つの側面から検討するのです。
しかし、そのような分析ツールを使えば答えを確実に導くことができるわけではありません。分析ツールは検討や議論のための「ツールにすぎない」ということを踏まえた上で、それぞれを説明します。
まずは「Customer(市場環境)」の側面から検討してみましょう。ここでは「市場が魅力的かどうか?」を判断することになります。次のような複数の観点から市場を評価するのです。
1つ目は「市場の規模」です。これは「自社の商品・サービスを求めている人や企業がどのくらいいるか?」「全体でどのくらいの売上が見込めるか?」などを見極めることです。市場規模ついては大きければ良いというわけではありません。
大きければ強力な競合が参入してくることになるからです。市場規模の大小ではなく、「自社にとって商売が成り立つ規模の市場がどうか?」という観点から検討すると良いでしょう。
2つ目は「市場の成長性」です。今は魅力がなくても成長し続ける市場であれば、5年、10年先には十分に魅力ある市場になるかもしれません。体力のある大企業であれば「10年後を期待して」という判断が下せるかもしれませんが、売上規模が数億円程度の企業にとっては、呑気に構えているわけにはいきません。
3つ目は「未開拓市場かどうか?」という観点です。未開拓ということは、まだ刈り取られていない市場です。「ブルー・オーシャンかどうか?」と表現することもできるでしょう。これまで未開拓な市場は、今までの常識を疑い、既存のサービスに少し手を加えることでも発掘されてきました。
私は先日、Anytime Fitnessというスポーツクラブを見学してきました。ここは、一般的なスポーツクラブにあるプールやスタジオを無くし、「マシンジム特化型」というキャッチフレーズでアピールしています。必要最低限の設備だけを備えています。そのかわりに安価、しかも24時間営業で年中無休。こういう新業態で新しい市場を開拓し、成長しています。
4つ目は、「カネを払うのか?」という支払い余力のチェック(評価)も必要です。これについては、ニーズがあっても経済的な理由から支払うことができないかもしれないので、それについて検討することです。また経済的には何ら問題なく支払えるにも関わらず、支払う習慣がない、あるいは、初めてのことなのでためらってしまうという理由でカネをなかなか出さないこともあり得ます。
例えば、公的支援が充実している市場においては、企業にとって補助金が貰えることが当たり前の感覚になっているかもしれません。そのような場合は、補助金制度を利用する以外の選択肢が買い手にはないかもしれません。
以上の4つ以外にもCustomer(市場環境)については、他にもさまざまなことを検討しなければなりません。例えば、「市場の不確実性」もそのうちの一つです。それは認可が下りなければ始められないという不確実性かもしれません。
また、お弁当の宅配サービスのように、いくらニーズがあってもある一定以上のボリュームがないとオペレーションが非効率になってしまうケースがあります。これは一定以上の業務量がなければ、機械を導入しても使う機会が限定されてしまうため稼働率が低すぎてムダになってしまうということです。
3C分析の2番目の競争環境の評価については、ハーバードビジネススクールのマイケル・E・ポーター氏が提唱した5 Forces Analysis(ファイブフォース分析)がよく知られています。
5つあるからFive(ファイブ)なのですが、それらは「既存競合者同士の敵対関係」「供給企業の交渉力」「買い手の交渉力」という3つの内的要因と、「新規参入業者の脅威」「代替品の脅威」の2つの外的要因、計5つの要因となります。これら5つの要因から業界全体の魅力度を評価するのです。
5つの要因の中でも重要なものが「既存競合者同士の敵対関係」です。そこでは業界内の企業各社を分析することが重要となります。
「供給企業の交渉力」とは自社に提供してくれる「売り手」側の交渉力です。「売り手」である供給企業の交渉力が強ければ、自社の立場は弱くなり利益を圧迫されることになるかもしれません。
「買い手の交渉力」とは自社から買ってくれる「買い手」の交渉力です。買ってくれることはありがたいことですが、相手の交渉力が強ければ価格が叩かれ利益が圧迫されるかもしれません。
「新規参入業者の脅威」は市場への新規参入による脅威です。先に紹介したアメリカからやって来たAnytime Fitnessは2010年に日本市場に参入しました。しかし、5年後の2015年にはティップネスが運営しているFASTGYM24が、Anytime Fitnessと殆ど同じコンセプトで市場に参入してきました。それがまさに「新規参入業者の脅威」ということです。
「代替品の脅威」は、読んで字のごとく代替品が出てくることで自社のニーズがなくなってしまうという脅威にさらされることです。例えば、スマホに電卓機能が組み込まれることで、卓上計算機が脅威にされされました。
3C分析の3番目のCompany(自社)は、自社内部に関することです。先に掲げた「事業コンセプト」を遂行するだけの能力があるかどうかを評価します。
重要なことは2つあります。1つは「その事業コンセプトを遂行するために決定的に重要なことは何か?」を見極めることです。これはCritical Success Factor(CSF)やKey Success Factor(KSF)などと呼ばれます。市場に参戦するための必須条件のようなことです。
そして次に、そのCSFやKSFに対応する自社の強みがあるかどうかを検討することです。当然ながらCSFやKSFに対応する自社の強みがなければ、事業コンセプトの修正や再発見が求めれます。そういう意味において、全ての始まりは「自社の強み」と言えるでしょう。
以上の通り3C分析を説明しましたが、前述の通り、これれは事業コンセプトを評価するための分析ツールにすぎません。3C分析の3つの側面だけで決断を下すべきではないのです。
他にも会社の資金力、事業目標など、さまざまなことを考慮した上で事業コンセプトを固めていくのが良いです。