【経営コンサルタント014】 

2018年8月1日(水)

経営コンサルタントについては、これまで何度もコラムの中で紹介しましたが、今回から少しビジネスモデル別にコンサルタントを検討していきます。

図1

まず図1を見てください。

経営コンサルタントのビジネスモデルを検討するために、縦と横2つの軸で考えてみます。縦軸は「売上規模」、横軸は「他人企画への依存度」とします。

縦軸の「売上規模」についてはわかりやすいはずです。経営コンサルタントがターゲットとする顧客の売上規模による違いです。私なりに次の通り4つのゾーンに分けてみました。

  1. 年間売上が数百億円以上ある:大企業
  2. 30億円~数百億円:中企業
  3. 1億円~30億円:小企業
  4. ~1億円:零細・個人企業

 

図2

上記の通り4つのゾーンに分けましたが、企業規模が大きい上へ行けば行くほど企業の数が少なくなります。その点を踏まえて、図1をわかりやすくしたのが図2です。

これを見ればわかる通り、「零細・個人事業」については非常に数が多い一方、企業規模が大きくなるほど数が限られます。また上へ行けば行くほど、経営者へのアプローチが難しくなります。

ちなみに、外資を含め大企業向けのコンサルティング会社では、大企業を対象にコンサルティングを行っています。また、中企業をターゲットに活動しているコンサルティング会社もあります。

ピラミッドの上の方の企業を対象にしたコンサルティングは規模が大きく有名なコンサルティング会社に占められてしまうので、1~3名でやっているコンサルティング会社のターゲットは自ずと小企業や零細・個人事業になるはずです。中企業の一部も含まれるかもしれません。

また、もう1つの横軸に使った「他人企画への依存度」については、「コンサルタントの営業・マーケティング戦略」など、コラムの中で何度か説明しました。これは経営コンサルタントの仕事の獲得方法による違いとなります。顧客の獲得が「他人の企画に便乗する方法か?」あるいは「自らの企画にこの指とまれか?」との違いとなります。

なお、公的支援機関などから仕事案件をもらう「他人企画への依存度」が高い人は、「仕事が増えても稼げない!」ということを「経営コンサルタントの見分け方2」で説明しました。その理由は公的支援機関では公費を投入して企業の経営支援を行っており、経営コンサルタントへ支払う謝金が少ないからです。しかしながら「この指とまれ!」式で集客することは大変です。だから多くの経営コンサルタントが他人企画に依存した働き方を選択しているのが現実なのです。

 

ところで、私が提供する事業支援サービスの料金は良心的だと考えていますが、経営コンサルタントの中には1回2時間程度の訪問で30万円以上もの高額を請求する人がいますから(本当にその価格でコンサル案件が取れているかどうかはわかりませんが…)。

われわれに与えられた時間は1日24時間とみな同じです。公的機関にアドバイザーとして勤務する場合、どこも1日2.5万円程度の謝金なので30万円を稼ぎ出すためには、週3回勤務だと4週間もの我慢が必要です。なんと丸1カ月も掛かるのです。

このような単価の違いが稼ぎの差となります。だから「経営コンサルタントの見分け方2」で述べた通り、経営コンサルタントとして上手くやっている人に共通していることの1つは「この指とまれ!」式で顧客集めができるということです。つまり、他人の企画に便乗させてもらうのではなく、自らの力で顧客集め、単価をコントロールできるのです。

本日はその中でも「リスト活用・情報商材型」と、私が勝手に名付けた方法で活動している人たちを見てみましょう。この人達は図3に示した通り、零細・個人事業の経営者を対象に活動しています。

図3

この人達のやり方は「会員制ビジネス型」と言い換えることができます。また「リスト活用・情報商材型」と書いたのは、もともと情報商材ビジネスで成功した人に多く見られる方法だから。情報商材の販売手法と同じことを行っているのです。

インターネットを非常に上手に駆使する彼らは、メルマガ登録などの手段で多くの顧客(見込み客)リストを集め、そのリストに対して次から次へと新しいモノやサービスを案内するビジネスモデルを展開します。ネットビジネスのつわ者コンサルタントなのです。

つい10年くらい前までは、PDFファイルや講演・セミナーを収録したCDなどを高額で販売する方法がメインでした。それが今では多様化しています。ある時はコピーライティングを教える○○講座かもしれません。ある時はコンサルタント養成○○講座を案内し、時には東京都内のホテルで会員限定の○○セミナーを開催したりします。

また広告枠の提供と同じことですが、提携先(ジョイント・ベンチャー先)の仲間にサービスを巧みに売り込ませる機会を与えることもあります。

そんな彼らは一般的な経営コンサルタントとは、何かと大きく異なります。特徴をいくつか紹介します。

リスト活用・情報商材型」で上手くやっている人達は、インターネットを駆使し、人を組織化・会員化させて、彼らに対してカリスマや教祖のような立場でメッセージを次から次へと発信します。

基本的に、宗教の教祖やネットワークマーケティング組織のトップの如く、巧みな方法で存在感を打ち出すことに長けているのです。まさに「会員制ビジネス」です。

「スゴイ!」というイメージを醸し出すために、人によってはフェラーリやランボルギーニなどの高級車に乗っている姿や海外のビーチリゾートで仲間を集めてカクテルパーティに興じている写真などを公開するかもしれません。

また会員を集めた○○会のイベント会場では花束贈呈の様子を写真に収めて華やかさを演出するかもしれません。有名人が出席するパーティに出席し、彼らと一緒に写真をパチリと撮り、それをブログに公開してセレブ感をアピールする者もいます。

また、2人、3人、5人どころか「これでもか?」という感じで次から次へと「顧客の声」を公開する者もいます。「売上が3カ月で倍増しました!」「半年で顧客数が5倍に増えました!」「こんなに儲かりました!」「もう感謝、感謝です!」などと…。インタビューの様子(顧客の声)を動画で配信する者も増えてきました。

実は、このような「顧客の声」による演出方法に関する話を1カ月ほど前に、ロボットの仕事である介護施設の経営者と交わしました。その時の反応は「お金をもらっているのだろうが、そんな下品なことはやりたくないね!」との発言でした。

このように他人のビジネスの広告塔を演じることに対して「下品な行為!」と考えている人は、一定規模以上の企業経営者には少なくないようです。

確かに、仮に本当に儲かったとしても、「こんなに儲かりました!」などと露骨にアピールする行為に対しては、「品がない」「胡散臭い」「けしからん」と感じる人が多いはずです。だから、そういう演出に惹かれるのは、零細・個人事業の人が多いようです。

数カ月前にコンサルで訪問した経営者も同じようなことを言っていました。その社長の会社では顧客の声を集めることに苦労していました。社長の会社のユーザーは本当に製品に満足し、感謝していたそうです。でも「お客の声」として社名を出すことはためらっていたそうです。

それは「金をもらって、やっているんだろ!」と、同業仲間から思われるのが嫌だったとのことでした。そのような理由から会社の社長は「お客の声」集めにかなり苦労していました。

「リスト活用・情報商材型」については、冷静になってよく考えてみれば胡散臭さに気付くはずです。話のロジックがおかしく、かなりの部分が嘘のことも。とは言うものの、「リスト活用・情報商材型」で上手くやっている人達は、とにかく「スゴイ!」というイメージを醸し出す演出に長けているのです。

 

今から30年、40年も前の話になりますが、男性誌の裏面には、よく開運グッズ(例:ペンダント)などの広告が載っていました。「こんなに儲かりました!」「人生が変わりました!」「チビでブサイクな僕がモテるようになりました!」といった体験談が紹介されていました。

また成功をイメージさせるために、何枚もの札束が浮かんだプールで男性がビキニ姿の若い女性達と戯れている写真が載っていた広告もありました。それと全く同じやり方が、今ではネット上で盛んに行われているのです。

さらに「リスト活用・情報商材型」の人達は、アメリカ式のダイレクト・レスポンス・マーケティング(DRM)の手法を採用しています。DRMの手法はどの業界にも使うことができますが、ちょっと胡散臭さもあるので、どうしても対象が若手の零細・個人事業の経営者に限定されてしまうのではないでしょうか?

「リスト活用・情報商材型」で上手くやっている人達(コンサルタント?)のやり方は、まず先に顧客リストを大量に集めることから始まります。そして、その一部が購入客となり、その人達の購買履歴などからグルーブ化し、情報を出し分け、多様なサービスを売り込んでいくのです。その中の一つにコンサルティングというサービスがあるにすぎないのです。

しかも、一般のコンサルティングのように、「企業を訪問して・・・」などという面倒なやり方はしません。常に「1対N」で行うはずです。

ある人のホームページを拝見すると、そこには「現在はすべての枠が埋まっており顧問コンサルをお受けすることができません。また、顧問コンサルでは1,000万円以上の高額なフィーを頂戴し…」と記載されていました。

システム導入のプロジェクトでもないのに1,000万円ものフィーを零細事業者が払うのかな?」と思うのですが、とにかくこのような言い訳をして「1対1社」のコンサルはやらないのです。やったとしても、ホテルの部屋に呼び出し、わかず45分程度の相談にも関わらず、「4名(社)限定、特別価格15万円で・・・」などとプレミアム感を演出するはずです。

事前の分析や準備や資料作りなど何もなく、ぶっつけ本番でわずか45分の相談に15万円ということです。常識的に考えれば明らかに高額すぎるのです。でも、彼らをカリスマや教祖のように崇めている人はそのように考えないのです。

とにかく、集めたリストから効率よく稼ごうとするビジネスモデルなので、「1対1社」では旨味がないのです。というか、本当は大したことないので、深く企業に入り込んだらボロが出てしまいます。だって「リスト活用・情報商材型」のコンサルタントの多くは、ちゃんとした会社に勤めたことなどありませんから。アメリカの有名なマーケッターを真似ているようなケースが多く、マッキンゼーやボストン出身のコンサルタントのコンサルティングとは明らかに違うのです。

だから「1対1社」で企業訪問することはしません。深入りしないのです。表面的な話しかしないのです。できないのです。常に「1対N」で情報を発信するのです。

特徴1と特徴2で説明した通りですが、集めたリスト(会員)に対して、次から次へと形を変え、新しい商品名を付けて情報を売っていくビジネスモデルです。まさに情報商材ビジネスと何ら変わりません。

「リストが全て」ということです。今では、10年前とは異なり、フェイスブック、インスタグラム、ツイッター、LINEなどのツールを使ってリスト集め、そのリストに対して様々な情報を発信していきます。インターネットを駆使し、リストを大量に集めることが大前提のビジネスモデルなのです。

当然ながら彼らはインターネットでの露出が多くなります。だから、経営コンサルタントについてネットから情報を仕入れようとすると、彼らの存在がやたら目立つはずです。また、彼らの中にはネットの駆使だけではなく、メール便などを使って次から次と新しいサービスの案内書を送ってくる者もいます。

私が利用しているある会社ではほぼ毎週、DMを送りつけてきます。私はその会社に100万円くらい使いましたが、それにしても懲りずに何度も何度も新しい商品を紹介してきます。 集客活動にかなり金を費やしているはずです。

独立したコンサルタント向け「新 特別レポート」

  • パート1:独立後のコンサルタントとしての働き方・稼ぎ方
  • パート2:激変したひとりコンサルタントを取り巻く市場環境
  • パート3:ひとりコンサルタントの主たる競合や脅威とは?
  • パート4:ひとりコンサルタントは独立後、いつ、どこで、つまずくのか?
  • パート5:チャンスを見つけ、生き残り、躍進するためにコンサルタントや診断士がやるべきことは?
  • パート6:コンサルタントが提供するサービスは今後も多様化する
  • パート7:「選ばれる存在・選ばれるコンサルタント」になるために検討・理解すべきことは?
  • パート8:コンサルタントのコンサルタントがおすすめする集客方法とは?
  • パート9:ひとりコンサルタント向け QAセッション1
  • パート10:ひとりコンサルタント向け QAセッション2
  • パート11:ひとりコンサルタント向け QAセッション3
  • パート12:コンサル独立後、1件目の契約獲得(QAセッション4)
  • パート13:ひとりコンサルタントの顧客獲得のポイント
  • パート14:あなたはコンサルタントとして市場のどこを狙うべきか?
  • パート15:金持ちコンサルタントの教え:中小企業診断士であることを名乗らない理由とは?
  • パート16:サラリーマンからコンサル独立する際の賢い方法とは?
  • パート17:コンサルタントにセミナーは必要か?
  • パート18:ひとりコンサルタントの広告戦略
  • パート19:独自の手法をパッケージ型で売るコンサルティングはどう?
  • パート20:起業後、3年経っても成果がない(自力開拓案件が1件も取れない)場合はどうすべきか?

彼らのやり方には、かなり胡散臭さがあり、大手企業や役所からは相手にされることがないはずです。しかし、ネットを駆使し、浅く広くアプローチすることで上手く集客していることは確かなのです。次のコラムはこちらから。

さて、本日は「リスト活用・情報商材型」の方法で稼いでいる人達のやり方を紹介しましたが、このやり方は、対象が「零細・個人事業」だからこそ通用するのです。集客に悩んでいる零細・個人事業者です。

エステ、歯科医院、整体、美容院、飲食店など。殆どはBtoCのビジネスです。しかも、40代前半までの若い経営者が対象です。

彼らは、どの業界にもとりあえず使えそうな抽象度の高い内容を高額で販売します。浅く広く集客し、買った顧客に品を変えながら次から次と案内するのです。

中には本当に3,000万円、5,000万円、1億円と稼いでいる人がいますが、中規模企業以上の経営者や年配者には「胡散臭い!」と感じる人が多いはずです。というか大きな会社の経営者は、ネット上に溢れているそのような情報に手を出すことはないでしょう。

零細・個人事業向けには情報商材の販売のように胡散臭い・インチキっぽいものが大量に出回っているので、彼らと同じ見せ方をすればするほど同類と見なされるはずです。つまり胡散臭さを強調することになります。

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  • 地元自治体から他の自治体への展開
  • 自治体と連携してメディア露出を獲得する

自社ブランドによるBtoC市場進出:ストーリーテリングとメディアを活用して飛躍する

  • 独自のストーリー
  • それを活かしたメディア戦略

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