【経営コンサルタント034】 

2020年5月31日(日)

こんにちは。関口です。

今回のタイトルは、「コロナで完全に退場する独立経営コンサルタント」です。以前に掲載した「コロナで変わる独立経営コンサルタントの在り方」というコラムの続きの内容となります。

私は、前回のコラムの中で「中小企業の多くが行政の支援制度を利用するようになった」ことを述べました。コロナ禍で中小企業の多くが日本政策金融公庫や商工組合中央金庫など、政府系金融機関の特別融資や、タダで最大200万円もらえる持続化給付金の申請を行ったからです。

メディアで毎日のように大々的に報道されたこともあり、経営者の中で「持続化給付金って何?」という人は、もう少数派ではないでしょうか?

また、ものづくり補助金、持続化補助金、IT導入補助金など、以前からあった国の制度についてもコロナの影響で補助率がアップされる措置が講じられました。「そんな補助金があることも知らなかった」というような経営者でも、今回の一連の騒ぎで知ることになったのではないでしょうか?

このような制度を利用するためには、商工会議所、よろず支援拠点など、公的な支援機関との関わりが要求されます。なぜなら、制度の設計上、彼らが重要な役割を多少なりとも担うからです。例えば、持続化補助金では、申請書を郵送する前に、地元の商工会議所や商工会に経営計画書を提出し、確認書をもらうことが求められます。

コロナで行政の支援を利用し始めたことを機に、以前なら商工会議所やよろず支援拠点などと関わることに全く関心を示さなかった経営者が、彼らのサービスを利用しはじめたのです。その理由は、経営相談、研修、専門家の派遣など、さまざまなサービスが無料や格安料金で利用できることを知ったからです。

特別融資を受けるためには、彼らの支援・指導を事前に受けることが条件になっていることもあります。今回の融資・給付金・補助金の獲得をキッカケに、多くの中小企業が公的機関のサービスを活用するようになるはずです。

少し追加すれば、公的機関が提供する無料や格安なサービスの存在を知らなかったために、たまたまセミナーで知り合った経営コンサルタントに月1回の訪問支援で20万円を払っていたような経営者が「今思えば、あれは高かったかな?」などと思い始める、ということです。

実は、今でも見られますが、10~20年前にはよくあった事例があります。それは数万円くらいの料金でホームページの作成ツールを提供している業者が多数あることを知らないまま、ホームページの製作業者に100万円、150万円以上もの金額を支払っていた中小企業が多かったことです。悪い言い方をすれば、情報弱者のような経営者を対象にホームページの作成代行を高値で販売できたのです。

これと同じようなことが経営コンサルティングの世界でも起きていたわけです。公的機関が提供するサービスの存在を知らないまま、民間のコンサルタントに高いコンサルフィーを払っていた経営者が少なくなかったということ。ところが、今回のコロナ騒動を機に、経営者が安価なサービスの存在に気づき始めるはずです。

これが独立経営コンサルタントに大きな影響を与えると考えています。コロナの影響で多数の企業が資金繰りを強く意識するようになりました。今は緊急事態宣言が解除されましたが、数カ月後に再び営業自粛が繰り返される可能性は十分にあります。

不要不急の出費を控えたい気持ちが強い以上、殆どの経営者が高額なコンサルティングには手を出さなくなるはずです。しかも、公的機関が提供する格安サービスの存在を知るようになれば、何か困りごとがあれば、まず公的機関を頼るようになるでしょう。そこで満足が得られなかった場合に限り、民間のコンサルタントの利用を検討するという流れに変わっていくはずです。

ちなみに、「情報弱者のような経営者に対し、ホームページの作成代行を高値で販売できた」と述べましたが、似たようなことはどこの世界にも見られることです。経営コンサルタントの実態をよく知らない情報弱者のような起業家向けに「○○をやれば経営コンサルタントとして成功します!」というアプローチで売り出して稼ぐのも同じことです。

このように情報格差を利用して商売ができたのです。相手(顧客)が無知なために、高値でも売れたのです。無知なために高値で買わされても気付かなかったのです。でも今回、コロナの一件で多数の中小企業が公的支援のサービスを知り始めたことで、こういうケースが減っていくはずです。

では、これから独立コンサルタントはどうすれば良いのでしょうか?

要は、よろず支援拠点や商工会議所へ行けば、タダで支援してもらえることを承知の上で「月に20万円を払っても良いよ!」と思われるような魅力(価値)を契約(クライアント)先の企業に認めてもらう必要があります。

先にホームページの話をしましたが、なんとか管理システムなど、形のあるものを構築するコンサルティングなら問題ないはずです。目に見える「形のあるもの」を納品するからです。

また、組織の中に入り込んで、プロジェクトメンバーの一人として業務の一部を担い、組織を動かすような働き方なら良いでしょう。経営者が「自社にないノウハウを持っている人材を期間限定で活用する以上、仕方ない!」と判断するからです。

ところが、公的機関が提供するサービスと同じように月に1回、2時間ほど「ああしたほう良い」程度のアドバイスを提供するコンサルティングとなると、なかなか価値を見い出してもらえないはずです。価値は見い出してくれても「大金を払うまでの価値はない!」と判断されるはずです。

コンサルタントが分厚いレポートを提出すれば「形のあるもの」を用意したことになりますが、所詮それは情報を文字に変換したもの。そんなレポートよりも、実行することや成果を出すことの方が遥かに重要です。

いろいろな会社で仕事をしたことがある人ならお気づきかと思いますが、「ああしたほうが良い」ということは社長自身がよくわかっていても、それを実行に移すことが意外と難しいのです。社長一人の会社や社員が3~4人程度の会社であれば、社長が「よし、やろう!」と決断すれば、動きがはやいかもしれませんが、社員が何人もいると意外と難しいのです。

経営コンサルタントの中にはコロナの騒動でいち早く非対面のサービス(オンライン化)に変更した人が多数いました。しかし、スカイプなどを使った非対面型のコンサルティングは、個人事業主向けコンサルの世界で10年以上も前から一般的に行われていました。

今後、法人向けのコンサルについても非対面で行われることが普通になっていくはずです。すでに大手企業のプロジェクトなどは非対面で行われていますから。

そうなると地理的な制約がなくなることになります。例えば、東京在住の経営コンサルタントが、青森県弘前市にある中小企業の支援を行うことが可能になります。以前なら、2万円のコンサルフィーをもらうために、わざわざ東京から弘前市まで出向くコンサルタントはいかなったかもしれません。でもオンラインなら2万円でもOKという人が出てくるはず。

地理的な制約条件がなくなると、どういうことが起こるのでしょうか? 

何でも全国区での勝負となり、競争が激化することを意味します。また「関連性」がより重要になるはずです。買い物と同じです。インターネットがない時代は、近所の店で購入せざるを得ませんでした。情報が少なく選択肢が限定されていたのです。ところがネットの普及によって自分のこだわりのモノを遠方から取り寄せられるようになりました。

経営コンサルティングについても、より自社の業界を理解している、より自社の課題に近いテーマを専門に扱っているコンサルタントを利用するようになるはずです。つまり、こだわりのモノを遠方から取り寄せる行為と同じように、高いカネを払うなら、より自社の課題との関連性の高い専門分野のコンサルタントを選ぼうとするのです。一般的な内容であれば公的機関のサービスで十分なのです。

別の言い方をすれば、「売上倍増」「利益3倍」「市場シェアNO.1」などと、どの業界にも通用する汎用的で抽象的なスローガンで売り出したら、競争激化により顧客の獲得は今まで以上に苦労するようになるということ。これでは、本を出版し、それを広告出稿で広く宣伝しながら、興味を持った人に手をあげてもらうという、非常に集客コストが高く、リスキーな方法でも取らない限りいつまで経っても集客できないことになります。

逆に、移動時間が無くなったので上手くやれば「午前中に北海道の企業とプロジェクト会議を行い、午後から四国の会社と、そして16時に北陸の会社と打ち合わせ」と、個人事業主向けのコンサルと同じように、1日に複数の案件に対応することが可能となります。これなら、移動の無駄がなくなり効率性が良くなるので、多少なりとも単価を下げても売上がアップするはずです。

ところで、コロナの前から沈没していた経営コンサルタントは多かったのです。例えば、問い合わせがなく、個別相談に来る人もいない、自らセミナーを企画しても人が集まらず開催できないという人たちです。

集客できないまま同じ企画を3回、5回以上も繰り返しながら、経営者が集まってくることを期待している経営コンサルタントもいました。そのような人の場合、同じ見せ方で、同じ企画を繰り返す限り、上手くいくことはないはずです。

今後、コロナで一段と状況が厳しくなっていく中、地理的な制約条件がなくなっていくということを踏まえた上で、ご自身がどのセグメントで、どのように勝負するべきかをよく検討しなければなりません。オンライン化は手段の一つにすぎないのです。

さもないと、コロナで市場から完全に退場する独立経営コンサルタントになってしまいます。

コロナの影響で公的機関のポジションは増えていくでしょうが、自ら集客するタイプの経営コンサルタントには苦しい時代を迎えることになります。次はこちらへ。

上記の電子書籍に中にも書いた通りですが、多くの経営コンサルタントに私がおすすめしている方法があります。それは「業界×テーマ」で対象を絞ることです。「業界×テーマ」による絞りが2つ、3つあっても良いのです。複線的に活動するのです。

絞ればDMを出す際も、対象先が明確になります。今後、非対面のコンサルが一般化し、地理的な制約がなくなり、遠方からでも対応が可能となれば、対象をかなり絞っても一定数以上の潜在顧客にリーチできます。「業界×テーマ」で絞り、そこで存在感を示せれば、これからは地理的制約がなくなってくるので、全国から顧客を探し出すことができます。

ところが、「売上倍増」「利益3倍」「市場シェアNO.1」という売り出し方では、誰もが対象となりうる一方、テーマが抽象的です。これでは、マス媒体を活用しながら大きく露出しない限り、多数の競合の中に埋もれます。資金力が潤沢な相手と競争したら簡単に負けてしまいます。

繰り返しますが、相手(潜在顧客)がこちらの存在を目にした際に、「あっ、これはウチにピッタリだ!」と関連性を見い出してもらうことが非常に重要なのです。

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