このレポートは独立コンサルタント向けと記載していますが、1人で活動する方だけでなく、1~8名規模の小さな事務所を経営されている税理士・社労士などの士業の方々にも役立つ内容を含んでいます。ぜひご活用ください。
独立した経営コンサルタントの事業戦略について、ここまでさまざまに解説してきましたが、ポイントはシンプルです。
市場の隙を見つけ出し、そこで自分の強みを発揮すること。その上で考えるべき本当に重要なことは、 「現状」と「理想の姿」 の2つに尽きます。
●「現状」を徹底的に把握する
「現状」とは今の状態です。
「課題を抱えている」「強みが活かされていない」「迷いが生じている」など、表現は人それぞれですが、まずは冷静に現状を直視することが欠かせません。
そのためには、自分自身(自社)の棚卸しが必要です。自分のキャリアやスキルを改めて整理し、「自分の強みは何か」を顧客理解と結びつけて考えることです。
ただし注意点があります。強みだと思っていることと、ターゲットが求めていることが合致しなければならないからです。
● 強みはターゲットによって変わる
例えば、私のキャリアである「アメリカでMBAを取得した」という点は、大手企業勤務の40代以上のサラリーマンからはプラスに評価されやすいものです。しかし、とんかつ屋の店主にとってはむしろ「ピンと来ない」「偉そうな奴だ」とマイナスに映ることすらあります。つまり、相手によって強みは変わるということです。
逆に、弱みだと思っていたことが強みに転じることもあります。私自身は転職回数が多いのですが、日本の昭和世代にとってはマイナスに受け止められる一方、中小企業経営者には「さまざまな現場を渡り歩き、経験が豊富」としてむしろプラスに評価されることが多々あるのです。
● 現場経験が「強み」に変わることもある
私は大手外資のGEで外資流の手法を学び、中小企業で事業責任者を務めた経験があります。その中小企業は倒産寸前まで追い込まれた後、メディアを逆に利用して大逆転した企業でした。
そんな中小企業で私は「大手では経験できない現場」を通じて、メディアの力を逆手に取る方法を実践的に学びました。
このような現場経験が「強み」となるケースは少なくありません。だからこそ、自分のキャリアについて「弱み」と決めつけず、顧客視点で整理し直すことが必要なのです。誰が「あなたの経験を評価してくれるのか?」ということをよく考えてみることです。
●「理想の姿」を明確に描く
もう一方の「理想の姿」とは、5年後、10年後、20年後に自分がどうなっていたいかという未来像です。単に「年収1億円を稼ぐ」といった金銭的な目標ではなく、「自分らしさをどう実現するか」 を基準に考えるべきです。
本当に大切にしたいことは何でしょうか?
「お金」だけではなく「自分らしさ」や「社会にどう貢献したいか」など、価値観を明確にすることが重要です。
● プライドに縛られた「理想像」では意味がない
長らく大企業で働いてきた人ほど、「理想の姿」を描けない場合があります。会社に守られてきたため、自分の本音に向き合ってこなかったからです。
「東大を出た」「●●社で部長まで出世した」「部下が200名いた」など、過去の肩書やプライドに縛られていると、本当にやりたいことを見失ってしまいます。独立後に成功するためには、そうしたプライドを一度横に置き、自分の理想を素直に描くことが大切ではないでしょうか。
● ギャップを埋める戦略シナリオを描く
「現状」と「理想の姿」の間には必ずギャップがあります。大きい場合もあれば、小さい場合もあります。しかもギャップは1つとは限らず、複数存在するのが普通です。
そのギャップをどう埋めていくのか。これを 「フェーズ1」「フェーズ2」「フェーズ3」 といった中長期のシナリオとして描くことが、コンサルタントとしての戦略になります。
安易に「2週間で300万円の契約が取れました」などといった事例(顧客の声)を信じ込むのではなく、自分に合ったシナリオを積み上げていくことが必要なのです。
戦略を考えるうえで私が強くすすめているのは、複線的な「絞りと集中」 です。ひとつの市場やテーマに集中するのは大事ですが、1つだけに依存すると失敗したときに振り出しに戻ってしまいます。
そこで「業界・業種 × テーマ」を複数持ち、それぞれに集中する。そして相互にシナジー効果を発揮できる形にする。これがリスク分散にもつながります。
● 実例:「介護ロボット経営実践会」
私自身は、「戦略プロセス経営実践会」とは別に「介護ロボット経営実践会」という屋号でも支援してきました。講演や執筆、メディア登場の実績も重ね、この分野で「一目置かれる存在」になることができました。
これは「業界・業種 × テーマ」を複数持ち、それらがシナジーを生み出した結果です。あなた自身も複線的に展開することで、新しい可能性に気づくはずです。
● 市場をセグメントで捉える
次に検討すべきは、どの市場を狙うかということです。私は説明のために、売上規模で市場を4つに区分しています。
それぞれのセグメントには特徴があり、狙う市場によってアプローチはまったく異なります。
➡ このページの後半を確認してみてください。
「現状」と「理想の姿」を明確にし、そのギャップを埋めるシナリオを描く。さらに複線的な「絞りと集中」でリスクを分散し、市場セグメントに応じた戦略をとる。
これが、独立コンサルタントとして生き残り、成長していくための基本戦略です。
中企業:(目安)年間売上30億円~数百億円
小企業:(目安)年間売上3‐5億円~30億円
零細・個人企業:(目安)年間売上3億円未満
「大企業」というセグメントがありますが、ここは個人の経営コンサルタントが狙うべきではありません。ほとんどの場合、相手にされず、大手コンサルティング会社との競合となるため、勝負にならないからです。
実際、大企業が「◯◯の件で…」と声をかければ、多くのコンサル会社が喜んでプロポーザルを提出してきます。私自身も依頼側として経験しましたが、最終的に選ばれるのは大手ばかりで、個人コンサルはほぼ対象外です。その理由は、体制や信用力の不足です。
ただし例外もあります。特別なコネを持つ場合や、大手がまだ手を出していない新規事業の領域では、個人コンサルでも入り込む余地があります。私も未知の分野に挑戦する大企業の案件を受けた経験がありました。
大企業は「共同体経営」と言えます。オーナー社長が即決する中小企業と異なり、多くの社員や階層が関わり、意思決定や契約に時間がかかります。実際に動くのは現場ではなく、取締役やプロジェクト室などのレベルが多いのも特徴です。
メリットもあります。ひとたび決まれば簡単に覆らず、値切られることも少ないため、契約が長期化しやすいのです。結果として安定的な売上が確保でき、広告やネットマーケティングに頼らずに済むようになります。
次に「中企業」です。大企業に近い規模から、小企業と変わらない規模まで幅広く存在します。
この層では、船井総研やNBCコンサルタンツなどの大手中小企業向けコンサルと競合するため、彼らが扱わないニッチ分野を狙う必要があります。そうでなければ苦戦は必至です。大企業と違い、社長が直接出てくるケースが増えるのも特徴です。
個人コンサルが最も狙いやすいのはこの層です。また、商工会議所や中小機構などの公的サービスが充実しており、多くの経営者がまずはそこを利用します。
そのため「月1回訪問で30万円」などという料金提示をすると驚かれるのが普通です。公的機関のサービスに慣れている経営者の場合、比較の基準がそちらに引っ張られてしまうからです。
ただし「公的機関が提供するサービスは古臭くて役に立たない」と感じている経営者も少なくありません。そうした層は、民間コンサルを頼る傾向が強く、狙いやすいターゲットになります。
最も数が多く、参入障壁が低いため競争が激しい層です。情報商材や高額塾などの販売で荒稼ぎするコンサルタントも多く、演出力があり、カリスマ性を持つ人に向いています。
一方で真面目なタイプは不利になりやすく、単価も低いのが現実です。ただし、市場が流動的な分だけチャンスもあり、オンライン講座やセミナーを組み合わせた形で活躍する余地もあります。
この市場では「1対多」の仕組みを作り、効率的に高額課金を実現するノウハウが重要になります。
お役に立ちましたか?
ここまでの内容を踏まえて、次の点はだいぶ輪郭が見えてきたでしょうか。
もし、いずれか一つでも不安や曖昧さが残っているようでしたら、ご相談ください。私は 士業・コンサル向けに『今すぐ改革』 というコンサルティングサービスを提供しています。実務に即して一緒に棚卸しと設計図づくりを行い、「現状 → 理想」間のギャップを埋める具体的な打ち手まで落とし込みます。
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