このレポートは独立したコンサルタントを想定していますが、実際には税理士・社労士など少人数で活動されている士業の事務所にも幅広く役立つ内容を盛り込んでいます。
「プロローグ」から「パート1」~「パート7」までを読んでみて、いかがでしたか?
ここまでの内容で、私が強調してきた以下のポイントについて、さまざまな角度から検討していただけましたか。
これらは「独立経営コンサルタント」として活動していく上で、避けては通れない根本的な問いです。まだ答えが明確でなくても構いません。大切なのは、ここで立ち止まり、自分なりの仮説や方向性を持っているかどうかです。
この先のパートでは、さらに内容が濃く、ボリュームも増していきます。ここまで以上に「自分ごと」として読み進め、気合を入れて理解を深めてください。
独立した経営コンサルタントの事業戦略においても、他の事業と同じように「現状」から「理想の姿」へ到達するためのシナリオを描くことが不可欠です。
その際に有利に働くのは、徹底的に顧客を理解した上で、自分の強みを最大限に活かすこと。そして市場や競合の状況を把握し、勝てるシナリオを描くことです。
私が提供する『今すぐ改革』の受講生の中には、残念ながら独りよがりな発想で事業を考えている人もいます。市場や競合をほとんど調べず、「ターゲットは中小企業の社長です」と、ターゲットが曖昧なケースも見受けられます。
本当に重要なのは「中小企業の中でも、どのような経営者が顧客になるのか?」を明確にすることです。その際には、見込み客の思考や感情、不満や痛み、欲望や恐怖、そしてチャンスなどを理解することも欠かせません。法人を対象にするなら、組織内で意思決定がどう行われるかについての理解も必要です。
● 独立コンサルタント最大の悩み ― 集客
経営コンサルタントとして独立した人が直面する最大の悩みは「集客」です。どれほど立派なキャリアを持っていても、独立後に顧客を獲得できなければ売上はゼロです。有名企業で取締役を務めた人や、グローバル企業の日本法人社長だった人であっても、集客ができなければ苦境に陥ります。
過去に華々しい肩書を持っていた人ほど、独立後に売上がゼロの状態になったとしても、報酬が少ない公募案件や、クラウドソーシングのような単発の仕事に応募することはプライドが邪魔してできない場合があります。しかし、売上がなければ「社長」と名乗っていても実態は失業者と同じです。手持ちのキャッシュは時間の経過とともに減っていき、限界に達すればゲームオーバーとなります。
●「コンサルタントのコンサルタント」のアドバイスとは?
私は著書『40代以降に経営コンサルタントとして独立する』の中で、「どうやって顧客を連れてくるか?」というテーマについて、3名の「コンサルタントのコンサルタント」のアドバイスを紹介しました。いずれも私が実際に料金を支払って入手した情報です。
ここでは、その3名のアドバイスを、「個人事業主相手ではなく、法人(企業)から仕事を得る」という視点で改めて検証します。
なお、拙著をお読みいただいた方には復習+αの内容となります。
A氏は「独立当初はインターネットに頼らず、異業種交流会などに参加し、ひたすら人と出会いましょう」と勧めていました。出会いを通じて相手の悩みを聞き出し、その場で「私には○○のお手伝いができます」と提案する、まさにフットワークの軽い営業マン型のアプローチです。
この方法では、最初からサービス内容を提示せず、相手に合わせて「後出し」する形になります。若手や営業好きな人には有効ですが、50代以上には体力的にも心理的にも難しいかもしれません。
ちなみに、私自身、業界団体の懇親会などではA氏の方法を応用してきました。講演者という「一目置かれた立場」であれば、売り込みではなく自然な流れでサービスを案内でき、成果につながりやすいのです。
なぜなら、参加者(経営者)が「先生」と呼んで私に近づいてくるからです。露骨な売り込みはできませんが、さりげなく「私は〇〇(例:研修)もやっています」と説明すれば研修や個別相談の獲得は難しくないのです。
私が、どこかの異業種交流会に参加して名刺交換したら、相手から「知らないどこかのおじさん」として扱われるでしょう。しかし、講演後の懇親会の場では「一目置かれた存在」として見られるのです。
一方、B氏は、コンサルタントとしてまず「独自の唯一無二のサービス(コンテンツ)」を作り、それをあらかじめパッケージ化し、料金・回数・内容などを明示する方法を説いていました。
例えば「月1回、10回訪問で計300万円」といった形で、訪問回数や滞在時間、料金などを事前に明確に提示するのです。
B氏のアドバイスは、サービス内容を最初から提示する、いわば「前出し」の手法といえます。
自身しかやっていないような独自のコンテンツとして売り出し、それを出版や書籍広告といった手段で広く周知させ、興味を持った人を集める。その上で、DMなどを使って経営者を対象にセミナーへ誘導し、当日にクロージングさせるという流れです。
この方法は「売り手都合の一方的なスタイル」になりやすい点に注意が必要です。確かにサービス内容はわかりやすくなりますが、顧客の立場や状況を十分に理解しないまま、「これをやりなさい」「この方法で成功します」といった押し付け的・一方通行的なスタンスになりがちです。その結果、集客面では苦戦するケースが少なくありません。
さらに、出版した書籍について、日経新聞に全5段・半5段の書籍広告を出稿すると高額なコストがかかり、PDCAを回せない点も大きなリスクとなります。このやり方は資金が潤沢にある企業や個人には適していますが、ごく普通の個人コンサルタントには不向きでしょう。
ちなみに、私自身もパッケージ化したメニューは用意していますが、あくまで「メニューの1つ」として提示する程度にとどめ、前面に押し出すことはしていません。
C氏のアドバイスはシンプルでありながら本質的です。
「人が自分に引き寄せられる状態をつくりなさい。そのために、権威を高め、信じてもらい、セレブ(有名)になりなさい。」
具体的には、
この4つをすすめています。
私はこのアドバイスを最も評価しています。なぜなら、特定の業界内で「一目置かれる存在」になることこそ、独立コンサルが長期的に成功するための鍵だからです。
もちろん簡単には実現できません。しかし「テーマ✕業界・業種」で専門分野を絞り、活動の場をつくり、小さな実績を積み上げれば多くの人に可能性が広がります。セミナー講師や執筆、TV出演などの活動を通じて「権威」を確立すれば、顧客から信じてもらえるようになります。
特にメディアの影響は絶大です。私自身もキー局の番組に何度か出演した経験がありますが、その効果は大きく、「権威」「信頼」「認知」が一気に高まることを痛感しました。
「コンサルタントのコンサルタント」たちのアドバイスには、それぞれ学ぶべき要素があります。
私の結論は明確です。独立コンサルにとって最大の武器は「一目置かれる存在」になることです。そのためには、専門分野を絞り、地道に実績を積み、メディアなど「影響力のある何か」を効果的に活用しながら、権威と信頼を築いていくことを強くおすすめします。
単価が高額でなくても、「一目置かれる存在」に近づくための確かな一歩として――私はセミナー講師を推奨します。
「経営コンサルタントはセミナー講師ではない」と主張する人を見かけますが、純粋なコンサルティング業のみで食べ続けるのは、想像以上に困難です。
● 実績を積むための複数の活動
だからこそ、セミナー登壇・執筆・TV出演・国や自治体の委員活動など、複数の活動を通じて実績(=証拠)を積み上げていく必要があります。
また、「テーマ✕業界・業種」で専門分野を絞り込むこと自体は重要ですが、それだけでは不十分です。その分野の関係者の目に触れ、認知されなければ意味がありません。自分では唯一無二だと思っている手法も、第三者から見れば単なる「言葉遊び」に映ることは少なくないのです。
さらに、自社サイトにいくら立派な主張を書いたとしても、読み手はそれを情報源の一部として参照するに過ぎません。サイトの記載を鵜呑みにする人は稀です。だからこそ、地に足のついた活動を続け、特定分野で「一目置かれる存在」と認識されることが重要です。その結果、C氏が述べる「権威」「信頼」「セレブ(=当該分野での知名度)」につながります。
逆に、この「一目置かれる段階」に達する前は、何をやっても成果は限定的で苦戦しがちです。
例えば、「月1回2時間で30万円、全8回で計240万円」などの料金表をサイトに掲載するのは自由ですが、私が調べた限り、1~2年経過しても問い合わせが皆無という例は少なくありません。
もちろん、自主開催セミナーで演出力を駆使することで、個人事業主層を集めることは可能です。
「こんなに儲かりました!」「受講生Aさんは年商1億円!」といった誇張的な訴求で情報弱者を集めるやり方も存在します。しかし、この手法は継続性に欠けるケースが多いのです。短期的に売上は立っても、長期的な信頼・評判・再現性の面で持続が難しいのです。
大前研一氏のような全国区の知名度を得るのは容易ではありません。とはいえ、「テーマ✕業界・業種」でセグメントを絞り込めば、あなたの地位や可能性を着実に高めることは十分に可能です。
● メディア活用こそ最大の武器
最後に、「一目置かれる存在」になるための最も強力なルートは何か? と問われれば、私は「メディア」と答えます。媒体の種類や格はさまざまですが、中でもTVキー局への出演は別格です。数秒のコメントではなく、スタジオでのゲスト出演こそ理想です。
余談ですが、私が以前在籍していた中小企業の社長はメディア活用に長けていました。2019年にはテレビ東京『カンブリア宮殿』に出演しました。あの露出が与えた影響力は圧倒的でした。私自身もキー局の生放送に複数回出演し、「権威」「信頼」「当該分野での知名度」を形成するうえで、メディアの威力がいかに大きいかを痛感しています。
このセクションでは、コンサルタントが顧客を獲得するためのさまざまな方法を紹介します。中には個人コンサルタントには向かないものも含まれますが、「なるほど、こういう手段もあるのか」と気づきを得られるはずです。ぜひ参考にしてください。
これは先に述べたA氏のやり方に近いもので、非常に一般的で多くの人がまず思いつく方法です。
セミナーやイベント、交流会に参加し、人脈を築くことになります。その結果、
といった人と出会い、紹介や依頼につながることがあります。数多く打つことでそういったチャンスに恵まれるはずです。
私が多数の経営コンサルタントを見てきた限り、この方法は最も堅実です。ただし、漫然と顔を出すだけでは成果につながりません。地域や業界、テーマを絞り込み、集中して活動することが必須です。
例えば「地元の中小企業支援に特化して活動する」「〇〇支援をテーマに特定業界の研究会へ参加する」といった形です。まず接点を作り、そこから信頼を積み重ねていくことが王道です。
次に挙げるのはB氏のやり方と同じで、本の出版を販促の場として活用する方法です。いわゆるバイブル商法のコンサルタント版という感じです。
出版後にSNSなどで読者とつながり、後日、自主開催セミナーへ誘導し、その場で成約につなげます。
出稿の頻度は減りましたが、過去にB氏は年1冊の出版と、日経新聞への広告を年に5~6回掲載するというサイクルを回していました。この手法は大きく当たる可能性もある一方、広告費がかさみ、収益を圧迫するリスクが高いです。実際、売上の半分以上を広告に費やし、自転車操業に陥る例も少なくありません。
特に個人コンサルタントの場合は、数百万円単位の資金をあっという間に失うリスクを背負うことになり、現実的ではないでしょう。出版だけでは、多数の中に埋もれてしまい効果が弱いため、「出版+書籍広告」など「広告」とのセットが必要である点もハードルを上げています。
このやり方を実践してきたのは株式会社武蔵野の小山昇氏ですが、同氏についても以前よりペースが落ちてきました。同社は売上規模が数十億円以上あるため、日経新聞へ高額な広告出稿を続けても問題ないはずです。しかし、ごく普通の個人コンサルタントにとってはリスクが高すぎる手法といえます。
「ご相談の上お見積りします」と案内する方法ではなく、サービスをあらかじめパッケージ化して提示する方法です。料金も明示してわかりやすくすることで、顧客に安心感を与えます。
ただし、このやり方は「作ったものを、とにかく売る」という発想に陥りがちです。需要より先に商品を作ってしまうため、無理にでも売り込むスタンスになりやすく、バランス感覚が必要です。
「1対多」で展開する高額塾の販売方法は、まさにこれに該当します。
零細・個人事業主を対象に成功している人が多く用いる手法です。小さなコミュニティの中でカリスマ的な存在となり、信者に対してさまざまなサービスを次から次へと売り出すのです。
例えば、「マーケティング講座」から「コピーライティング」「リスト活用術」「Zoom集客」へと展開する流れです。まるでアイドルが握手会でTシャツやマグカップなどのグッズを販売するのと同じ仕組みで、売れるものは何でも売るのです。
カリスマ的な人物が主催する懇親会では、一流ホテルの会場で、同じテーブルで食事ができる席を高額で販売しているケースも少なくありません。特に隣席は、さらに高額に設定されることもあります。
しかし、対外的にはカリスマを演じていても、実際には社員の口コミ評価が極めて低かったり、倫理的に問題のある行為が後に元社員たちに暴露されてしまうこともあるのです。
とにかく、コンサル(実際には単なる相談会)は、さまざまなの「売り物」の一つにすぎません。
ファンが大勢いれば、バカ高い料金を設定・案内しても、「お願いします」と名乗り出てくる人が現れます。「私のコンサルは1時間に45万円。このたび、3枠だけ募集することになりました」「いつも募集開始から5分後には一杯になってしまうので、…」「〇〇日〇時スタート、お急ぎください!」などと煽るやり方がよく見られます。
「1対多」で成功する人の多くがこの手法を活用しており、最も高額収益を上げるのもこのパターンです。ただし、対象は企業というよりも、むしろ個人や零細事業者となります。
なお、カリスマを演じるために、あの手、この手が使われています。高級車、カクテルパーティー、南の島でのバカンス…。この点については想像にお任せします。
今後は、AIの普及により手口がより巧妙になっていくことでしょう。
これはカリスマ型に近いです。あるテーマに関心を持つ人のリストを集め、そのコミュニティに対してさまざまな商品を売る方法です。最初に決まったサービスがあるわけではなく、リストの要望・反応に合わせて何でも売るスタイルです。
情報商材の販売に近い形といえるでしょう。
大手コンサル会社やシンクタンクが定番として行う方法で、低額の勉強会や研究会を入り口にし、その後でコンサル契約へつなげます。
これについては、NPOや一般社団法人を隠れ蓑にする方法もあります。
大学の特任教授や講師などの肩書を利用し、胡散臭いと思われがちな経営コンサルタントに対する不信感を払拭する方法です。
例えば、「大阪大学工学部 特任教授」などという肩書を活用するのです。大阪大学の信用力を拝借し、これを強調することで信用を得るのです。
私は3年間、東京・お茶ノ水にある国立の東京医科歯科大学(現:東京科学大学)の講師を務めていた時期がありました。
年に1回だけ大学で講義しただけですが「講師」の肩書をいただけるのです。ありがたいことに、東京医科歯科大学のような国立の超難関校の場合、地方の知名度の低い私立大学の講師よりも遥かに信用力があります。
「会社名」で売り出すのではなく、個人を売り出す方法です。いわゆるキャラクタービジネスに近いです。
武蔵野は小山昇氏を、もう辞めていますが、以前の船井総研は五十棲氏を前面に押し出していました。
また、海外のカリスママーケッターの名前を借りて高額商材を売るケースもあり、「既に認知されている権威」に便乗することで短期間で売上を作ることができます。
ちなみに、先に述べたB氏がすすめる「自分の独自手法」をつくり、それを認知させるやり方は非常に大変です。なぜなら、自分の力で認知を獲得しなければならないからです。ところが、こちらは「既に認知されている」人や組織の名称を使って売り出すのです。
孫正義、マッキンゼー、東大、‥‥このように「既に認知されている何か(人物、企業、団体など)」の信用力や権威力を拝借した方が、資金力のない事業者には遥かに楽なのです。
事例から学ぶ集客の知恵
STP、SWOT、USP・・・このような横文字の定義を知り、賢くなったつもりになってはいけません。
本当に集客につながるのは、現場での“ちょっとした工夫”だからです。
事例に学ぶ12のアイデア、無料で公開中です。
このパート(ページ)は情報量が非常に多くなりましたが、お役に立ちましたか?
「パート5」でお伝えした通り、「(あなたが)どのようなサービスを提供するか?」について検討するに際し、あなたがやらなければならないことは、顧客になりうる経営者の要望(顧客要望)をよく検討してみることです。
実は経営者にはさまざまな要望があります。それを上手に整理した上で、「あなたはどのようなサービスを提供すれば、あなたの強みが活かせるのか?」「価値を提供できるのか?」という視点で検討することが非常に重要です。