【経営と戦略を考える004】
2025年 7月2日(水)
いま、士業事務所の経営スタイルが見直される時期に来ているのではないかと思います。
かつて主流だった「顧問契約で毎月一定額」というモデルも、今ではその価値が相対的に下がってきたと感じる方も多いのではないでしょうか。
その要因は、生成AIの普及、freeeのような会計ソフトの普及、それに公的機関が提供する無料相談サービスの認知拡大など、事業を取り巻く外部環境の大きな変化です。
結果として、定型的なアドバイスの価値が下がり、「新規の顧問契約がなかなか取れなくなった」「既存顧問契約の解除・縮小が増えている」といった声が少なくないようです。
私自身、さまざまな士業やコンサルの方々を長期にわたり見てきた中で、こうした“行き詰まり感”を抱える事務所の声を多く耳にするようになってきました。
このように市場環境が大きく変わりつつある中で、どうすれば良いのでしょうか?
最も重要なのは、「どのような稼ぎ方で事務所を成長させるのか」という方向性を明確にすることです。そこで、おすすめする1つ目は、稼ぎ方のスタイルの「見える化」と「選択」です。
士業の仕事は、どうしても“依頼があって動く”という受け身の構造になりがちです。しかし、受け身のままだと、先に述べた代替サービスに仕事が奪われてしまいます。そんな中、最近では次のような稼ぎ方のスタイルを意識的に選び、それらを組み合わせて成果を出している事務所も少なくありません。
その1)プロジェクト型:
ある事業の立ち上げや販路開拓など、プロジェクトの助っ人として半年以上の支援に関わるスタイルです。企業の経理、人事・労務などの業務(部門)を社外専門家として担うケースもあります。
その2) 成果報酬型:
商談成立、採択決定など、成果が出たときにのみ報酬が発生するスタイルです。
その3)コンテンツ販売型:
知見・ノウハウ・体験談を動画などの教材(コンテンツ)として販売する方法です。個別やリアルタイムの対応が不要で、「1対多」の支援が可能となります。顧客数が増えても仕事量が増えるわけではありません。
その4) カリスマ・コミュニティ型:
YouTubeなどを通じてファンを囲い込み、セミナーやコンテンツ販売のみならず、食事会、限定グッズ販売、マッチング、紹介など、ファンに対してあらゆる角度から課金を試みる(何でも金にしてしまう)サービスです。
その5)スポット・単発型:
セミナー、相談、研修など1回限りのサービスを対応することです。主に、上記に結ぶ付ける(誘導する)ことを目的に行います。広く告知できれば新たな出会いのきっかけにもなります。
これらの中でどれを選択すべきでしょうか?
また、選択した中で組み合わせ方などを検討した上で、「どうやって顧客に対して最初のサービスを提供するのか」「自分の事務所はどのサービスで稼ぐのか」「顧客との付き合いにおいて、どの時点で黒字化させるのか」といったことを設計し、まずは小さく試して顧客の反応をみることが、小さな事務所には大きな突破口となるはずです。
2つ目は「ターゲットと専門分野を明確にする」ということです。「ウチは何でもできます」「誰にでも対応します」という売り出し方では、何かしらのキッカケを通じて人間関係を構築しない限り、市場の中で埋もれてしまいます。
先に述べた通り、サービスの多様化が進み、同業者以外のサービスも広義の意味で競合に該当するようになったのです。
そこで、「〇〇業界の中小企業社長に特化した●●の専門家」「同族会社社長を専門に支援する●●」などと、対象やテーマを絞るだけでも、他事務所との差別化が可能になるはずです。もちろん、それだけで全てが解決するわけではありません。
専門性を絞ると対象数が減ると心配するあまり、「あれもできます」「これも担当します」などと打ち出す方が良いと考える人も少なくありません。公的支援機関の立場であればれそのような方法でも良いのですが、一民間企業の場合、それでは多数の中に埋もれてしまいます。
先のコラムの中で紹介した山口周さんの本にも「リモートワークによって仕事の全国大会化が起こる」「ローカルメジャーからネーションニッチへ」と書かれています。
絞ることで、「それはまさにウチのことだ」と関連性を見いだした見込み客から問い合わせが来やすくなります。そして、最初に獲得する業務は小さくても、それをキッカケに横展開(人材課題、資金調達、事業開発など)することが可能になります。
ですので、実は成長性もあるのです。すべては、事業をどのように設計するか次第なのです。
集客が大きなネックになっているという事務所も多いはずです。そこで私がお勧めしているのは、次の2つの方法を併用することです。
●自ら仕掛ける:
これは、ヨソに依存するのではなく、自社の力で集客できるようになることです。社員数が数名程度の小さな事務所の場合、HP・メール・情報コンテンツなどを活用し、WEB上に誘導した上で見込みを育てる方法であれば小予算で実行可能です。
●他人の企画に便乗する:
勉強会をはじめ、行政や民間企業が企画するさまざまなイベントを上手く活用して自社の集客につなげることです。例えば、●●セミナーに登壇するという方法があります。
初期段階では「他人の企画に参加する」ことから始めるのも有効です。しかし、時間の経過と共に「自ら仕掛ける」方の割合を高めていくことが理想です。
この二刀流があれば、「待つだけの事務所」から、「自分で主導権を握る事務所」に進化できます。
事例から学ぶ集客の知恵
本当に集客につながるのは、現場での“ちょっとした工夫”でした。
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小さな士業事務所の最大の強みは、大手には真似できない“柔軟性とスピード”です。収益・実績・見込み客の流れを意図的にデザインすることで、安定しつつ成長する事務所づくりが可能になります。
まずは、まずは、「誰に・どんな価値を届けるのか」を整理することから始めてみてはいかがでしょうか?
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