【新 特別レポート】は20のパート(ページ)で構成されています。
このレポートの最大の目的は、「区別する力」「分ける能力」を身に付けていただくことです。ひとりコンサルタントを取り巻く市場環境を理解することで、ご自身が選択すべき道について整理できるようになります。「どうすれば自分が売れるのか?」が見えてくるのです。
ひとり社長の経営コンサルタント向けの市場環境は、2010年頃と比べて激変しました。激変した要因についていくつかのキーワードがあるので先にお知らせします。それらは「働き方の多様化」「リモートの普及」「副業の解禁」「デジタルワークプレイス」「従業員シェア」「ギグワーク」などです。
文章が長くなるのでここでは一つ一つの用語の説明は省きますが、特に大きな影響を与えたのが新型コロナウイルス感染症拡大防止対策による社会の変化です。
コロナの影響による大きな変化は、ひとり社長の経営コンサルタントの仕事にどのような影響を与えたのでしょうか? 今後はどのように変わっていくのでしょうか?
これについては一言で表現すると、良くも悪くも「選択肢が広がる」ことになります。
まず、コンサルタントを使う企業経営者の立場で考えてみましょう。経営者には選択肢が大きく広がりました。以前であれば、何かの問題に直面し、自社の社員では対応できないと判断した際には、身近な人物を助っ人として選んでいました。
身近な人物とは、日頃からお付き合いのある銀行の営業担当や顧問税理士などから紹介された人だったかもしれません。あるいは、たまたまセミナーに参加した際に名刺交換した講師役の人(コンサルタント)だったかもしれません。
とにかく限られた選択肢しかありませんでした。しかも、「自社に来てもらう」という支援方法が大前提だったので地理的な制約がありました。無意識ながらも近くにいる人を選んでいたのです。一部の例外を除き、遠方からはるばる来てもらうという発想はなかったのです。
それは買い物と同じです。インターネットがない時代は、近所の店で購入することが当たり前でした。情報が少なく選択肢が限定されていたからです。ところがインターネットの普及によって自分のこだわりのモノを遠方から取り寄せられるようになり、「買い物」のあり方が大きく変わりました。
ひとりコンサルタントを取り巻く市場環境についても、2010年くらいと比べても大きく変わりました。副業人材、ランサーズのようなクラウドソーシングのサービス、それに顧問名鑑のような顧問サービスなどが台頭してきたからです。
先述の通り、以前なら「社外に助っ人を求めなければ…」と思ったら、社内の誰かに第三者を紹介してもらう以外の手段として、1)取引先に紹介してもらう、2)公的機関に相談に行く、あるいは、3)たまたま見つけた(出会った)コンサルタントを利用するより他に選択肢がなかったのです。これが10年くらいの間に一変し、コロナ騒動の影響で変化のスピードが速まりました。
今、経営者にはいろいろな選択肢があります。料金が高めなコンサルタントの活用という手段を選択するよりも、ちょっとした仕事であればクラウドソーシングのプラットフォームを活用した方が安価に、しかも迅速に問題が解決します。案件をネット上の掲示板に掲載し、一晩も待てば10人以上ものフリーランスや副業人材が応募してくるからです。ビザスクのようなスポットコンサルのクラウドソーシングのサービスもあります。
副業人材と地方の企業のマッチングを支援する会社も増えてきました。副業人材については、大都市で働くビジネスパーソンを「副業人材」として地方企業に橋渡しする自治体の取り組みが活発化しています。例えば、大都市圏で働く副業希望者と地方の中小企業をつなぐ役割を期待されている「プロフェッショナル人材戦略拠点(プロ人材拠点)」があります。今では国を挙げて副業人材の活用を推進しているのです。
私は、市場の変化を知るために人材募集の案件によく目を通しますが、副業人材の募集案件をよくチェックすると「以前はコンサル会社と契約していたが、高い割に…」などという記載をよく目にします。もしかしたら副業人材の紹介会社がそのように記載するよう求人企業側にすすめているのかもしれません。コンサルタントとの契約を、副業人材の活用へとスイッチすれば同じ質の人材にも関わらず、費用は半分以下で済むことは確かです。
ハッキリしていることは、今の経営者には、いくつもの手段があり、多数の候補者の中から「ベストだ」と判断した人を選べるようになったということです。
また、他にも大きな変化があります。以前ならコンサルタントと契約したら「会社に来てもらう」ということが前提でしたが、これからは来てもらう必要性がなくなりました。デジタルワークプレイスの時代が本格化したからです。でも、そうなると以前のように、遠方から新幹線に乗ってわざわざ来てくれたことに対して払っていた「月1回の訪問で25万円」という料金に対して「高い!」と疑問を抱くようになるでしょう。
結局のところ、私が自分のホームページに掲載した『コンサルタント、顧問、副業人材の間に何が起きている?』と題したコラムの中で指摘した通り、コンサルタント、顧問、副業人材などの垣根が大きく崩れてきました。
今では国を挙げて副業を推進しています。一昔前であれば、サラリーマンはサラリーマンとして勤務先の仕事をすることだけが許されました。それが今では「外の企業で副業してください」「もっとヨソの世界で経験を積んでください」という動きが加速化しています。その結果、大手企業などで働くビジネスパーソンが副業人材として中小企業の支援に乗り出してきたのです。
つまり、「会社勤めのサラリーマン」がひとりコンサルタントの業務を(悪く表現すれば)奪うようになったのです。「サラリーマン」と「独立した者」との間にあった垣根が大きく崩れてきたのです。「棲み分け」が曖昧になってしまったのです。
ひとりコンサルタントの場合、リソースは自分だけ。ちょっとしたコンサル会社と比べても「できること」「対応力」が異なります。複数のコンサルタントを送り出す、あるいは、プロジェクトを丸ごと引き受けることは、ひとり社長の経営コンサルタントにはできません。リソースは自分だけですから。
だから、うまく差別化しないと、副業人材やクラウドソーシングのサービスに登録している人たちと、簡単に比較されてしまうことになります。
しかも、クラウドソーシングのサービスは毎年進化しています。企業側が多数の登録者の中から自社に相応しい人を探すという面倒なことをしていたのはもう過去の話。今ではAIを活用すればベストな候補者を絞り込んでくれます。
また、地理的な制約がなくなりつつあります。だから、「選ぶ側の経営者」は地元の人や近くの人を選ぶ必要はもうないのです。日本に住んでいる人を選ぶ必要すらないのです。繰り返しますが、このような変化がコロナ禍に一気に進み、あっという間に市場環境が激変したのです。
以前の経営者には選択肢が限られていたので、困った際にいきなり(たまたま誰かに紹介された)コンサルタントを選んでいたケースもあったはずです。ところが、今の彼らには多くの選択肢(サービス)があり、それらを必要に応じて使い分けられるようになりました。今後は、企業支援(コンサルティング)を専業でやっているような人よりも、業界の最新情報やネットワークを有している大手企業の副業人材に支援してもらった方が「良い」「信用できる」「しかも安い」などと判断する経営者が増えていくはずです。
仮にいくつもの選択肢の中からコンサルタントの活用を選んだとしても、以前のような「月に1回、数時間ほどリアルで対面して」という関わり方は変わっていくはずです。月に20万円、30万円も請求するのであれば、月1回の対面アドバイスの提供だけでは済まされず、業務の一部をリモートで担当することが一般化していくことでしょう。SlackやTeamsといったチャットツールで日常的にコミュニケーションを取る必要も出てきました。
つまり、副業人材と同じような扱いになっていくということ。このように垣根が大きく崩れていく動きは今後、ますます加速化していくはずです。
次に、このような市場環境の激変についてコンサルタントの立場で考えてみましょう。以前であれば、「地理的な制約」がコンサルタント側に有利に働くことがありました。
例えば、都市部から離れた地域密着型のコンサルタントの場合、都市部のコンサルタントと競争しなくても済みました。ところが、オンラインによる支援が普及すると、地理的な制約がなくなってしまいます。
これは地理的な制約から得られた優位性を失うことを意味します。
ハッキリしていることは、今後、あなたは、自分のポジショニングを明確にし、競争優位性を高める努力をしない限り、多数の中のone of them(その中の一人)に成り下がってしまうということ。その理由はもうおわかりですね。
ところで、あなたはご自身のサービスについてどのくらいの料金設定を考えていますか? また、副業人材として働いた場合の報酬の相場を知っていますか? あなたと同じような支援テーマを扱っている人が、ビザスクのようなスポットコンサルのサービスでは、どのくらいの料金を請求しているか理解していますか?
こういったことを総合的に整理してみれば、今後、ひとり社長の経営コンサルタントの世界がどう変わっていくかが読めるようになるはずです。それは残念ながら「サービスがコモディティ化していく」ということ。高いコンサルタントの料金が、副業人材の報酬やクラウドソーシングの料金に引っ張られてしまう結果、下がっていく可能性が高いです。自分で勝手に高値を設定することは可能ですが、相手から選ばれなければ話になりません。
また、単純に比較されてしまうと、多数の中の一人に成り下がってしまいます。おまけに、AIとも競争しなければなりません。
ちなみに、2021年7月10日号の「週刊東洋経済」には「3000人近くが不足!過熱する社外取の奪い合い」と題した記事が掲載されました。記事には社外取締役の争奪戦が生じているとのことですが、知名度の高い人気のある人にはいくつものオファーがくるそうです。人気のある人とない人の差が大きく生じているのですが、これはどこの世界でも同じです。
何もしなくても年に10回、20回以上も講演の依頼が来る人がいる一方、呼ばれない人は5年、6年と時間が経過しても1回も登壇する機会がないのです。ひとり社長の経営コンサルタントの世界も同じです。人気のある人とない人の差が大きく生じていくということです。
また、改めて説明しますが、コンサルタントにとっての競合であり、最大の脅威として公的機関のサービスがあります。彼らは無料や超低額でサービスを提供します。それに加え、副業人材、クラウドソーシングのサービスに登録しているギグワーカーなどが増え続けています。
コンサルタント、副業人材、クラウドソーシン、顧問サービス、公的機関の無料サービスなどと多数の選択肢がある中、経営者にとってひとり社長のコンサルタントを活用することはもはや多数ある中の1つの選択肢にすぎないのです。
では、このように市場環境が激変していく中で、ひとり社長の経営コンサルタントはどうすれば良いのでしょうか? これについては、改めて説明します。
「セグメンテーション」や「ポジショニング」については理解していますか?
特に、「ポジショニング」がとても重要です。あなたが、ご自身を売り出すに際し、「ポジショニング」を意識した上で事業を展開した方が良いからです。
この「ポジショニング」の意識がないと、例えば「中小企業診断士」として自分を売り出すに際し、その他多数の人たち(診断士)と一緒になってしまいます。そうなると「料金」で比較されるだけです。
そこで、「セグメンテーション」や「ポジショニング」について、わかりやすい例を用いて少し説明します。
例えば、あなたが塾の先生であり、数学の専門だと仮定します。この場合、「私は数学の専門です!」と売り出したのではなかなか人に振り向いてもらえないでしょう。一見すると高校生・中学生・大学生と対象となる人は多くなりますが、競合が多すぎて埋もれてしまいます。
「やさしく数学や算数を教えます!」と工夫してもダメでしょう。また、「関口式の数学教室」などと名付けて売り出す人がいますが、これでは「関口式」という名称を認知してもらうことや他との違いを理解してもらうことが非常に大変です。コストや時間が掛かります。
経営コンサルタントの中には「独自の手法」や「オンリーワン」と称し、へんてこなネーミングで売り出そうとする人がいます。でも、それを認知してもらうのにコストが掛かりすぎてしまうケースが多いのです。というか、ひとりコンサルタントの身分ではそんなことにコストを掛けることは難しいはずです。
話は戻りますが、中学受験・高校受験・大学受験という学校区分で「セグメンテーション」することもできます。「中学受験の数学を教えます…」と主張すれば、セグメントが絞り込まれます。しかし、まだ十分ではありません。
そこで「麻布中学合格を目指す算数を教えます!」と主張すれば、対象となる人数は少なくなりますが、麻布中学の受験を考えている小3~6年生の子供を持つ親御さんの心には突き刺さるはずです。目に留まりやすくなります。これは合格を目指す学校別にセグメンテーションしたことになります。しかも算数に特化しているのです。
そして、ターゲットとなる「麻布中学を目指す小3~6年生の子供を持つ親御さん」の頭の中に「麻布を目指すなら算数は○○だ!」と認識されることが「ポジショニング」になります。別の言い方をすれば、顧客の頭の中における「あなたの存在」ということになるのです。