【経営・戦略008】 

2018年12月 16日(日)

2018年12月1日付のコラム「レッド・オーシャンからブルー・オーシャンへ」では「ブルー・オーシャン・シフト」という書籍の内容を紹介しました。その書籍には「非顧客層の海を見つけ出す」と題した章がありましたが、本日はそこから学んだことをお伝えします。

「非顧客層の海を見つけ出す」とは、これまで顧客と見なさなかった人たち(非顧客層)から需要を掘り起こすことです。本に「ブルー・オーシャン・シフトの狙いは、既存顧客の奪い合いではなく、新たな需要の掘り起こしによる業界の成長である」と書かれている通りです。

しかしながら、非顧客層の実像はどのようなものか、なぜ顧客にならずにいるのかを十分に把握している企業は稀とのこと。

そこで本には「新規需要を開拓できそうな非顧客層の大海を見えてくるように!」と非顧客層の3つのグループを定義・特定するフレームワークの紹介がありました。それらは、第一グループ、第二グループ、第三グループの3つです。

第一グループは、すぐに離反しかねない潜在的な顧客全体を指します。仕方なく購入しているだけで、優れた代替品が見つかったら、さっさと乗り換えてしまう人々です。

第二グループは、あえて検討したうえで購入や利用を控えるという結論を出した人々です。

そして第三グループは、既存顧客から最も遠いところにいる、これまで決して潜在顧客と見なされず、業界内のどの企業からも売り込み対象にされずにいる人々です。

本では、まず非顧客層の3つのグループを定義することをすすめています。その際には専門以外の分野の事例を研究するのが良いとのこと。そこでいくつの事例が紹介さていました。ここでは下記の通りオーケストラ業界の例を紹介します。

○非顧客層の第一グループ

季節ごと、あるいは数年に1回程度、愛好しているからではなく、半ば義理でコンサートを鑑賞する人々

○非顧客層の第二グループ

退屈、流行から外れている、仰々しいといった理由により、お金はあるがコンサートには行かない人々

○非顧客層の第三グループ

クラシック音楽の知識がなく、「オーケストラは普通の人ではなく、主に高学歴エリートのもの」という印象を持つ、コンサートを聴きに行くなど思いも寄らない人々

 

この段階で重要なのは、チームメンバーに非顧客層について真剣に考えさせ、業界の水平線の先に広がる広大な事業機会について、自分達はいかに少ししか知らないか、あるいは考えたことがないか、気づいてもらうこと、と書いてあります。

また市場調査を外部委託して安心するのではなく、「ブルー・オーシャン・シフトの基盤をなすのは、チームが現場に出かけていってみずから発見した内容である」とのことです。

そうやって狙いを定めた業界の各非顧客層グループには、どのような人または組織が属しているかを理解するのです。 

次に行うべきことは、既存の顧客層と比べて、非顧客層の各グループはどのくらいの規模であるかを理解することです。そしてブルー・オーシャンを創造する余地を検討するのです。

「製品やサービスを改良することによって開拓できそうな非顧客層グループのうち、最大の規模を持つのはどれだろうか?」などと質問することによって自分達の業界に非顧客層が背を向けている理由を掘り下げると同時に、既存顧客の市場と非顧客層の3つのグループの相対的な規模などを理解していくのです。

そうやって非顧客層の3つのグループという概念を活用することにより、製品やサービスを改善すれば、どれくらいの潜在需要が開拓できそうか見えるようになるのです。

どれくらいの潜在需要が開拓できそうか見えるようになったら、視野を広げて可能性を思い描く段階を経て、現実的、実践的なブルー・オーシャン戦略を生み出す段階へと入っていくことになります。

最後に、本に書かれていた非顧客層の開拓についての事例をいくつか紹介します。

ニューズピックスは、経済情報に特化したソーシャル経済メディアであり、経済ニュースのキュレーションサービスとして2013年にスタートしたばかりです。

日本の経済メディアは典型的なレッド・オーシャンに陥っていて、大手新聞社はどこも軒並み発行部数を減らしており、購読者および広告収入の減少が数多くの経済紙、週刊誌を追い込んでいました。

そこでニューズピックスは既存メディアが取り込まない非顧客層を獲得したのです。非顧客層の第一グルプは、他に選択肢がないからやむを得ずシニア男性向けの経済メディアを購読していた層です。第二グループは、質の高い経済情報へのニーズはあるが、月4,000円もの新聞代の支払いを見送る層。そして、第三はそもそも経済メディアに関心がなく、新聞や経済紙を手にする習慣のない巨大な層。

ニューズピックスは、既存メディアがターゲットにしていなかった20代、30代のビジネスパーソンをターゲットにし、既存メディアが引いていた無意識の境界線を打ち壊しました。

パーク24の事業は1990年代になってから始めたのですが、それまで駐車場事業には非顧客層の3つのグループが存在していました。第一は、利便性や料金に不満を持ちながら既存の駐車場を利用しているグループ。第二は、都市部で駐車場を見つけられないなどの理由から利用したくてもできないグループ。また第三はそもそも最初から車で出かけることを考えもしないグループです。

パーク24は、非顧客層を獲得するためには行く先々でいつでもどこでも停められるコンビニエンスストアのような新型の駐車場が必要だと考えて始めたのでした。

非顧客層を検討し、新しい顧客層の需要を掘り起こしましょう。次回のコラムは、こちらから!

お役に立ちましたか?

これまでの常識にとらわれることなく、視野を広げて、製品やサービスを改良することによって開拓できそうな非顧客層グループをぜひ検討してみて下さい。

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