【特別レポート001】

年間売上10億円規模の中小企業向け

勝てる(新規)事業の戦略とマーケティング
~一刻も早く試行錯誤から抜け出して躍進する~

【パート3】
成功の鍵は事前準備にあり! 戦略シナリオ作成前に考えるべきこと

先のパートでは「明確化」の重要性について説明しましたが、ビジネスにおいて、個別の取り組みが孤立していてはダメです。事業全体をつの大きなシステムとして捉え、個々の取り組みが有機的に連動して機能するように、プロセス(仕事のやり方)を設計する必要があります。各取り組み(●●活動、HPの制作、販促物の作成など)は、ビジョンや戦略にリンクすることで、ビジョン実現に向けた取り組みとして機能しなければなりません。

ビジョンの確認

一般企業(特に中小企業)の経営サイクルは、ピラミッド型の図で表現することができます。 

経営はビジョンに基づいて展開されます。ここでいう「ビジョン」とは、将来に向けた挑戦的な目標であり、経営トップの想いでもあります。「ビジョン」という言葉はわかりにくいかもしれません。よりわかりやすく言い換えると、「あるべき姿」です。 

次に、ビジョンを踏まえて戦略を策定します。戦略とは、企業が将来に向けて掲げた「あるべき姿」を実現するために必要な課題や対策、ロジックです。これについては、後ほど詳しく説明します。

つまり、ビジョンに向かって進むために、何をすべきかを明確にする必要があるのです。

ビジョンを実現するためには、まず「戦略」を策定し、その後、「計画」を立案し実行していく必要があります。そして、実行した結果を「管理」することで、経営の継続的な改善につなげます。これらの一連の業務は、日常業務によって支えられているのです。

なお、このセクションのタイトルは「ビジョンの確認」となっていますが、実際にはビジョンを「確定」する必要はありません。「仮のもの」で十分です。ビジネスモデルが最終的に決まるまでは、ビジョンが変化する可能性があるためです。そのため、ビジョンに力を入れすぎず、拘りすぎない方が良いでしょう。競合分析などを行った結果、ビジョンがすっかり変わってしまう可能性すらあるのです。ですので、柔軟に対応することが重要です。

とはいえ、壮大なビジョンを持つことは非常に重要であり、戦略プロセス経営実践会ではそのようなビジョン実現のお手伝いを行っています。後に説明する戦略策定のポイントを踏まえ、ビジョンを策定していただくことが望ましいです。そのためにも、「わが社は、本当は何をしようとしているのか?」「どうなりたいのか?」「マーケティングはどのように展開するか?」といったことを想定し、ビジョンを検討することが重要です。

事業活動はプロセス、事業全体は1つのプロセス

​さて、ここでお伝えしたいのは、マーケティングを含む事業活動全体が、プロセスから構成されているということです。 

私は「プロセス」という概念の重要性を、アメリカでMBAを取得した直後に就職したGE(ゼネラル・エレクトリック)社のプロジェクトを通じて学びました。 

以下は、戦略プロセス経営実践会のウェブサイト(https://www.strategic-process.jp)からの引用となります。経営者向けのコラムから一部紹介します。

ーーーーーー

私たちが朝起きてから出勤するまでの毎日の活動は、図に示すようにプロセスから構成されています。 

人によって順番が前後するかもしれませんが、目覚めてから家を出るまでの活動は、「1.起床 → 2.洗顔・整髪 → 3.朝食 → 4.トイレ → 5.歯磨き → 6.着替え → 7.出発」など、大きく7つのプロセスに分けることができます。中には、起きてから何も口にしないまま家を出るために「朝食」というプロセスが省略される人もいるでしょう。また、トイレが朝食前になる、あるいは出発までに2回、3回とトイレを利用する人がいるかもしれません。 

とにかく、お伝えしたいのは、このように朝起きてから出勤するまでの一連の活動をプロセスとして捉えることができるということです。 

同様に、私たちの事業活動についてもプロセスとして捉えることができます。私が初めて「事業活動をプロセスとして捉える」という概念を学んだのは、GEで「仕事のやり方」を見直す目的で業務のプロセス化に取り組んだ時でした。この「プロセスとして捉える」というアプローチは、これまで主にITや製造業で用いられてきましたが、他の部門の活動についても同様にプロセスとして捉えることができます。以下、少し詳しく説明します。

例:「あるべき姿」への到達に向けて

例えば、戦略プロセス経営実践会では、「ビジョン実現」に向けて、自社の強みを活かしながら、どのように事業を展開すべきかという「戦略」や、それを実行するためのプロセスを明確化した事業構築を支援しています。

「ビジョン達成・実現」という目標にたどり着くまでには、当然ながらプロセス(道のり)があります。そのため、具体的な取り組みについては後に説明しますが、ビジョン実現までのプロセスを見渡し、必要な中間目標などを設定しながら全体プロセスを設計していくことが重要です。 

同様に、マーケティングの取り組みについても一連の業務プロセスとして捉えることができます。マーケティングは、チラシを配る、広告を出す、展示会に出展するなどの単発イベントを繰り返す活動になりがちです。しかし、東京ビッグサイトで開催される展示会に出展することやホームページを立ち上げることだけではないのです。

さらに、単発イベントの結果に一喜一憂して、「A」がダメなら「B」、「B」でもダメなら「C」と試行錯誤を続けることは避けるべきです。そうではなく、目標を明確にし、その達成に向けたプロセスを確立する必要があります。自社の業務がプロセスとして明確化されているということは、業務が可視化されていることを意味します。 

業務が可視化されると、問題解決の方法が明確になります。課題に対して、直感や推測に頼るのではなく、ロジックを組んで問題を解決できるようになります。これにより、大きなメリットを得ることができます。

プロセスとして捉える

事業においては、全体像を見ることが重要ですが、それはプロセスとして捉え、可視化することによって可能となります。 

例えば、仕事のやり方をプロセスマップに描き出すことで、顧客に対して価値を提供している活動(プロセス)はどれか、あるいは逆にやってもやらなくても顧客にはあまり影響のない活動(プロセス)はどれかなどの分析が容易になります。

また、業務のプロセスを可視化することは、全社員が共通のコミュニケーションツールを使うことを意味します。共通のツールを通じて、人と人との間で業務手順の理解が深まります。 

もちろん、社内で、誰が、何を、どこで、いつ、どのように行うのかを示すこともできます。各人および各部門で行われている仕事の手順と活動内容を体系的に定義できるようになるのです。そして、現在の仕事のやり方を再認識できるようになるので、カイゼンに向けたアクションが容易になります。 

プロセスの可視化によって、従業員の仕事の効率を高め、コスト削減につながります。不必要な仕事を排除し、価値を生まない仕事のやり方を変更できるようになります。

このようにビジョンの実現や事業の構築(最適化)を目指すためにも、事業活動をプロセスとして捉えることが第一歩となります。先に述べたように、マーケティングの取り組みについても一連のプロセスとして捉えることで、さまざまな改善が可能になります。

具体的には、カイゼンの取り組みを行うにあたり、まずは目標を明確にすることが重要です。そして、目標が達成されたと言える結果がどのようなものであり、そのために必要なプロセスやインプットについて検討する必要があります。

とにかく、会社の事業全体を1つの大きなシステムと捉えることも重要です。会社では、さまざまな作業(プロセス)によって付加価値が生まれ、アウトプットへと変換されますが、これらについては1つの大きなシステムであると考えることが必要です。

なお、プロセスとは、インプットされた「何か」をアウトプットの形に転換するために行われる一連のステップや活動などを意味します。つまり、「インプット→プロセス→アウトプット」という流れになります。インプットに対してプロセスという過程を通じて価値が付加され、転換されてアウトプットとなります。もちろん、従業員だけではなく、外部委託者なども「インプット→プロセス→アウトプット」という一連のステップや活動に参加・協力していることになります。

繰り返しますが、事業は、企業の業績に影響する小さなプロセスが多数の部署で行われ、それらが集まって価値を生み出す大きな1つのシステムであると考えてみることです。事業全体が1つの大きなシステムによって回っていると捉えるのです。さらに追加しますが、事業にはさまざまな約束、状況、物事などが存在します。

だから成り行き任せでは、目標に到達することができません。そこで、事業のあらゆる要素がどうやって一体となって機能しているかを理解した上で、体系的にシステムを構築することが求められます。目標達成に向けて自社のシステムをちゃんと構築することが必要なのです。しかも初めは「優れた」プロセス(あるいはシステム)だったものも、時間の経過とともに劣化することがあります。

以前より効果的でなくなったりするのです。かつてその組織に適していたプロセスは、時間の経過とともに適さなくなります。そこで、常に状況を把握し、持続的かつ自発的にカイゼンを行うことが必要です。このようなことを踏まえた上で、事業のシステムを設計することが重要です。詳しくは後に説明します。

KPIなど指標(メトリクス)の活用

戦略プロセス経営実践会では、「事業は、11つがつながりあって動くチェーンのような1つの大きなシステムである」と捉えています。この意味が少しずつ理解できてきたのではないでしょうか?

さて、もう1つ重要なことがあります。それは、業績を評価するためには指標を持つことが必要であるということです。メトリクスとも呼ばれる指標の中でも最もよく知られたものがKPIではないでしょうか。

KPIKey Performance Indicatorの略で、日本語では「重要業績指標」と訳されます。目標達成の過程を測定するための中間目標としても使われます。今では、国の政策目標値にKPIという表現が使われることもあります。例えば、「2030年までに○○の市場規模を100億円にする!」といった具合です。

KPIのような指標を活用することで、自社の業績に関して、目標に向かって何をしているか、目標に照らした業績はどうあるべきかについて認識することが非常に重要です。例えば、顧客獲得の費用は上がっているか、それとも下がっているか、またリピート状況はどうなっているか、といった実態を物語る数字の把握が必須であり、その数字から起きている変化の判断が可能になります。

的確な数字を持っていなければ、自社の業績を把握して必要な判断を素早く正しく下すことができません。的確な数字は、状況を理解し、意思決定し、より早く行動することに役立ちます。キーとなる数字を把握していれば、意思決定プロセスが楽にできるようになり、その判断も的確になります。

KPIや指標(メトリクス)の活用については、後で改めて説明します。

こちらのパートはいかがでしたか?

全12パートから構成されるこのレポートを丁寧に読むことで、中小企業が事業を立ち上げる際の考え方や、「何から始め、どのように進めるべきか」という点について、大企業やベンチャーとは異なる視点で理解が深まるはずです。

ただし、ご自身の事業に対する具体的な疑問、「私たちのビジネスにはどのように当てはめるべきか?」が生じるかもしれません。このような疑問にお応えするために、当会では「オンライン相談・診断サービス」をご用意しています。詳細は後のパートでもお知らせする予定ですので、ご関心がある方はぜひご検討ください。

現代では学び方にも多様性があり、「本を読む」以外にもオンラインでの学習が広く受け入れられています。確かに一部の講座では1時間3〜5万円という高価な料金設定も見られますが、多くは「役立つ情報だった」という感想で終わることが多いです。私も2022年に8.8万円する90分のオーディオ講座を購入しましたが、内容はすでに知っているものでした。結局は最後まで聞かずに断念しました。

情報を得ること自体は価値がありますが、何を行うべきかが不明瞭だとその情報は無駄に終わってしまいます。情報収集後に具体的なアクションへと移すことができなければ、その情報はただの情報に過ぎません。重要なのは「自分(自社)にとって何が必要か」を明確にし、それに基づいて行動に移すことです。

パソコン|モバイル
ページトップに戻る