戦略とプロセスを明確化した事業デザイン:
自らに選択肢があることを知りながら「できない」を「できる」に!
ビジネスでは出版という集客方法が注目されています。でも「本を出して知名度を高めた方が良い!」という甘い勧誘に飛びつくべきではないのです。
日本では1年間にどのくらいの書籍が出版されているかご存知ですか?
年間の出版点数は、およそ8万点前後です。その中には、広告手段として事業者が本を出版するケースが多くあります。
例えば、健康食品業界では広告規制が厳しいので、新聞や雑誌に「この商品にはガンに効果があります!」などと露骨に表現することができません。そこで本を出版する「バイブル商法」が以前から行われていました。
これは書籍を通じて自社製品の効果効能をアピールする方法です。
同様に、経営コンサルタントをはじめ○○コンサルタントの方が自身を売り出す際に出版という手法を活用します。だからビジネス本の多くは広告手段として化しています。
ところが「出版しても売れない!」というケースが少なくありません。これは本が売れないということではなく「せっかく出版したのに事業にはプラスの影響がない!」ということです。
経営コンサルタントの中には、出版するだけでは本が売れないので新聞に広告を出す方がいます。多いのが2面、3面に掲載する半5段の広告です。チェックしていただければわかりますが、日本経済新聞の2面や3面にはビジネス書籍の広告が毎日のように掲載されています。
発行部数が数十万部の地方新聞であれば数十万円も出せば半5段の広告が掲載できます。全国紙と呼ばれる日経新聞への出稿料は(発行部数が多いために)とても高額です。
自費出版と書籍広告の費用を合わせると少なくても400~500万円以上もの出費となります。そこまで大金を投入しても、上手くいかない人が少なくないのです。
原因は2つあります。
1つは「戦略シナリオ」がないからです。
つまり、「どこから、どうやって見込み客を集めてくるのか?」
「集めてきた見込み客は、どの時点で、どうようにして、次にどの製品・サービスへ誘導するのか?」
「そこにはどのくらいの費用が掛かり、その費用はどの時点で、どのようにして回収するのか?」
実は、このような「戦略シナリオ」を上手く設計し、検証を繰り返すことが重要です。これができていないまま出版すると痛い目に遭います。出版することが目的化し、博打となってしまいます。しかも失敗した時の損失が(個人レベルでは)大きすぎるのです。
出版は見込み客を集めてくることに貢献します。しかし集めた見込み客には「次に進んでもらう道」をあらかじめ用意しなければなりません。「次はこっちだよ!」と動線を用意してあげる(導線をあからじめ用意する)のです。
「獲得した見込み客が用意した通りに進んでくれるかどうか?」
これについても検証しなければなりません。
先に述べた通り出版には大きな投資が必要です。1度失敗すると数百万円以上を失うことになります。「戦略シナリオ」が上手くできていないまま出版することを急ぐと「出版すること」が目的化します。そして「大金を投じたが、まるで回収できない!」というトラップに引っ掛かるのです。特に出版に不慣れな人の場合は高リスクです。
ところで、初めての原稿で新聞広告を出す際は、いきなり高額な全国紙に掲載しません。まずは料金の安い地方紙などで試すのです。そして「この原稿なら上手くいく!」ことを検証してから高額な全国紙へと広告を展開します。これが賢いやり方です。
これと同じように「本を通じて集めた見込み客に対しては、次にこの方法で引き上げる!」というプロセスを先に確立させておくが重要なのです。
集客の「戦略シナリオ」をあらかじめ描いておくことです。シナリオを描き、そこに出版という手法をどのように位置づけるか? これがとても重要なのです。
「テレビに出れば売れる(注文がくる)!」「メディアへの露出は大きな武器になる」と考える人は少なくないようです。確かにメディアのパンチ力は大きいです。
ところが「戦略シナリオ」がないままメディアに露出しても、一発花火で終わってしまいがちです。一発花火ということは、一度だけ注文がドカドカと来るが、その後はさっぱりという結果になることです。
これではメディアへの露出を最大限に活かすことができません。
実はメディアへの露出を最大限に活かすためには、戦略的PR・広報という視点が不可欠です。戦略的広報を自社の「戦略シナリオの設計」の一環として上手く位置づけることです。
別の言い方をすれば、戦略的PR・広報という取り組みを自社の事業戦略へ包含させることです。事業戦略と一体化させるのです。
この詳細については「戦略的PR・広報の強化」のページを参考にしてみてください。
新しいシステム(モノ)に飛びついても上手くいかないケースが多いのです。
私、関口は介護分野へのロボットの普及についても支援していますが、普及には時間が掛かっており様々な課題が指摘されています。
前々から「高い!」「使い勝手が悪い!」などと指摘され続けてきました。
介護分野へのロボット導入支援の業務を通じて痛感することは、新しいロボット(モノ)を導入すれば、良い結果が出る(課題が解決する)わけではないということ。
同様に、操作方法を習得すればOK(課題が解決する)というわけではないのです。
もちろん「このロボットは良い」と評価されるケースも数多くあります。局所的なメリットだけに注目すれば「これは良い!」となっても、長期的な視点から見たメリットではないのです。目先の課題解決にしかなっていないはずです。
原因はこれまでに紹介した事例と同様に、「戦略シナリオ」ができていないからです。
「高い」「機能面がまだイマイチ」「コンパクトではなく、使い勝手が悪い!」「メーカーのサポートが限定的」…。
このようにユーザーのメーカー側への要求はさまざまですが、導入する側の努力も非常に重要なのです。
「現状」と「あるべき姿」を描くこともなく、短絡的な理由から導入へ向かってしまうことが問題なのです。これは、いきなり「飛びついてしまう」ということです。
「戦略シナリオ」が描かれていないと、現状の把握が不十分であり、長期的に進むべき方向曖昧なのです。このような場合における導入は時間の経過とともに頓挫しがちです。
一般企業が生産管理システム、PRAなど新しいモノ(ツール)を導入する際にも全く同じ問題に直面します。
ロボットに限らず、ICT機器、○○システム、それにホームページやフェイスブックのようなツールを含め、新しいモノを導入するに際し、あらかじめ「戦略シナリオ」を描いた上で経営視点で戦略的に導入・活用した方が断然良いのです。
逆にそうしないと「導入すること」「立ち上げること」「使うこと」「操作方法を覚えること」「使う回数を増やすこと」などが目的となってしまいます。これでは事業の方向性を見失いがちです。
「本当は何のためにやっているのか?」という根源的なニーズや方向性などを曖昧にしたままだと、進んでいく途中で迷走し始める原因になるのです。
素晴らしい製品を導入しても必ずしも売れるわけではありません。売れた(買ってくれた)としても、必ずしも活用されるわけでもないのです。
先に述べた介護分野へのロボット導入支援の業務を通じて、別途、痛感したことがあります。
それは「この製品には、こういう機能があります!」「この製品はこのように操作して使います!」「こういうシーンで活用できます!」などと必要な説明を一通り済ませても、ユーザーには活用されないケースが少なくないということです。
導入当初は良くても、少し時間が経過すると活用されなくなってしまうケースが少なくありません。
「これなら良いじゃないか?」と判断してもらったはずなのに…。
これについては、ユーザー側とのリテラシーの差だけではなく、上の「新しいシステム(モノ)を導入しても上手くいかない」欄に述べたような問題が影響しているからです。
販売事業者には、単にモノを提供するだけではなく、自社のマーケティング活動の一環として「顧客を育成する」という視点で「戦略シナリオ」が求められるのです。
国や自治体にはさまざまな支援制度があり非常にありがたいものです。ところが足かせにもなることが多々あります。
お金を振り込んでくれるだけの支援であれば何も厄介なことはないのですが、国や自治体の支援には口出しがあることも。
「ああした方がいい」「こうしないとダメだ!」「こうすれば売れるはずだ」と…。
このような発言が、自治体やその外郭団体(支援機関)の職員から飛んでくることがあります。そんな彼らは大きな組織の看板に守られて仕事をしています。限られた予算で自ら集客などしたこともなく、経営(事業)の大変さなどよくわかっていない担当者が多くを占めています。
また、国や自治体の事業では実績づくりをしようとします。だから支援の押し売りのようなアプローチをしてくることがあります。
「料金はダタだし…」と安易に支援を受け入れてしまうと、翻弄させるだけかもしれません。
このケースでも先と同様に自社に「戦略シナリオ」がないことが問題です。あらかじめ「戦略シナリオ」が明確になっていれば、事業を展開していく上で、「国や自治体事業とは、どの領域で、どのような関わりを持つべきか?」ということが明確になってくるのです。
戦略が自社のスタンス(取るべき態度)がハッキリさせてくれるのです。
ところが「戦略シナリオ」がないと、自治体職員らの言動に翻弄されてしまいます。「本当の目的は何か?」という本質を見失ったまま、自治体や支援機関の意向に「てんやわんや」させられてしまうかもしれません。
これではいつまで経っても独り立ちできないまま。支援(補助金)の終了とともに死に体となってしまいます。
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