【ビジネス書005】
2017年1月24日(火)
こちらは、前のコラムで紹介した「ザ・会社改造 340人からグローバル1万人企業へ」と異なり、大学の先生が筆者ということもあり、自身のビジネス経験から得た話ではなく様々な企業戦略のケース(事例)を紹介する書籍です。また、戦略やマーケティングの専門用語については、計11の事例紹介の中で行っています。
まず、本書の中で筆者は「戦略」について次の通り非常にわかりやすく説明しています。下記の通り、そのまま引用します。
自分が将来したいと思っている「あるべき姿」を描き、それを達成する上で関連する環境(周りの状況)を分析し、自分が持っている経営資源(能力)を意識しながら、背後のメカニズムを解明し、「あるべき姿」に到達するシナリオを描くことである。
その際に特に重要なのは、どこに努力を集中すれば、自分の努力が生み出す成果が最大化され、「あるべき姿」にうまくたどり着けるかを示すことである。初めに苦労して集中的に努力すると、その後、テコの効果を利用しているかのように、あるいは徐々に良環境の環が回って、自然な流れとして自分の目指す姿が実現されていくように工夫するのである。
また、筆者は戦略について次のようにも説明しています。それは、『戦略を立てるというのは、シナリオを描くことである。しかも、何かに焦点を絞って努力を集中して、良循環の環を回し、できるだけ自然に「あるべき姿」へと至る流れを創れるように考えることである』ということ。
さらに、戦略を考えるために重要な注意点を2つ指摘しています。1つは、人が先入観で常識だと思っていることを疑って、考え抜くクセをつけること。もう1つは、目の前に起きている事象の表層にとらわれることなく、その「背景にあるメカニズム」を掘り下げて考えること。
なお、本書の中では様々な企業戦略ケースが紹介されています。その1つが、車社会の到来と共に郊外のロードサイドへ店舗展開し、セントラル・キッチンによって低コスト化を実現して大きく成長したすかいらーくの例の紹介です。
また、新築着工戸数の頭打ちという事態の直面を機に市場のメカニズムを解明してリモデル市場を新たに切り開いたTOTO、それに駐車場オーナー、ドライバー、自社にとって「三方よし」のビジネスモデルを構築して急成長したパーク24など、誰もが知っている企業の事例が10以上もあります。
今回、これらの中でも非常に参入障壁が低い駐車場ビジネスで成功したパーク24に注目してみましょう。パーク24が駐車場ビジネスを始めるまで、駐車場ビジネスは多数の個人事業主がひしめくFragmented Industry(フラッグメンティッド・インダストリー)でした。
fragmentは「断片」や「かけら」という意味ですが、Fragmented Industryとは個人事業主が狭い商圏で商売をしている業界。今でも見かけますが、当時は土地オーナー(個人事業主)が空いた土地を駐車場として活用していたに過ぎない状態だったのです。
パーク24はパーロックを用いた小規模・分散型の無人駐車場を多数建設し、それをネットワーク化させるモデルですが、投資先行型のビジネスです。初期投資の回収には一定の時間が掛かります。
土地オーナーは自身の土地を貸すだけで投資不要ですが、パーク24にはパーロックの設置など初期投資が必要です。
しかも、ネット―ワークを構築し、先行者優位の立場を得るためにはヨソよりも先に次から次と良い場所を押さえてさらに投資し続けなければなりません。
キャッシュが出ていく一方、投資回収が済んでいない物件が全体の中で多数を占めている間は資金繰りに苦しいのです。
このような問題に加え、ネットワークに参加してくれる駐車場が増えれば増えるほど分散していく現場が見えなくなるという問題にも直面したそうです。
そこでITに投資して増え続ける駐車場の管理を行い、またITから得たデータをマーケティングなどに活用して好循環を生み出すことにより、小規模でも管理人を置く駐車場よりも効率的な運営を実現化させたのです。
本書ではパーク24について、『「分散している」という強みと、「IT化で情報を集められる」メリットをうまく組み合わせたビジネスである』と指摘しています。
「何かに焦点を絞って努力を集中して、良循環の環を回す」ことが戦略のポイントですね?次のコラムは、こちらから!
昨年あたりからシェアリングエコノミーという言葉をよく耳にするようになりました。その代表格の1つがカーシェアです。
そのカーシェアにパーク24は大きく貢献しています。街の中を歩くとパーク24が運営しているタイムズ(Times)の駐車場には「カーシェア」ののぼり旗をよく目にするようになりました。
今は、ネットワーク化した貸し駐車場から共有型のガレージに変貌しつつあるのです。