「プロローグ」それに「パート1」から「パート8」までの内容は如何でしたか?
こちらのパートはQAセッションです。2つのQAを紹介します。
事業を上手に運営するために最も注意を払うべきポイントは、大きく2つあります。「新規獲得のコスト&時間」と「LTV(顧客の生涯価値)」です。
理想は、「時間を掛けることなく、低いコストで新規の顧客を獲得し、LTVの高い顧客を多く持つこと」です。しかもリスクを分散させながら…。
「時間」と書いたのは、時間の経過が「機会損失」につながるからです。新規獲得のコストが低くても、獲得するまでに時間が掛かると「機会損失」になります。
はい、いくつかあります。
独立した経営コンサルタントとしてご自身の事業の戦略を検討する際には、売上構成、時間(スケジュール)、リスクの分散、獲得の難易、効率性、LTV、機会損失、運営スタイル、時間軸などについても考える必要があります。
これらについて複合的に考えた上で、あなたにとって「ベストな選択肢」「ベストな可能性」を探ることです。
これから説明する内容は、ご自身の戦略を検討する際に、頭に入れておいた方が良いことです。よく考えながら読んでみてください。
例えば、独立したコンサルタントとして、月間の売上90万円の事業を目指すとします。月に90万円の場合、年間売上は1,080万円となり、1,000万円の大台を超えます。
この目標は月に30万円を払ってくれる顧客を3社見つけ出せば達成することができます。30万円X3社=90万円 となるからです。3社であれば各社に対して月1~2回訪問しても最大で6日。これなら時間(スケジュール)の調整は問題ないでしょう。
しかし、今月に1社、来月にまた1社と契約終了のタイミングが重なると、あっという間に売上が1/3まで激減します(2/3を失います)。少ない数の顧客に頼ると、1社を失う(1社と何かしらの理由で契約が終了する)と、売上全体が大きくマイナスの影響を受けます。これでは「売上構成の面で事業リスクが高い」となってしまいます。
また、月に30万円を払ってくれる顧客を探し出すことは、月に5万円、7万円の契約案件を探し出すことよりも遥かに難しいはずです。獲得までに時間と費用が掛かります。料金が高いために、1年経っても、2年経っても1件も取れない…このような問題に直面する人も少なくないのです。
次に、小さな会社を相手に月4万円の契約案件を獲得して事業を組み立てることを想定してみましょう。税理士の顧問契約のような感じです。この場合、月に90万円以上を売り上げるためには、なんと23社も見つけ出さなければなりません。月1回2時間の訪問でも、23社も同時に抱え込むと訪問のスケジュール調整がとても大変になるはずです。
しかも、遠方の顧客を訪問する場合は移動に時間が掛かります。距離は大したことなくても、電車が1時間に1本しかない場所にある顧客を訪問する場合は(電車の)待ち時間が長くなります。顧客(訪問先)が遠方にあると、1日に1社の対応が限界になってしまいます。このように顧客の所在地が分散していると訪問日時(スケジュール)の調整が難しくなってしまうのです。
でも、訪問対象の顧客が地元に集中していれば、午前中に1社、午後に2社と時間差で1日に2社、3社…と訪問することが可能です。効率的に訪問することが可能になります。
他にも良い点があります。顧客数が多ければ、1社、2社との契約が終わっても、リスクが分散されているので、売上全体への影響は限定的です。
ところで、「月に90万円以上を得るためには、4万円の契約を23社から獲得する方法よりも、月30万円の契約の案件ならわずか3社の獲得だけで済むので、この方が楽ではないか?」「こちらの方が簡単ではないだろうか?」と考える人が少なくないはずです。
一見するとその通りですが、ひとりコンサルタントが中小企業を相手に、月30万円もの契約を獲得するとなると顧客の獲得がかなり難しくなるのが一般的です。料金が高くなればなるほど、対象が一定以上の規模を誇る企業に限られるからです。しかも、集客するための投資が必要になります。
月に4万円の料金であれば、美容院、エステ、小売店舗など、地元の零細事業者でもなんとか工面できる金額です。だから限られた地域(商圏)にフォーカスし、複数(多数)の契約を獲得することが可能です。ところが、月30万円の契約となるとそうは問屋が卸しません。その理由は高額だから。となると、全国に目を向けなければなりません。
中小企業が地元の公的機関の経営支援サービスを利用すれば、専門家(と呼ばれる人)に事務所まで来てもらう場合でも負担は1回当たり最大3万円以内で済みます。私が調べた限り、企業側の負担は1万円というケースが多いです。このようなサービスと比べると、民間のコンサルは、「高すぎる!」と一蹴されてしまうのです。
月1回の訪問で30万円。これは一部の大企業には安いコンサルティング料金かもしれませんが、売上10億円未満の中小企業の多くは高いと感じるはずです。だから、コンサルタントはターゲットの地域を広げなければなりません。月に30万円と設定するのであれば、対象を全国規模に広げて活動しない限り、顧客の獲得が難しくなってしまうでしょう。
ちなみに、獲得が難しい月1回の訪問で30万円の案件ばかりを狙い続け、仕事がないまま時間を過ごすことは機会の損失につながります。仕事がないまま、売上が0(ゼロ)のまま1年、2年…と時間だけが過ぎていくからです。月にわずか1回の訪問で30万円の仕事は魅力的かもしれません。しかし、10日間仕事がなければ、その10日間の売上はゼロです。一方、単価が4万円/日の仕事であっても、1日1社を訪問すれば10営業日後には売上40万円に達します。高い単価の案件を狙い仕事がないまま3カ月、半年と時間が経過すれば、生活費だけでもあっという間に100万円、200万円を使い込んでしまいます。
そこで「これではマズイ!」「なんとかして集客しなければ」と思い、広告に資金を投入し始めるかもしれません。そうすると、今度は1件も獲得できないまま、投入した資金(広告費)までも失ってしまうリスクがあるのです。
このように、売上構成、時間(スケジュール)、リスクの分散、獲得の難易、効率性などをよく理解しておくべきなのです。
追加しましょう。
平均すると1社とはどのくらいの期間、契約が続くでしょうか?
単価が高く、長く続けば顧客の生涯価値(LTV)が高くなります。しかし、単価が高くてもLTVが低ければ、何度も繰り返し新規顧客を獲得し続けなければなりません。
その場合、繰り返し顧客を獲得するための「仕組み」が必要となります。しかも、そのような新規顧客の獲得には一定以上のコストが掛かることが一般的です。
また「時間軸」という概念の理解が重要です。なぜなら先に述べた4万円のコンサルのサービスを提供する場合、いきなり23社と契約が獲得できることはまずないからです。起業した初月に運よく2社と契約できたとしても、売上は8万円にすぎません。生活費の不足分は貯金を取り崩すことになるのでしょうか? また、どのくらいのペースで23社を獲得していくのでしょうか? 本当に獲得できるのでしょうか?
こういうことをあらかじめ想定した上でキャシュフローの管理をしなければなりません。
さらに追加しましょう。これまではすべて顧客先に「訪問すること」を前提にした「1対1」のコンサルティングの話でした。しかし、顧客に「来てもらう!」という運営スタイルも可能です。それに「1対N(多数)」の方法もあります。2020年以降は、コロナの影響もあり、オンラインだけでもOKというスタイルも定着してきたので、訪問する必要がなくなってきました。
なお、同じことを皆で学ぶ「勉強会」「研究会」のような場であれば「1対N(多数)」の運営スタイルが可能ですが、本来、守秘義務を伴うはずのコンサルティングを「1対N(多数)」で行うことはちょっとおかしいのでは? でも、「勉強会」「研修会」などとは表現せずに、「グループコンサルティング」と「コンサルティング」などという表現が使われているのです。
このようにグループ型のスタイルで、個人事業主や年間の売上規模1~2億円までの経営者を対象に、効率的に「1対N(多数)」で高額講座を運営することも可能です。だだし、顧客の事業規模が大きくなると「1対N(多数)」の運営は個人コンサルタントの身分として、かなり難しくなります。だから、「1対N」のコンサルに関しては、個人事業主のような人が対象となるのです。
以上、長くなりましたが、これまで述べたことを踏まえた上で、経営コンサルタントとして自分の事業の戦略を検討しましょう。徹底的によく検討すれば、遠回りする可能性が低くなります。後に300万円、500万円、700万円という大金を失わずに済みます。遠回りしてしまう人が多いのは、戦略が曖昧なまま「ツールありき」「戦術ありき」の発想になってしまうからです。そうなると、いつまでも試行錯誤が続いてしまいます。
「ブログは書いた方がいいかな?」「やはり出版して…」などと「ツールありき」「戦術ありき」の発想になるのではなく、先にご自身の事業の戦略をかなり真剣に、少し時間を掛けてでも考える必要があるのです。その上で、「何をするべきか?」「何を止めるべきか?」を決めましょう。その後の細かいことは「走りながら決めていく」というスタンスでも良いのです。
お役に立ちましたでしょうか?
少し複雑に感じられたかもしせまんせんが、前述の内容をよく検討することが重要となります。忘れてはならないのは、単価を高く設定すると、顧客獲得のコストも上昇するということ。しかも、対象エリアを広げなければなりません。
一方、安価にすれば案件の獲得は容易になります。しかし、数多く獲得しなければそれなりの売上に達しません。
果たしてあなたの場合はどうしたら良いでしょうか?
「QAセッション」には続きがあります。
なお、「1対1」のコンサルティングである『独立経営コンサルタントの今すぐ改革』に少しでもご興味があれば、こちらをクリックして内容をご確認ください。