2020年2月24日
DX、経営戦略、ビジネスモデル、デジタル化
こんにちは。戦略プロセス経営実践会の関口です。
本日は、書籍『BCGが読む経営の論点2020』から、デジタル・トランスフォーメーションについて考えてみたいと思います。
近年、進化するテクノロジーを活用し、世界各地でデジタル・トランスフォーメーション、いわゆるDXの取り組みが進んでいます。
しかし、本書では、日本企業の取り組みの多くは、個別の業務改善やIT導入にとどまっており、本質的な変革には至っていないと指摘されています。
これは非常に重要な指摘だと思います。
なぜなら、DXとは単に新しいシステムを導入することではないからです。
業務を少し効率化することや、紙の作業をデジタル化することも大切です。しかし、それだけでは企業そのものの競争力を大きく変えることはできません。
本来のDXとは、デジタル技術を活用して、顧客への提供価値やビジネスモデルそのものを変えていく取り組みです。
本書では、デジタル化の影響を大きく受けた産業として、メディア産業が取り上げられていました。
新聞、雑誌、テレビなどが持っていた広告や情報流通の力は大きく変化し、消費者との接点はGAFAなどのプラットフォーマーへ移っていきました。
一方で、自動車やエネルギーのように、かつてはデジタルによる影響が限定的だと考えられていた産業でも、この数年で変化が一気に進んでいます。
つまり、デジタル化の波は、一部の業界だけのものではありません。
あらゆる産業において、企業は自社の事業のあり方を見直す必要に迫られているのです。
では、私たちは何を考えるべきなのでしょうか。
大切なのは、変革の大きなストーリーを描き、そこに至る道筋を設計することです。
本書では、DXを進めるために、まず現状の取り組みを可視化し、集中と選択を行うことが重要だと述べられています。
どの事業で、どの業務で、どのようなデジタル化が進んでいるのか。
それを整理したうえで、すべてに手を出すのではなく、自社が勝てる領域に絞って投資する必要があるのです。
総花的に取り組めば、投資は分散し、成果も中途半端になります。
一方で、ターゲット市場と提供価値を明確にし、特定領域に集中すれば、顧客データやノウハウが蓄積され、新しいサービスや収益モデルへ発展させることも可能になります。
そして、ターゲットを明確にした後に必要になるのが、トランスフォーメーションの道筋です。
本書では、次のような流れが示されていました。
第一に、短期的な業務改善。
第二に、顧客起点で業務全体を見直すこと。
第三に、周辺領域で新しいサービスを展開すること。
第四に、他産業にも影響を与えるような新規事業を構築すること。
この流れを見ると、DXは決して一足飛びに実現するものではないことが分かります。
まずは足元の業務を見直し、次に顧客への提供価値を再設計し、さらに新しい事業機会へ広げていく。
このような段階的な取り組みが必要なのです。
本書では、最終的に目指す姿として「バイオニックカンパニー」という言葉も紹介されています。
これは、デジタル、機械、人間の能力を組み合わせ、ビジネスモデルを転換し、競争優位を築く企業のことです。
ここで重要なのは、デジタルだけで完結するのではなく、人間の力と組み合わせるという点です。
デジタル技術によって情報を集め、分析し、意思決定の速度を上げる。
一方で、顧客との関係づくりや価値の提供には、人間ならではの判断や創意工夫も欠かせません。
つまり、DXとは「IT化」ではありません。
自社が誰に、どのような価値を提供し、どのような姿へ変わっていくのか。
そのストーリーを描き、実行の道筋を設計することこそが、本質的なデジタル・トランスフォーメーションではないでしょうか。